どのようなアニメ化なのか


今さら言うまでもないが、この作品は同名のPC版のゲームをアニメ化したものである。
まずは簡単にゲームの『To Heart』についてふれることにする。

ゲーム内容は、主人公藤田浩之の学園で出会った女の子とのストーリーを描いた、テキストを読んでいくタイプのアドベンチャーゲームである。基本的に8人の女の子が登場し、それぞれにストーリーが用意されているというものだ。それぞれ独立したストーリーなため、複数の女の子と結ばれるということはない。あくまでオムニバス形式のような感じである。
18禁ゲームのためHシーンがあるが、女の子と心を通わせていくといった心理描写を描くのがメインともいえるゲームであり、あまりHシーンの必要性はない。あくまで付加要素的なものである。

ゲームとアニメの間に人物の増減はなく、キャラクターそのままのアニメ化である。ただ、キャラクターの性格づけなどはまったく同じというわけではない。浩之はゲームではアニメ程のぶっきらぼうな性格ではないし、あかりもゲームではアニメ程大らかな性格ではなくすぐにやきもちを焼くような人物だし、志保もゲームではとても会話が成り立たないと思える程、自己中心的な性格である。もちろん、元々はゲーム上の人物なのだしディフォルメ的な性格はやむを得ない。しかし、それをそのままアニメの人物にしてはさすがに説得力がないので、根本の設定のみを生かし、よりリアルな性格づけをした結果がアニメ版の人物達であろう。

アニメではゲーム同様に8人の女の子が登場することとなるが、さすがにゲームと同じ話を展開するわけにはいかない。先に述べたようにそれぞれ独立したストーリーがあったわけだが、それをなぞれば複数の女の子と浩之が結ばれていくことになってしまい、いくらなんでもそれをTVシリーズでやるのは無理がありすぎる。
そこでこの作品は、ヒロインともいえるあかりとその親友の志保はレギュラーとして出演しながらも、それ以外の女の子は回ごとにゲストとして登場して話を展開するというスタンスをとっている。基本的に浩之とそれぞれの女の子がお近づきになるという話である。
回ごとに違う女の子にスポットをあてるという点では『センチメンタルジャーニー』に似ているが、このTo Heartでは女の子全員が同じ学校に通うという決定的な違いがあるため、一度登場した人物はその後もわき役として登場することもある。 当然そこで親密さの変化が描かれるわけである。

またゲームの話に戻るが、8人の女の子それぞれにストーリーというように、あくまで主要部分は女の子とのコミュニケーションである。学園が舞台ではあるが、ゲームの根本である選択肢を選ぶシーンは放課後からであり、あまり学園生活というものに重点は置かれていない。学校行事にしても実際にシーンとして行われるのは期末試験くらいのものであり、あくまで学園に通う学生だからそこが舞台の一部になっているといった感じである。実際ストーリーが佳境になると、学園の外が舞台になり、学園物という感覚は薄れていく。
こうして見ると、ゲームでは浩之と女の子との関係がメインに描かれ、彼女らの学園生活というのは抜け落ちているといえる。もちろんそれはメインではなくあえて扱うことはないということだから、それが悪いということではない。

そこでアニメの話となるが、女の子それぞれとの独立した話はできないと述べたが、その代りに彼女らの学園生活を描写することを心がけているようである。
もっと言ってしまえば、徹底的に学園物として描こうというふうに見えるのである。
例えば、浩之、雅史、あかり、志保の中学からの4人組はゲームでも扱われるが、あかりと志保は別のストーリーがあるといった関係上、この4人が揃うシーンはあまりない。
しかしアニメではこの4人組のシーンが多く、またゲームよりもはるかに現実味をおびた会話や関係が描かれているように見える。
そして体育祭、学園祭といった学園ならではのイベントを扱い、その中での女の子達の様子を描いていることからも、学園物のスタンスがはっきりうかがえる。

結論としては、ここまでの話でわかるように「まったくそのままアニメ化した作品」ではないということである。
しかし、人物の性格が違うといっても程度の問題であり、まるっきり一新したというわけでもない。思うにそれぞれのキャラクターを、監督なりスタッフなりが自分達なりに解釈して、アニメでも通用するような現実味のある人物にしたてあげたのだろう。これはキャラに限った話ではなく、それぞれの女の子の特徴とそれにまつわる設定や、ストーリーも同様であるように思う。特にあかりの視点からの作品作りはアニメ版独自のものであるし、最大の特徴であるといっていい。

「人物やテーマをスタッフなりに解釈して新たなエッセンスを加え、学園物として昇華した作品」

これがこのアニメ化に対する、まっとうな評価ではないだろうか。

 


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