◆◆留学生必見◆◆
中国サバイバル指南 第三回
社会人インタビュー VOL1

   このコーナーでは、夢を抱いて留学している留学生、中国で事業を起こし成功している日本人を紹介し、中国で成功するヒントを提供します。
   第三回の今回は、中国人の友人と共同で食品流通の会社を起こし、アドバイザー的立場で会社運営に携わっている森下さんのご登場。時に主観的に、時に客観的に、中国ビジネスの何たるかを熱く語って下さいました。

企画・構成・執筆 坪井信人

あなたは何がやりたいか?
本当にそれでいいのか?

面白い!これがスタートライン

《プロフィール》 森下 優(もりした ゆう)
92年2月から半年、北京語言学院(現北京語言文化大学)に語学留学。帰国後、食品関係の会社に就職。日本国内勤務を経て、94年、同社の大連駐在員として再び中国へ。96年に同社を退社、翌年中国人の友人と北京に食品流通会社を起こす。取引の中心は日系企業。社員17名。今年37歳。

かわら 森下さんが中国と関わるようになったきっかけは何ですか。

森下 旅行に来て、「面白い」と感じたことです。ですから、半年の留学を決めた時は、「中国関係の仕事ができたらいいかな」と考えていた程度。ただ漠然と自分の可能性を試そうと中国に来ました。

かわら 現在、食品流通会社を中国人の友人と共同経営されていますが、留学後の経緯をお聞かせ下さい。

森下 日本に帰国後、食品関係の会社に就職し、数年後、大連に派遣されました。大連では、食品の日本への輸出と中国国内販売をしていました。特に苦労したのは国内販売。2年間の駐在では、中国の流通システムや商習慣の違いに戸惑い、思うような仕事ができませんでしたね。そんな状況でいらいらが募っていた時、日本本社から帰国命令が出たんです。「このまま帰ったら中途半端になる」と考え、退社、独立を決心しました。

かわら 独立を考え始めたのはいつ頃ですか。

森下 「独立したい」「自分でやってみたい」という気持ちは、何年も温めていましたが、「何をやるか」が具体的になったのは、会社を辞めた時でした。

かわら では、留学期間を終えた時にも、すでに将来の独立を思い描いていたのですか。

森下 いいえ、あの頃は何も考えられませんでしたね。私は漠然と中国に来たタイプですから、やりたいことがはっきりしていませんでした。やりたことがはっきりしていない状態で、半年程度勉強した中国語を使って、ビジネスはできなかったでしょう。

組織ではできないこと、世間のお役に立てることをやる

かわら 独立されてからのビジネスは順調ですか。

森下 ん〜、予想通りとは言えません。思いがけないトラブルが次から次に発生しますからね。

かわら というのは、「中国だから、日本と違うから、大変だ」ということですか。

森下 そうではありません。たぶん、どこでも苦労は同じでしょう。問題が起きるのは、「自分自身が未熟」だからではないでしょうか。中国ゆえのいろんな問題ももちろんありますが、問題の解決に向けていろんな方法があるはずで、一つひとつ結果を積み重ねていくのが仕事だと思っています。

かわら 現状にはまだまだ満足できないということですね。

森下 そうです。良いサービスをするために模索しているところです。
   しかし、問題は多いけれども、またお金儲けは思うようにいかないけれども、やりたいことをやれて楽しいですよ。私が独立した目的は利益的な成功だけではなく、もっと他のところにありました。一つは、サラリーマンの時にはできなかった、「自分で考え、決め、実行し、責任を取る」という環境で仕事をすること。もう一つは、そんな仕事をするために、人の役に立てる仕事をすること。だから、たとえ問題は山積みしても、自分で選んだ環境で仕事をしていることに変わりはありません。
   今は世界的に長い不景気ですが、これも悲観することはない。だって、今が一番悪い時で、これ以上悪くなることはないでしょうからね。

かわら 独立してから、自由に仕事ができるようになりましたか。

森下 いいえ、そうとは言い切れません。自分から望んで独立を選びましたが、大会社の方が利点が多いかもしれません。なぜなら、扱える金額が大きく、会社の信用度も高いからです。でも、先ほど話した「自分で考え、決め、実行し、責任を取る」ためには、私にとっては今の環境が必要不可欠ですね。

エンジョイ・エンジョイ・エンジョイ

かわら 留学生活で大切なことは何だと思いますか。

森下 エンジョイかな。エンジョイできればいい。この言葉は、誤解を生むかもしれませんが、浪費のエンジョイではなく、前向きなエンジョイ。価値観は人それぞれなので、「こうすればいい」というアドバイスはできませんが、留学って、自分を見つめ直したり、やりたいことが探せる時期だと思います。エンジョイできれば、今まで見えなかったことが、いろいろ見えてくるのではないでしょうか。

かわら 理想的な留学期間はどのくらいだと思いますか。

森下 語学習得が目的なら、半年から1年で十分でしょう。それ以上は必要ない。なぜなら語学は手段でしかないからです。中国語は、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで上達します。ただし、もし、「中国経済を勉強したい」「翻訳者になりたい」といった目的がある方は、別問題です。より正確な語学力が要求されるわけですから、長く滞在した方がいいですね。

かわら 留学生活をマンネリ化させない方法は何でしょうか。

森下 中国語の基礎をつかんだら、学校の中だけでなく、中国で活躍している日本人や中国人と接触することが大切です。そして、将来の目標は、ゆっくり考えればいい。30でも40でもやり直そうと思えばやり直せます。留学が終わってからの道も、中国に残る、日本に帰る、第三国で働くなど、いろんな選択肢があります。焦る必要はありません。

本当にあなたは中国向きか?適性をじっくり考えて!

かわら では、もし森下さんが日本人を採用するとしたら、どのような人を採用しますか。

森下 会計、営業、コンピュータなどの能力がある人材、つまり、新卒者より社会経験がある即戦力を選びます。語学水準は一番大切ではありません。ただこれは、うちが零細企業だからで、日本ではまだまだ新卒採用が主流ですが。

かわら 森下さんは、「中国」という社会をどのように見ていますか。

森下 中国には「すきま」がある。だから、日本に比べて格段に可能性がある国、自分で何かをやろうと思えばできる国だと思います。
   ただ、チャンスは石ころのように転がっていても、磨けば光る玉が多いかどうかは別問題です。それを見極めるのは非常に難しいです。
   ですから、「中国語を勉強したから、中国でビジネスをしよう」と安易に考えるのは危険です。「本当に自分は中国に向いているか」を真剣に考える必要があるでしょう。例えば、歌手は儲けられると言っても、音痴では歌手にはなれませんよね。中国が今後の大きな市場だからといって、自分の適性を考えず中国と関係するビジネスを始めれば必ず失敗します。

かわら 中国でのビジネスは楽ではないということですね。

森下 そうです。可能性はたくさんある。しかし、日本の大企業に就職してもらえる給料分を稼ぐのは並大抵のことではありません。それを頭に置いた上で中国を選ぶなら、仕事はきっと楽しいはずです。  

かわら 最後に、留学生の皆さんに一言お願いします。

森下 留学は本当に楽しい。大いに楽しみましょう。でも、単なる楽しみは長続きしません。「為になる楽しみ」がないとダメ。「エンジョイ」に含まれる意味を自分なりに考えてみて下さい。

かわら 貴重な体験談をありがとうございました。

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