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anib20.gif  雑 学 中国を繙く  numb013.gifnumb019.gif   

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                      皆 さ ん,さ よ う な ら          櫻 井  澄 夫

   私は六月二十八日に北京を離れます。十年と四か月の滞在でした。その間、かわら版にも六十回以上書かせてもらい、それに対しこれまで沢山の方からご感想や、激励のお手紙やお言葉を戴きました。北京放送(中国国際放送)でも同じ様なことを三年間しゃべらせてもらいました。  

   サラリーマンとしては十年に一箇所というのは、尋常ではなく、それだけ色々なことを考える時間も機会もありました。そのようなふと思いついたことや出会ったことについて、かなり自由に書かせていただいたことに、まずお礼申し上げ、また読者の皆さんに長い間辛抱してお読みいただいたことに対し、感謝申し上げたいと思います。

   私は書く際の基本的な考えとして、北京や中国にまつわる、あまり人に知られていないこと、私が興味深く感じたことを現地訪問や、書物を通じて「繙く」ことに主眼をおいており、自分が知った事を皆さんと分かち合いたいと考えてきました。うまくいっているかどうかは疑問がありますが、正直、面白かったという反応が多いと、やる気が出るのもまた事実です。またかわら版は日本語によって出されていますから、日本人あるいは日本語を読むことの出来る読者を意識した内容とするという傾向も持たせているつもりです。要するに文章や内容は翻訳調でなく、日本人向けのオリジナリティーを持たせたいということです。

  書きながらこのような小さな話題であっても、あまり書かれていない、知られていない、研究されていないことが多いのに驚きました。自分でもやれることがありそうだという感触が、これまで長く書かせていただく糧になりました。

  北京で見つけた鵜飼のこと、大昔に北京に来た日本人のこと、テレビ局の番組製作のいい加減さについての悪口、地名の話、本の話、発見された昔の迎賓館の話、最近話題の「シナ」の話などなど……日本の新聞社や通信社の皆さんからもかなり反応がありました。  

  私は調べながら、あるいは書きながら、私たちはもっと知るべきだ、様々なことを知ることによってこそ、物事に対するバランスのとれた判断とか、正当な評価が下せると信じるようになっていきました。過去や現在を正確に認識することなしに、将来に対する予測や計画はたてにくく、不完全なものになります。人や集団の心や行動は化学反応とは違います。過去から学ばずに何から学ぶのかと思います。たしかフランスの大統領だったドゴールも同じ様なことを言っています。  

   さて宣伝になりますが、私たちは今年、日本で『新北京案内記』(仮題)という本を、出版する計画です。十八人の専門を異にする執筆者に二十三項目を、自分の興味中心に掘り下げて書いてもらうもので、北京に関する本としてはちょっとユニークなものになるではないかと考えています。

  「へー」と思っていただけるような、北京にまつわるさまざまな事柄を満載しているといったらほめすぎかも知れませんが、力作が並んでいます。ご興味のある方に、是非お読み戴きたいと思っています。ほんの少し内容の例をあげますと、五月になるといつも日本から来た方に質問されるあの空中を飛ぶ柳絮について、植物学者の高先生の「柳絮の正体」という文章が載っています。これでどんな「柳絮」についての質問への回答もOKです。

  天安門広場については松木先生の「天安門広場の変遷」(仮題)が大変詳しく、これを読めば天安門広場の通になります。これをもとにすればテレビ番組だって作れそうです。   この本は私が「中国を繙く」でやっているようなことを、十八人の専門家により、より幅広く、多角的にまとめた本と言えるかも知れません。

  日本に帰ってからも首になるまで、かわら版に書かせて戴くつもりです。これからは中国を今までのように自由に歩くわけにはいきませんが、別の形でもっと勉強して、中国や北京に対する話題について触れたいと思います。

  話は変わりますが、最近思うのは、ここでは日本や日本人に関する書物が、語学関係以外には大変すくないもので、日本の本屋さんの状況とは全く違うということです。歴史を学ばずに歴史認識はできません。日本を知らずに日本に対する正しい理解が出来るはずはありません。従ってこれからは中国語による日本理解のための活動ももっと必要だと思います。

  皆さんも、奥行きの深い、また日本とも縁の深い中国について、身近な所から関心を持ち、考えて見て下さい。

  それではまた。

  mail06.gif編集部より

           日本への帰任直前にいただいた原稿をそのまま掲載しました。

           今後の「中国を繙く」の原稿は、日本からお寄せいただきます。

筆者PROFILE


櫻井 澄夫 SAKURAI Sumio

   『北京かわら版』編集顧問。過去に、「中国でのクレジットカード」「北京カラオケ事情」「北京雑感」「北京の地名を歩く」「特別寄稿・毛沢東バッジの収集」「北京を愛した人」などを執筆。

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