北京雑感1994年1月号

日中間の新しい相互補完関係は

編集長 根箭芳紀

   新年あけましてお目出とうございます。
   昨年の北京の日本人社会は、元気印の中国経済を反映して、駐在事務所や合弁企業がかなり増え、活気が出てきたことは喜ばしいことです。
   しかし、よいことばかりは無いもので、たちまち賃貸不動産が不足になり、軒並値上りしだしたのは頭の痛い問題です。新しい物件が出回るのは一、二年後になるでしょうから、しばらくはじっとガマンになりそうです。

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   最近“アジアの時代”がよく話題になりますが、発展するアジア経済圏の中での日本と中国の関係がどうなるのか、気になるところです。

   今年ガット加盟(復帰)を目ざす中国は、昨年末、国際経済ルールに準拠した法制を整えました。即ち、国内市場を外国に開放するリスクを負うかわりに、国際市場に参入するメリットを得る、いわば“肉を切らせて骨を切る”大胆な作戦に出たようです。

   一方日本は、戦後の一貫した“貿易黒字・経済成長”政策が限界に達したことが明らかになり、今後は、貿易バランス(輸入拡大)と海外生産を重視する政策に切り替えざるを得ない状況です。

   従って、二十一世紀の日中間の経済関係は、これまでの「原材料対工業製品」型の貿易に続く「安価労働力対工場進出」の段階を卒業して、相互に輸出し、相互に相手国に生産拠点を持ち合う“対等な相互補完”の関係を作り出すことができる可能性が出てきました。

   ただし、その為には建前だけでない市場の開放と、現地に根をおろした企業経営を行うことが条件となりますので、互にかなり努力する必要が残されているようです。

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   いずれにしても、中国に生産拠点を移す日本企業がますます増加することは間違いありません。

   お金儲けの神様として有名なQ氏は日本企業(人)が克服すべき課題について、(一)外国で仕事をすることに、いつも不安をもっている。(二)利益を日本円に換えて、日本国内の銀行に預金しないと安心しない。(三)金儲けの為に外国に居るだけで、一生住むとはゆめゆめ思っていない。と指摘しています。つまり、日本は金持ちになったが、海外に資産を持つことをよしとする、国際的金持ちには至っていないというわけです。

   私は、Q氏の信奉者ではありませんが、この指摘は傾聴に値すると思っています。

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   最後に、かわら版クラブの活動についてですが、昨年は忙しさにかまけ活発な活動ができなかったことをお詫びします。今年は、個人会員、留学生会員、法人会員のそれぞれに向けて、数は少なくても質の高い活動を実行したいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。

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