中関村リポート(V)

北京大学光華管理学院(MBAコース) 訪問教授 八杉 哲

急速に普及するインターネットと、
急激に多様化する中国のWeb site


■インターネット人口890万人
グラフ

中国でのINTERNET利用状況調査
1997.101998.71999.11999.72000.1
計算機Host29.9万台54.2万台74.7万台146万台350万台
インターネット利用者62万人117.5万人210万人400万人890万人
うち公衆回線利用41.5万人85万人149万人256万人666万人
うち北京36%25%24%21%21%
うち上海8%8%4%9%11%
cnでのdomain登録数40669415183962904548695
うち.com.cn21316559139132222038776
うち北京36%36%
うち上海8%9%
website数150037005300990615153
e-mailアドレス数3560万
うち無料2670万
国際線総容量25.4M84.6M143M241M351M
うちchinanet18.778123195291

(出所:CNNIC公表のINTERNET統計から作)
   今年1月のインターネット関連調査「中国互聯網絡発展状況統計報告(2000/1)」(中国インターネット情報中心)によると、中国でのinternet利用人口は過去1年間に780万人増加し、99年末で890万人になり、米国の1億1000万人には及ばないものの、現在の日本の1800万人には1、2年後にキャッチアップする勢いであることが公表された。男性の利用人口が全体の79%、40歳以下の利用人口は全体の94%を占めること、大学(大専を含む)以上の高学歴者が84%を占めること、学生が21%であること、自滝での利用者が50%と少なく使用料な支払者は金額ベースでは半分が公費であり学校、職場で利用せざるを得ない経済事情があること、1週間の平均利用時間は17時間と比較的長いこと、ネット利用目的が圧倒的に情報収集目的(特にニユース)とmail利用が多く、商業利用は今後の課題であること(電子情報部の非公式見解では、現在の商業site数(BtoC)は200強(日本はB to Bを含み約1万8000)、5000人の従業員数、99年の取引額2億元、25億円(日本は逗定1000億円)にすぎないが、2002年には100億元、1300億円に達するとの予測がある。)、ネット利用者がニュース以外に関心があるのは、PCソフト、レジャー、書籍、広告、金融証券、教育、求人求職、交際、医薬医療の順である、不満としてはアクセス速度が遅いことを指摘するのが過半数以上あり(53%)、また日本に比べれば遥かに安いアクセス料でありながら費用の高さを指摘する者が34%もある(電話料込みで1時間あたり1.4元)等の状況が解った。米国では45歳以上が全体の30%以上と言われており、日本で6%、中国が4%ぐらいであることは、近い将来に日本や中国でインターネット人口が急増加する可能性を示唆しているものと理解できる(調査結果全文、過去の調査結果はhttp://www.cnnic.net.cnから中文、英文で入手できる)。特に中国では、大衆化には時間がかかると思われるが、人口が極端に多いこと、台湾や華僑等の経済力のある大陸外も大陸発のwebsiteのインターネット利用人口になることから考えると、今後5年以内には米国に次いで世界第二位のインターネット人口になることは間違いない。

■website コンテストも開催
   この調査とは別に「中国インターネット競技組織委員会」によるwebsite関連の競技会結果報告(100の優秀site、Ms.インターネット、インターネット傑出人物10人等)も公表された(http://www.ctc.org.cn)。100の優秀siteの内訳は、10の検索エンジン主体のportalと一部ホームページを含む90の各分野別のvertical portalである。
   既に検索主体のportalは陶汰される過程に入り、有力な全国ベースのportalは数社に絞られ、それらは米国、日本から株式資本を受入ており、またNASDAQ、香港創業板に公開した、あるいは準備中のportalもあり、米国のネット関連株式ブームとの関連が強い。地域性のportalが多くclickされるのは、国土の広い中国ならではの現象である。米国のように有力portalが関連事業、技術を囲い込む傾向も出ており、その方法は米国流のM&Aに代り、SOHU.comと8848がcyber commerceで合作したような、site間のallianceが主流になっている。
   Cyber commerceは、事業規制が少ない国なので、医薬、医療、教育等、通常のnet取引で主流を占める音楽、ソフト、書籍、サービスのようなもの以外の、中国ならでのnet取引対象商品・サービスが生まれている。Internetが普及しはじめたばかりであるという時期的な点と経済水準が高くなっていないこと等から、マクロベースでのcyber取引の金額には限界がある。中国では物流や決済がcyber commerceの障害になるとよく言われるが、日本でも代金引換え、銀行振込みが主流でカード取引以外での決済が95%近くを占めており(サイバー社会基盤研究推進センター、http://www.ccci.or.jp)、中国でもカード決済が遅れていたとしても、cyber取引自体に支障がでているものではない。 金融分野、特に株式取引は、規制があることと、もともとの取引方法がnet取引に近いcost performanceであることから「伝統的な証券会社とnet証券会社」という構図にはない。B to B分野は、Alibabaに日本の有力VCが投資したように、卸し売り市場的なB to Bはマーケットがグローバルだけに注目される。特に、この分野では、8848やAlibabaのようなグローバルな民間siteの発展とともに、商売熱心な行政官庁(MOFTEC)が主導権を握り、大きなマーケットに育つ可能性が高い。

産業創発
   野村総合研究所の有力スタッフ著作による『日本の優先課題2000 産業創発』(99年12月 野村総研 発行・2000円)では、「デジタル情報の蓄積で新しい収益機会がもたらされている今、……(伝統的な企業も)自らのビジネスモデルを見直し、デジタル情報ドリブンな要素に対応していくことが求められる」と主張する。Internetの普及で、我々の仕事、生活がどう変化するか、今一度、見直すことを示唆した書籍である。

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