高級マンション購入顛末記17

廊坊櫻華包装有限公司(独資)
副総経理 池田直隆

業者を擁護する?北京市

   マンションの問題を政府のどの部門にもっていったらよいのか、当初あちこちにたらいまわしにされた。それが三者会談で窓口が「房管局」一本に絞られたのはいいのだが、二週間の調査期間に「房管局」がしたのは水漏れを数ヶ所マンション側に修理させた事と住民が冬の部屋の寒さをひどく訴えていた(皆ストーブをつけていた)ので室温を測ったという事だけ、それもある日突然やってきて管理会社の経理に付き添われ、マンション内を一巡して終わりであった。管理会社の方は住民委員会のメンバーの中傷やデマをとばし、各家にビラをまき、委員会の切り崩しにかかった。この頃になると、メンバーの中にも管理会社に買収され脱落するものがあらわれた。一ヶ月が過ぎようとしているのに「房管局」からは何の連絡もない。我々は弁護士を連れて「房管局」に出向き、数回にわたって担当者達と話し合いを行い、マンション全体の図面やその他の資料の住民に対する開示を求めた。前にも話したが、中国ではマンションに関する新しい規定がつぎつぎに作られている。しかし、それらは統括的に公示されるわけではなく各部門に独自に保持され、またそれぞれの部門でも決まった担当者でないとその文書がどこにあるかもわからない状態である。M氏は最新の規定を提供してくれたばかりでなく、どこの部門がどういった責任や権限を持つかも詳細に弁護士に教えてくれていたので、「房管局」での話し合いもこちら側に有利に進んでいった。ところが、「房管局」はある日この中国人の弁護士に「外国人のやっている事にあまり首を突っ込むのは君のためにならない」と、くぎをさした。二回目の三者会議が開かれたが内容に目新しい進展はなく、「房管局」の主任のマンション側寄りの姿勢が住民の不満を買っただけであった。

 

我々の声を江沢民主席に

   陽光広場のマンション購入者と羅馬花園の住民は国務院や人民代表大会本部の接待室にも足を運び実状を訴え、更にメディアとも連絡をとりはじめた。メディアの反応は驚くほど早く中国国内の中国青年報、北京電視台、中国消費者報ばかりでなく、アメリカのロサンゼルスタイムズやVOA(ボイスオブアメリカ)、香港のサウスチャイナモーニングポスト等十数社が相次いで取材に訪れた。我々はアメリカやフランスの新聞記者に取材をさせる為、彼らを連れて市政府の接待室に出向いたこともあった。それでも北京市政府は陽光広場や羅馬花園の不正の摘発に乗り出そうとはしなかった。

   通県のあるマンションを訴えて市政府の門の前に二〇〇人ほどの人が埋め尽くし、その周囲を武装警察が取り巻いている状況に出くわした事もあった。市政府にとってこうした業者に関する訴えは日常茶飯事であった。陳情に来ていた通県の人が業者と北京市の下級機関との癒着は周知のこと、市が自ら墓穴を掘るような事をするはずもないと言っていた。

   ちょうどその頃陽光広場である問題が持ち上がった。ここではマンションの完成が遅れに遅れ、売買契約の破棄を求める人間で混乱していた。すでに二〇人程の人間が正式に訴訟をおこし、陽光広場の調査がすすめられていたが、そんな中、デベロッパーの元職員から脱税と資金不足による工事停止の通知の証拠書類が入手された。慌てたデベロッパーは「建設の遅れは江沢民主席の妹が自分の部屋の側にボイラー湿を建てられては困ると言いだし、完成間近にボイラー室の移転をせざるを得なかった」と説明し始めた。この話が本当かうそかは別にして、このマンションの問題を国家主席の耳にいれるにはいいチャンスではないか、北京市でだめなら中国政府に訴えよう。王大姐は大きな布を広げ「発展商散布慌言欺騙国家、責任推給江沢民主席的身上(デベロッパーはデマをとばし、国家をだまし、責任を江沢民主席に押し付けた。)」とたっぷり墨をふくませた筆で書き始めた。

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