北京雑感1994年8月号

最近の北京事情

編集長 根箭芳紀

   中国は一時“下海”(シヤハイ。国営企業を辞めて独立すること)が大流行で、元大学教授の個人タクシーや、下お役人の経営するレストランなどが次々生まれ、誰が幾ら儲けたといった話があちこちで聞かれたが、最近はあまり聞かなくなった。以前比べ心なし浮かない顔をしている、タクシーの運転手やレストランの経営者と話をしていると、どうやら国内の金融引き締めの影響でお客の財布の紐が堅くなったのと、競争相手が増え過ぎた事が重なって、余り儲からなくなったらしい。それでも新規開店するレストランが多いのでは、と反論すると、実はレストランは二軒出来ると一軒閉店している状態で、半分は苦しくなった経営者が借金を逃れるため一軒閉店して別のところで一軒開店するからだ、との答えが返ってきた。

   では今一番人気のある仕事は、と聞くと、外国企業や合弁企業で働く中国人だとの事。分かりました。次回の賃上げ交渉の際は、この状況をしっかり頭に入れて交渉致しましょう。

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   現在、北京はアジア大会前に続く第二次建築ブームを迎えている。大部分が華僑資本系の分譲物件で、マンション、オフィス、ショッピングセンター果ては別荘までが有り、毎日のように電話や訪問セールスが訪れてくる。ところで手元に集まったパンフレットを整理していて、幾つかの事に気がついた。一つは、価格が平方メートル当たりのドルで表示してあり、面積には共益部分が含まれている事である。従って、使用面積に換算すると平米単価が高くなるが、それより売り主の持ち分が全く無くなる事が気になる。つまり、売り主は減価償却義務が全く無いわけであるから、空調設備やエレベータなどの取り替え資金は、入居者が積み立てるか、或いはその時になってお金を出し合うしか方法が無い。管理費の中で積み立てる方法もあるが、どのパンフを見ても管理費は安く、とてもそこまでカバーしているとは思えない。

   いずれにしても今は住むためにというより、投資で買っている人が多いので、余りそのことを気にしなくてもうよいのかも知れませんが、実際に物件の引渡が始まる96〜97年頃になればはっきりする事でしょう。

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   最近の北京日本人会の“婦人部便り”に、北京のレストランについての、アンケート調査の結果が発表されている。なかには意外な結果も見られたが、大部分は日頃の私達の実感と同じであり、それが具体的に証明されたように思う。特に日本レストランについては、数が限られているうえに、食事に行くチャンスが多いので、かなり正確に結果が出ていた。特に良く名前が知られていながら、十位以内に入らなかったお店があるが、是非とも経営者がこの結果を重視され、駐在員の存在を思い出されるよう期待したい。

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