北京雑感1993年10月号

活況を呈する日本「中国投資セミナー」

編集長 根箭芳紀

   最近、日本の中国投資セミナーブームがよく話題になります。私も、一月ほど日本に帰る機会があったので、その間に案内のパンフを見たり、いくつかに参加したりして、実態を勉強しました。主催は、各地の経済団体や調査機関、日中関係団体、銀行、保険会社など様々で、ほかに大手商社の取引先向けのものを含めると、一体月に幾つ開かれているのか見当もつかないほどです。参加費もピンは一回七万円からキリは無料まで様々でした。

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   セミナーの中身は、中国市場についての総合的な解説が多く、なかにはアジテーションだけに終始しているものも見られます。各論になると事例解説型、法律説明型、交渉術型などいろいろありますが、傾向として“人的要素重視型”と、“法的要素重視型”の二つのタイプに分類できるようです。

一方参加者の顔ぶれは、ブームに乗ったセミナーの宿命でしょうが、中国ビジネスの経験についても初体験者から現地法人管理者まで幅広く、業種も一様ではありません。ただ一見したところあまり海外経験のない、中小企業の参加が多かったように思われました。

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   今回日本で見たセミナーブームに対する、私の印象は次のとおりです。

一、スピーカーの話す内容と、参加者の聞きたい内容が一致していないものが多い。テーマと参加者の募集方法を一致させる工夫が必要。

二、人的要素と法的要素の両方を説明する必要があるが、片寄っているものが多い。

三、実践的な内容が少なく、グローバルな話やアジテーションに流れるものが多い。

 

ほかにもいろいろありますが、セミナーブームが悪いと言っているわけではありません。しかし中国投資が簡単なビジネスでないことも事実です。最後は聞き手の責任であるにしても、できるだけ正確で、ニーズに合った情報を提供する主催者側の努力も必要だと感じた次第です。

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