Reading 2002



1月〜6月(15冊) 7月(16冊)


 2002年 7月 
 つめたいよるに 江國香織 新潮文庫
 21の作品からなる短編集。ホラーっぽいが決して怖くなく、さわやかな作品があります。
 孤独感を絶妙に書いた「ねぎを刻む」はとても印象に残りました。素晴らしい作品。
 「デューク」「いつか、ずっと昔」「鬼ばばあ」「冬の日、防衛庁にて」が良かったです。

 おのぞみの結末 星 新一 新潮文庫
 11のショートショートからなる作品集。
 久しぶりに星新一氏の作品を読みました。一気に読めるし、読み終わった後、何とも言えない不思議な 
 気持ちになります。
 「あの男この病気」「親しげな悪魔」「空の死に神」が良かったです。
 見事な切れ味のショートショート。さすが星新一。

 安全のカード 星 新一 新潮文庫
 16のショートショートからなる作品集。
 「出勤」「幸運な占い師」「あの女」が良かったです。
 あとがきで星新一氏はこう書いています。
 「太宰治の文章などまねしやすそうだが、やれる人はいない。あの時代の津軽での旧家の生活を、現実
 に体験できないからだ。いいかえれば、個性とはきわめて根が深いものといえる。」

 マグネット 山田詠美 幻冬舎
 9つの作品からなる短編集。帯にこうあります。「心の  の扉を開く最高の純文学」
 「解凍」「瞳の致死量」「マグネット」が良かったです。
 「LIPS」は難しい作品でした。

 マイ国家 星 新一 新潮文庫
 31のショートショートからなる作品集。
 「特賞の男」「うるさい相手」「死にたがる男」「趣味」「商品」「国家機密」「ガラスの花」「マイ
 国家」が良かったです。
 解説で常磐新平氏が、
 「しかし、星新一氏の小説は平易そのものだが、非常にしたたかな感じがする。この『マイ国家』を百
 読して、その感を深くした。星さんの小説は時間と空間を超越したところで書かれ、そうして生きてい
 るかのようだ」
 「星新一の小説には、批評家も解説屋も不要である。それが不要であることの証明が星さんの数々の
 ショートショートではないか」と書いています。

 最後のメッセージ 阿刀田高 講談社文庫
 42のショートショートからなる作品集。
 「人生なんて、天国までたどり着くエレベーターみたいなものじゃない」
 「最後のメッセージ」が素晴らしい作品です。

 ひとにぎりの未来 星 新一 新潮社
 40のショートショートからなる作品集。
 「お待ち下さい」「拳銃の感触」「成熟」「はじまり」「ある建物」「はい」が良かったです。

 コーヒーブレイク11夜 阿刀田高 講談社文庫
 11の作品からなる短編集。
 「冥い道」「おしゃべりな脳味噌」「お望み通りの死体」「不完全な男」が良かったです。
 「大腿は堅く閉じあわさっていたが、男の掌が少しずつその緊張を解きほどく、恥毛は薄く、亀裂はま
 っすぐに凹んでいる。溝の中の潤いが男の指先を溶かすようだ」
 阿刀田氏の性描写は何とも言えず、良い。

 危険信号 阿刀田高 講談社文庫
 12の作品からなる短編集。
 「鳩の血」はすごく良かったです。読者を不安にさせておいて、ほっとさせるラスト。うまいです。
 他には「赤鰊」「危険信号」が良かったです。
 「それにしても夫婦とはなんなのかしら。世間に対しては一心同体を装いながら、相互に少しずつ欺し
 あい、競いあっている関係・・・・・・。」

 右脳刺激で頭が驚くほど鋭くなる 品川嘉也 三笠書房
 左脳=言語、概念、論理的思考などを司る。分析的であり、物事を細分化、分割化する能力をもち、デ
    ジタル脳といわれる。
 右脳=イメージ、絵画、図形、空間パターン(形態)認識力、また、音楽、非論理的直感(ひらめき)、
    などを司る。感情もこの脳が支配する。物事を全体的にとらえる能力をもち、アナログ脳といわ
    れる。
 「右脳をフルに活用する右脳集中力を鍛えるには、むしろ逆にリラクゼーションが有効であり、不可欠
 でもある。たとえば質のいい頭脳の遊びが右脳集中を鍛える上等の栄養となるのだ。」
 右脳の意味とその生かし方について理解できる一冊です。

 白い服の男 星 新一 ハヤカワ文庫
 9のショートショートからなる作品集。「時の渦」は傑作だと思います。
 他には「白い服の男」「老人と孫」「矛盾の凶器」が良かったです。 

 ボッコちゃん 星 新一 新潮文庫
 50のショートショートからなる作品集。
 「生活維持省」は切なくなる作品であり、「ゆきとどいた生活」は素晴らしい作品です。
 他には「ボッコちゃん」「暑さ」「親善キッス」「意気投合」が良かったです。

 女が見ていた 横溝正史 角川文庫
 酔い痴れて夜の歓楽街をさまよい歩く啓介は、絶えず誰かの視線を感じていた。その視線は女だった。
 それも三人が入れ替わりながら彼のあとを執拗につけてくる。朦朧とする頭の中で、彼はそのことだけ
 をはっきりと意識していた。
 外出中に妻を殺害され、しかも現場には啓介がいつも持ち歩いていたはずの愛用のシガレットケースが
 あった。妻殺しの重要容疑者にされ愕然となった作家の風間啓介。自分のアリバイを証明する謎の三人
 の女を必死に探索する。だが、その中の一人をやっと見つけた時、彼女は・・・・・・。
 昭和24年に新聞に連載された作品。
 あまりの面白さに、作品に引き込まれてしまい、結構ページ数があるのに一日で読んでしまいました。
 本格ミステリーを読みたい人におすすめの一冊です。

 鏡の中の世界 小松左京 新潮文庫
 35のショートショートからなる作品集。
 前にも読んだのは10年以上も前にもなるのに、不思議なくらい鮮明に記憶に残っている作品がいくつ
 かありました。
 「超人の秘密」「胎内めぐり」「倒産前日」「三本のスキー」「蜘蛛の糸」「牛の首」が良かったです。
 解説で権田萬治氏が、
 「小松左京のSFは、まさしく仮説の文学であり、鋭い文明批評に支えられた思弁小説でもあるのであ
 る。」と書いています。

 虚構の空路 森村誠一 角川文庫
 巧みなストーリーの展開と意表をつくトリック。
 素晴らしく完成度の高い推理小説です。

 女学生の友 柳 美里 文藝春秋
 「女学生の友」と「少年倶楽部」の2つの作品からなる一冊。
 「女学生の友」は非常に面白い作品でした。柳美里さんに、こんなにユーモアのセンスがあるとは思わ
 なかったです。声を出して笑ったところが2カ所ありました。
 そんな部分とは裏腹に、ラストの迫り来る寂寞感がすさまじい。結局、人間は孤独なのだ。
 「だれもこない、なにも起こらない、それに堪えるのが生きるということだ。」
 「幸せというのがなにかを手にすることだとすれば、わたしの手のなかは空っぽだ。」
 「生きるとは無意味な現実を受け容れることだ。」
 「少年倶楽部」は小学生が女性を襲うという怖い話。少年の心理描写がとても良い。


 2002年 1月〜6月 
 R.P.G. 宮部みゆき 集英社文庫
 宮部みゆきさん、初の書き下ろし文庫。
 要所、要所にメールを挿入し、一味違ったミステリー小説になっています。
 ただ、ラストが今一でした。宮部みゆきさんらしくない。

 人間失格 太宰 治 新潮文庫
 読んだのは7回目。
 今回は、病院の精神科病棟に入院している時に読みました。
 この小説は、精神科病棟に入院していなければ、本来の意味が理解出来ないのではないか。
 「人間失格」この小説は、永遠に読まれ続けるであろう。
 落ち込んでいる人に読んでもらいたいです。

 聖 書 日本聖書刊行会
 休み休み読んだので、読み終えるのに何年もかかってしまいました。
 太宰治が脳病院に入院していた時、聖書ばかり読んでいた事に触発されました。
 私は神は未だ信じらませんが、イエス、イエスの言葉は信じます。
 聖書は、良い言葉がたくさんあります。
 それが弱い私の心を癒してくれるのです。

  柳 美里 小学館
 ベストセラー「命」の第二幕。生と死に引き裂かれた6か月間の心理を描いた精神のノンフィクション。
 癌に冒され、死へと近づいていく東由多加。
 未来から射し込む唯一条の光、息子丈陽。
 丈陽を育てながら、東由多加の癌と必死になって闘う。
 「未来には死だけでなく丈陽が存在する。死の存在感より丈陽の存在感の方が大きかった。丈陽のため
 に生きているのではないか。丈陽がいなければ生きていけない。」
 女性は子供が生まれると変わるものだ。
 丈陽君がいる限り、柳美里さんは自殺することはないだろう。

 メロス・レヴェル 黒武 洋 幻冬舎
 どういうジャンルの小説なのか、説明するのが難しいです。近未来小説とでも言うべきか。
 メロス・レヴェルの「メロス」は、太宰治の「走れメロス」の「メロス」。
 絆を信じて、待つか、走るか。
 面白く読むことが出来ましたが、明らかに書き足りない部分が何カ所かあります。
 作者は意外な展開を狙ったのでしょうが、ラストの方はとても不自然な感じがします。
 心理描写が足りない部分があるのも残念です。

 斜 陽 太宰 治 新潮文庫
 13回目。
 斜陽を御覧ください。

 あかね空 山本一力 文藝春秋
 第126回直木賞受賞作。時代小説。
 テンポが良く、難しくなく、非常に面白い作品です。
 「この作者には時代小説に対する覚悟がある。それが熱となって読者を優しく包み込む。」と平岩弓枝
 さんが書いているとおりです。
 時代を超えて、江戸に住む普通の人々の人情が伝わってきます。

 クラインの壺 岡嶋二人 新潮文庫
 こんな小説は初めて読んだ、という感じです。
 現実と仮想現実が交錯し、ストーリーはどんどん展開していきます。
 読み出すと面白くて、途中で止められなくて、一気に読んでしまいました。
 ラストが何とも良い。

 志村流 志村けん マガジンハウス
 金、ビジネス、人生の成功哲学。
 この本を読み終え、志村けんを見直しました。すごく偉い人だと思います。
 「一生を一日二十四時間と考えたら」の発想が素晴らしく良いです。
 私の場合は昼の12時。
 来年40歳になるので、焦る気持ちがありますが、まだ昼の12時だと思えば「まだ人生はこれからだ」
 と思うことが出来ます。
 あと「ずっとカッコ悪い生き方していて、それが二十年続いたら、むしろそれは十分カッコイイことで、
 評価すべきなんだと思うよ。」という名言に感動しました。
 「仕事していくうえで、必ず守っていることがひとつある。それは、どんな時でも約束の時間前に現場
 に入るということだ。」これにもすごく感動しました。
 志村けんは偉いのだ。

 いま聞きたい いま話したい 瀬戸内寂聴 山田詠美 中央公論新社
 作家の瀬戸内寂聴さんと山田詠美さんの対談集。
 瀬戸内さんの「「これだけは知られたくない」というのを書いた人って見たことないね」に妙に納得し
 ます。
 私小説といえども、全てをさらけ出しているわけではないのです。
 「作家はすべて、自分は天才だと思っていますよ。そう思わなきゃ、どうしてやっていけるんですか。」
 という言葉に、瀬戸内さんの作家としての自信を感じることが出来ます。
 瀬戸内さん、山田さんの優しさが伝わってくるような対談集です。
 とても読みやすいです。

 聖書の中の女性たち 遠藤周作 講談社文庫
 一人の娼婦、サロメとヘロジャデ、聖母マリアなど聖書に登場する女性を書いた作品です。
 聖書に登場する女性を非常にわかりやすく物語にしています。
 そこから感じられるのは、「イエスの優しさ」です。
 解説で矢代静一氏が「遠藤周作の作品を支えている一つの要素は「心のやさしさ」であると書いていま
 す。
 遠藤周作氏も優しいのだ。

 私のイエス 遠藤周作 黄金文庫
 昨年、一度読んだのですが、もう一度読んでみました。
 まさに「日本人のための聖書入門」です。
 團伊玖磨氏は「イエスに近づくための最も優れた本」と絶賛しています。
 「信仰とは「99%の疑いと1%の希望」である」という一節になるほどと思いました。
 「もし、自分がその女と出会わなかったら、その女は、きっと別の人生を歩いた。」という言葉が心に
 刺さります。
 聖書を読む前にこの本を読めば、聖書をかなり理解出来ると思います。
 時間があれば、遠藤周作氏の「イエスの生涯」と「キリストの誕生」をもう一度読んでみたいです。
 私はクリスチャンになろうかと、最近本気で考えています。
 先日、家のポストに教会のカードが入っていました。
 カードには「神様は、あなたを愛しておられます」とあります。
 神様はどこに居て、私を、こんな私でも愛してくれているのだろうか。

 不知火海 内田康夫 講談社
 私は、内田康夫とその作品が嫌いです。なのに何故読んのか?職場の上司からもらったからです。
 あまり期待せず読んだのですが「不知火海」は、割と良い作品でした。
 それにしても、内田康夫の作品には「偶然」が多すぎる。
 また、この作品で、内田康夫は何を読者に訴えたいのでしょうか?
 推理小説ではないし、文学小説でもありません。
 中途半端な作品。内田康夫の作品が売れている理由が全くわかりません。

 心病める人たち 石川信義 岩波新書
 「日本は豊かな国になった。経済的には、たしかに、豊かになったのだろう。だが、日本が、昔より心
 豊かな国になった、とは思わない。むしろ、より心貧しい国になってしまったのではないか?精神医療
 という窓を通して、いまの日本を見ていると、私はそう感じるし、こんなでいいのか!と大声で叫びた
 くなることがある。」
 心病める人たち、精神病者の辛い思いを書いた一冊。

 悠飛社文章講座新虎の巻  悠飛社
 「自分の心の中にひそむ情熱、感情、そういったものをまず見つけること。これが非常に重要なことだ
 と思います。」
 「最後は「人間性」で結局、人間がものを言うと思います。」
 非常に分かりやすく、これから文章を書こうとする人のためになる一冊。
 小説、エッセイを書こうとする人ばかりでなく、手紙を書くのにも役立つので、おすすめです。



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