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オンライン版「ロシア文学を読もう」

「巨匠とマルガリータ」のめくるめく世界

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2003年5-6月
あのユーゴザーパド劇場の舞台「巨匠とマルガリータ」が日本上陸!
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観客を魅了しつづけた「巨匠とマルガリータ」の舞台 

ソ連の崩壊前と崩壊後 


十字架の前のイエス
タガンカ劇場『巨匠とマルガリータ』の舞台より
 

 

「原稿は燃えないものだ!」と悪魔は叫び、そのマントの下から灰になったはずの原稿を取り出すと、プロコーフィエフ「ロミオとジュリエット」の軽快なメロディーに合わせて、一枚一枚それを放り投げた。 

舞台から観客席にまで舞い上がる白い原稿用紙。1977年4月、ソ連のモスクワ・タガンカ劇場で上演された『巨匠とマルガリータ』は、5年間も上演許可がおりないまま、稽古だけを黙々と続けたきた俳優たちと演出家リュビーモフの「勝利」の日であった。 

芝居が終わると、俳優たちは舞台の中央にブルガーコフの大きな肖像写真を立てかけ、その前に蝋燭(永遠の灯)を点した。観客席のどこかで、あるいは劇場のどこかで監視をしているであろうKGBや党の文化官僚たちの目を気にしてか、観客たちは沈黙のうちにひたすら手を叩きつづけていた。 

それはソ連における「検閲」との闘いが、この作品の出版を知らずに亡くなったブルガーコフからタガンカ劇場のメンバーたちに確実に引き継がれた日であると同時に、6年後ロンドン滞在中にリュビーモフがソ連の市民権を剥奪されることになる、その確実な序曲の始まりでもあった。 

ソ連が崩壊して2年後、1993年にユーゴザーパド劇場が上演した『巨匠とマルガリータ』は、ソ連という時代を引きずりながらも、現代の様々な「混沌」の中であらためて表現の自由を考える契機を、グロテスクな笑いの中で若者に突きつけている。真っ暗な闇に光る巨大なトタン板が数枚。その板を下から捲り上げるようにして、登場する悪魔一味。 

そして、彼らに衣服もモラルも権威もすべて引き剥がされ、全裸に近い格好でトタン板を叩きつつ踊りまくる登場人物たち。もう劇場内にも外にもKGBの監視の目はない。しかし、一人一人の心のうちにある「臆病」や「卑屈」の目に「縛られていないか」とブルガーコフは現代の我々に問いかけてくる。 

2001年4月このユーゴザーパド劇場の『巨匠とマルガリータ』はニューヨーク、ボストン、シカゴでのアメリカ巡業で大成功を収めた。 
2003年春には日本上陸が予定されている。しかし、この小説の自体のスケールは演劇の数百倍、数千倍、宇宙的な大きさなのである。 
                    
堀江新二(大阪外国語大学助教授・ロシア演劇) 
 
 

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黒魔術団の一行
タガンカ劇場『巨匠とマルガリータ』の舞台より