食事介護ガイドブック

4 誤嚥対策





4-1 調理、メニューの工夫


(1) メニューのポイント
・料理の見ためが食欲をそそり,香りが豊かで美味
・ゼラチン,寒天などを使用した冷菜と蒸し物を中心とした温菜メニューを
   組み合わせたメニュー構成(温度は60度を越えないようにする)
・一品の重量を少なくし(40〜50g),品数を増やし,選択して摂取で
  きるよう配慮する
・食卓に季節感だすように(“旬”のものをとりいれる)
・市販されているものの利用
(ベビーフード,魚やいかやえび等の裏ごし,マッシュポテト,嚥下困
難者用食品,高齢者用特別用途食品等)
・水分のとろみをついけるには,とろみ調整商品(市販)やでんぷん,くず
  粉などをしようする

(2) 調理のポイント(食品別に)

Sorry , just wait a moment please.



4-2 訓練と指導


 医学的な訓練は、医療職によって行われる必要がある。医学的な見地からカリキュラムを作成し、それに従った訓練でなければ効果は期待できない。しかし、こうした医学的訓練の対象は、脳血管障害後のリハビリテーションにおいてや、脳性麻痺の幼児期に正常な機能を取得させる目的で行われる。
 施設とか家庭でケアの対象は、障害が固定した後の障害者である。こうした機能の維持や低下を防止する目的の訓練や指導は、医学的に積極的に行われてはいないため、施設職員や家族が担う必要が生じている。
 この場合の訓練、指導の目的は、障害者の摂食・嚥下機能をできる限り維持させることにある。(障害者の加齢や障害の進行による機能低下は当然起こりうるが、その程度を緩やかにする。)
 ただし、障害者の身体機能・精神機能を十分に把握したうえで慎重に行い、かつ、対象者に対し職員各自の指導する内容を一致させること。障害者の食事に対する意識づけをさせる(だらだら食べさせない)必要がある。

食事前の訓練

 
摂食体操>咀嚼嚥下の筋肉をリラックスさせる。

 きちんとした食べる意識を持たせ、食事への興味を促す。
 唇閉じを促す(ストロー飲み等)。舌の動きを促す。

 へら、するめ等を噛ませる。>噛むことを促す、唾液の分泌を促す。
 冷水を飲ませて、舌の動きや嚥下反射を引き出す。
>舌、口腔粘膜、咽頭、気管のふたは、冷刺激によって、運動や感覚を引き出せたり、反射を促せたりする。
 のどぼとけの動きを引き出す(空嚥下、空咳させる)。

食事における指導
食べ物を口まで運ぶ
 適切な食器・スプーン等器材の検討。坐位姿勢の検討。

口腔での咀嚼
 飲むことを意識させる。食物の形態の検討。
 食べ物が舌の真ん中に集まっている場合には、口に対して斜めに食べ物を入れ左右の歯で噛ませる。
  咽頭の嚥下
 首の状態(首の角度)をきちんとし気管に食物・水分等が入り込まないようにする.
 うなずき嚥下(うなずく勢いで飲み込む)をさせる。
>うなづくことで食道の入り口を開き(逆に気管の方は狭くなる)、食塊がスムーズに食道に行くようにする。首の角度をきちんとする・のどぼとけの動きを出すも同じ意図



4-3 誤嚥時の対応


 気管の中にまで入る異物は、流動性があるか、小さいもので、後に肺炎をおこす危険性があるが、成人の場合窒息するのは稀である。気管に異物が入れば、感覚が正常であれば、むせによって異物を排出しようとする。したがって、むせは感覚があることを示しており、むせによって排出する体力があればさほど心配はいらない。
 窒息に至るような誤嚥の多くは、大きな食物を噛まずに丸飲み込みしてしまって、咽頭部の舌奥につっかえたものである。この場合、上を向いて大きく口を開かせれば、つっかえた食物が見えることが多い。これを、介助者は迅速に除去しなければならない。

(1)むせ
・むせは、気道に入りかかった異物を排出しようとする生体の防御反応であり、重要なサ インである。
・誤嚥した食べ物を自分で吐き出してもらうのが、一番良いので、背中や胸を軽くたたい て、咳を誘発し咳とともに吐き出させる。
・激しくむせこんだから誤嚥した量が多いとは限らない。むしろ、むせたほうが安全性は 高いので慌てないこと。

(2)窒息
 詰まった食物により息ができないようであれば、一刻も早く取り除く。

 意識のある場合には、次の処置のいずれかを試みる。
・背部叩打法=一番安全な処置である。
 お腹のところで二つ折になるように、上半身を曲げ頭部を低くし、背中を強く叩き重力 を利用して排出させる。
・ハイムリック法=最も有効であるが、習得技術が必要。
 腹部を圧迫し、その圧力によって詰まった異物を排出する。窒息者の背中にまわり、腹 部を抱えるようにまわした両手で、強く胃の付近を力を入れ圧迫する。
 脆弱した障害者に行うと、腹腔や胸腔の臓器を損傷してしまうこともあることを、念頭 においておく。

 以下の処置は、通常、意識がない時に行う。
・指による除去
 詰まった異物が口の中に見えていれば、指に布を巻いて口の中に突っ込み取り出す。簡 単そうに思えるが、窒息して暴れている状態では難しく、危険な嘔吐を誘発したり、指 を噛まれることがあるので、注意する。
・吸引による除去
 強力な吸引装置があれば、それを用いて吸引する。実際にはかなり吸引力の大きなもの でなければ、引き出すことができず、かえって嘔吐を誘発する危険もある。