留学生が見た中国ビジネストピックス 第3回

「外資系コーヒー専門店の挑戦」

99.11.15 小笹基人

《筆者プロフィール》
日本で3年間華僑系貿易商社勤務後、99年3月より首都経済貿易大学に於いて中国語を勉強中。中国語の他に華僑経済、貿易経済も研究中。

   経済開放、外資参入の波に乗り、今や当たり前の光景となっていまった外資ファーストフードチェーン店。マクドナルド、ケンタッキーなど既に市民権を得てしまった現在、又新たに1つの外資チェーンがここ北京で営業展開を行っている。「スターバックスコーヒー」(星巴克ロ加ロ非)。日本人にはもう馴染みのあるこのコーヒー専門店が、99年1月、国貿中心(ワールドトレードセンター)1号店を皮切りに、8月末迄に続々と店をオープンした。古来からお茶を愛飲してきた中国人にとってこのコーヒー店はどの様に映っているのだろうか?

   筆者は99年11月1日〜4日の間、北京市内8店舗中7店を訪れ、そのうち5店舗から店員の生の声を聞いてみた。(時間の都合上全ての店をまわることは無理だったので)。

   どの店も将来の売り上げ見込みに対しては非常に楽観的であり、又コーヒー、エスプレッソの知識に於いても「理論と実践の一致」を目標に、日々研究を怠らず、初めて訪れる中国人客が安心してコーヒーを選べる様、店員皆が心掛けていた。

   これも店員が言っていた様に、スターバックス本部の社員教育がしっかりしているからこそであり、社員一同でコーヒーを中国の人々に知ってもらおうとする熱気が伝わってくる。しかし現時点での客層は、外国人、国内香港、台湾ビジネスマン、外資企業勤務者が圧倒的に多く、まだまだ一般市民にまでは「コーヒーを楽しむ」という概念が浸透していない様である。北京市内の大学生30人に聞いてみたところ、やはりコーヒーよりもお茶を好む人が8割強で、お茶を飲むことは生活の一部であり、父母の影響が強いということであった。日本の場合まず喫茶店から始まり、90年代後半に多くの外資コーヒー専門店がオープンし、より自分の好みの味を追求出来る様になった。北京(中国)の場合、街角の喫茶店という概念もなく、いきなりの専門店の出現により短期間のうちにコーヒーを店で飲むということを浸透させるのは、やや難がある様に思われるが、現在西単店では客の7割が中国人で、王府井新東安市場店でも半数が中国人と受けはなかなか良い。(数字は開店日より11月迄のもの)。

   北京市内の冷蔵庫の普及率同様、結局重要なことは商品の概念を先ず紹介することではないだろうか?単に「飲料を冷やして飲む」という考えが巨大な経済効果をもたらしてしまう中国に於いて、コーヒーの良さ、楽しみ方が浸透すれば、近い将来大袈裟かも知れないが、自動販売機があちこちで見かけられるかも知れない。スターバックスは店内に貼られているコピー「也可以嘗試一個新概念」(私達の新しい概念をご賞味下さい)や、店内に置かれている各種コーヒー豆のパンフレットからも分かる様、単にコーヒーを習慣化させている外国人だけでなく、これから分かってもらえるであろう中国人にも積極的にコーヒーの香りをアピールしている。この現地の人々の視点に立って営業展開を行っているスターバックスコーヒーに、筆者は少なからず親しみと謙虚さを感じた。
   

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