北京雑感1995年5月号

当節、北京見聞録

編集長 根箭芳紀

「週休二日制」
   五月一日から中国の公務員の休日が、先進国並みの週休二日制になった。また一般企業については、週40時間制とするが、その実施時期については、実情に応じ若干遅らすこともできるようである。
   もともと人手が余っている役所や国有企業の場合は、“給与が変わらないなら休みが多い方が得”なので、公務員から不満が出ることはないが、民間企業の場合は増員や残業の増加につながるので、それだけ人件費が上がることになりそうである。
   ところで増えた休日の使い方について尋ねると、遊園地、ハイキング、一泊旅行、買物など「出掛ける」回答がほとんどで、「アルバイトをする」や「家に居る」は少なかった。理由は、住宅事情もあるが、むしろ金銭的な余裕ができたためと思われる。しかし、「ハイキングのついでに、安い野菜を買う」人もいるので、一概には言えない。
   いずれにしても、一番喜んでいるのは子供で、次は商店やレジャー施設、頭が痛いのが家計を預かる奥さん、となりそうである。

「献血」
   日本留学から帰った中国人から、「日本の会社でアルバイトをしている時に、献血の募集があったので協力したら、400ccもとられたのに、牛乳1本くれただけで、お金も休暇もくれなかった。何故か?」と質問された。「チョット待て!じゃ、中国ではどうなっているんだ」と反問すると、「中国では400ccも採らない。200ccだ。お金は小さい会社で4〜500元と、2〜3日の休暇。大きな会社だったら千元近くももらえて、休暇も半月ぐらいくれる」というので驚いた。
   真相は次の通りである。まず、国は輸血用の血液が不足している。理由は、中国人は一般的に血を採られる事をいやがる。その理由は、血も肉体の一部であり、これを失うことは、病気や災難の原因になると考える人が多い。しかし、国は血液が必要なので、企業や単位にその提供を義務付ける。そして企業がその義務をはたさないと、その会社の人間は輸血が必要なとき、してもらえないようにする。そこで、企業は社内で「献血」する人を選抜し、献血しない人はお金を出し合って、選抜メンバーに「献金」、会社はお金を出すかわりに「休暇」を提供するという。誠に“人治の国”らしい。うまうできたシステムだと、改めて感心させられた次第です。

「扭秧歌」
   去年の夏頃から、夜の街頭で鐘や太鼓を伴奏に、行列になって舞っているお年寄りをよく見かける。
   これは新興宗教ではなく、東北地方の民間の舞で、新しい健康運動として、自然発生的に流行したもので、益々さかんになりつつあるとの事。

 

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