山の村に 小さなおはなしの空間を

 小学校3年生の時からの親友に、安井清子さんがいます。

 「ヤス」とは、とにかく出会った時から、好きな本の趣味が一致していました。私たちは、一緒に、スェーデンの国民的童話作家、リンドグレーンの書いた物語に夢中になりました。「やかまし村の子供たち」という本です。今でも、こっそりおたがいを『リーサ』『アンナ』と呼び合うような仲ですが、その頃は寝ても覚めてもやかまし村の事を考えていたと言っても言いすぎではありません。
 物語を楽しむ気持ちは、その後、自分でお話を書くということへも発展し、小学生ながら、4人の仲良しで『四つ葉』というグループをつくり、ガリ版刷りで文集を作るという作業もやっていました。
 その当時の気持ちの延長で、わたしは今の仕事をしているとも言えるのですが、彼女は、ひとところにじっとしている私と違い、好奇心のおもむくところ、どんどん外へ出て、世界を広げていく人でした(今もそうですが!)。
 ヤスは、リンドグレーン熱が高じて、スェーデンにホームステイにも行きました。大学卒業後は、タイにあったラオス難民のキャンプで、主にそこの子供たちのために、本を読んだり、読み書きを教えたりしながらNGOのスタッフとして働き、それから現在に至るまで、ラオスの少数民族、モン族と深くかかわっています。
 あるときは、日本に数人いるかいないかのモン語の通訳者。またあるときは、絵本を使って子供と遊ぶストーリーテラー。またあるときは翻訳者、作家、そして、元々文字を持たない民族だったため口承で伝えられてきた、モンの民話の収集家。
 年に何回もラオスと日本を往復して、苦労しながら、モン族の民話を録音収集し、その資料は多分膨大な量になっているはず! 彼女の努力で、モンの子供や若者たちが刺繍で作った、すばらしい絵本もできています。

 同時に、ヤスは、子供たちに絵本を送ろうという呼びかけをしています。それは、不幸な戦争で大変な目にあってきた子供たちへの同情ではなく、縁あって難民の子供たちとともに生活し、子供たちに育てられたと感じてきた彼女の体験として、よいお話というものは、どこの誰がつくったものであろうと、国境を越えて子供の心に届くこと、そして、そこで得たよろこびや楽しさが、きっと子供たちの力になっていくであろうことを信じているからです。子供たちが幸せでない国に、未来はありません。

 考えてみれば、そんなに素晴らしい文化的大事業をやっているのに、相変わらずちっとも気取らない、えらそうに見えない(ごめん)、可愛くて、器用じゃなくて、酒呑みで、食いしん坊で、楽しい、いいヤツ!

 私も、陰ながら、そんなヤスの応援をしていきたいと、ひそかに思っている次第です。
 だれしも無理はできない。でも、できる人が、できることをやったなら、ささやかでも何かが変わって行くのではないか・・・・。
 興味を持たれた方は、ぜひとも安井清子さんのHPを訪れて見て下さい。
『国境を越える子どもたち』のページは必読です。『いおぺ通信』もお薦め。
 絵本を送ろう!の呼びかけと、探している本のリストは、こちらにあります。

 載っている写真もみな、ヤスが撮ったものです。
 どうぞよろしくお願いいたします。             (2003.3 長井理佳)


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