北京雑感1994年4月号

外国人に対する『二重価格』は過去の習慣

編集長 根箭芳紀

   本紙は前号で、今年から開始した中国の外貨管理の改革が、現地外国人社会に与えた影響について特集した。今回は、その中で述べた二重価格の問題について、もう少し考えてみたい。

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   社会主義中国の二重価格の歴史は古く、外貨兌換券が生まれる前から存在していた。外国人がよく行く博物館の入場料、国内航空運賃、鉄道運賃、ホテルの部屋代、宴会費用などは昔から中国人と外国人の値段が違い、その根拠が駐在員の格好の話題となったものである。というのも当時から公開された法律や規定はなく、中国人に聞くと「外国人は金持ちだから」といういささか納得しがたい説明や、「国の決まりだから」という答えが返ってくることが多く、従って議論百出にならざるを得ない。

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   そのこを最も納得しやすい解釈は、外交関係の中国人が説明してくれた「中国は社会主義国であり、政府は国民生活や国内企業の為に様々な補助をする義務がある。従って中国人の入場料や運賃は通常より安くなっている。しかし外国人の皆さんに対してはその義務がないので、通常の料金を戴いている」で、これが一応通説になっていた。また、確かに当時は満員の博物館に行っても、案内の中国人が『外賓!!』と大声を出すとすぐに前の人が道を開けてくれたし、飛行機や鉄道の切符も中国人より優先してブッキングしてくれたりしたので、高いだけのことはあったのである。

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   しかし現在は明らかに状況が変化している。1980年以来中国は経済の改革開放を推し進め、法制化と自由競争を両輪とする市場制経済の完成を急いでいる。そして国際的に「一物一価」が市場制経済の必要条件であることは言うまでもない。もちろん沢山買う客や常連客への割引、切符の優先購入についての割増など、合理的な理由のある価格差別に反対しているのではない。

   問題は、過去の習慣として残っている「外人価格」とも別称されている二重価格、即ち“国籍を根拠とする価格差別”をこの機会に廃止すべきだと言いたいのである。

   もう一つの問題は、国内商品(サービス)の「外貨建て価格」であるが、これについては次号に譲りたい。

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