1947年
1948年4月4日,独奏クラリネット Almando Basile ,独奏ファゴット Bruno Bergamaschi , Otmar Nussio 指揮, Orchestra della Radio Svizzera Italiana
独奏クラリネット,独奏ファゴット,ハープ,弦楽五重奏,弦5部
全体は切れ目無く演奏されるものの、おおまかに3楽章に分けることができる。主役は2本の木管であるが、他にハープ、ソロの弦楽五重奏および弦楽合奏を要する、一種の合奏協奏曲のような変わった編成を取る。第1楽章は、弦の序奏に乗ってクラリネットがまず静かなメロディーを奏で、それが一区切りつくと今度はファゴットが登場し、以下変幻自在な掛け合いが繰り広げられる。ただし必ずしも両者は常に和して歌うわけではなく、テンポもメロディーも複雑である。第2楽章ではファゴットがメインとなり、弦のトレモロの上をゆったりとしたメロディーが途中からクラリネットも交えて奏でられる。しかし長いものではなく、やがて全曲のおよそ半分にも及ぶ長さを持つ第3楽章へと受け継がれていく。第3楽章では2本の木管は速いテンポの中お互いに補い合い、時には和して歌う。伴奏ハープや弦楽五重奏、弦楽合奏との掛け合いは見事の一語に尽きる。
シュトラウスの声楽を伴わない管弦楽作品としては最後のもので、実に作曲者83歳の時の作品です。そのシンプルな楽器編成ともあいまって、この曲には最盛期のシュトラウスの楽曲においては決して聴かれなかったような、もしくは影を潜めていたような、一種静謐とした雰囲気が終始一貫して流れています。しかしその一方で、この曲の多くの部分には軽やかな気分や明朗快活さが同居しており、少なくとも他のどの曲とも異なる非常に独特な雰囲気を持った作品であるということだけは間違いなく言えそうです。
当初この曲は、一説にはアンデルセン童話の中の話 (「豚と番人」、「王女と乞食」、「王女と熊」など、諸説あり。) に基づいて構想されたのだそうですが、作品の完成後にはそのような標題的要素は一切除かれています。当初の構想としては王女をクラリネットに、乞食なり番人なりをファゴットに受け持たせようとしていたのだそうです。 (『作曲家別名曲解説ライブラリー9 R. シュトラウス』 p.125) 第1楽章では主としてクラリネットが主役的な役割を受け持っています。
第2楽章の冒頭では弦のトレモロの上に乗ってまずファゴットが登場しますが、ブルックナーならともかくシュトラウスの書く楽章が弦のさざなみのようなトレモロで開始されるというのはちょっと珍しいような気がします。でもそのおかげなのかどうか、この楽章は短いながらもとても叙情味豊かで、単なるつなぎ的音楽以上の存在感を獲得しています。
第3楽章はロンドだということだそうですが、その構造は複雑でちょっと聴いただけではよくわかりません。しかしとにかくテンポの速さが心地よく、自由に気の向くままに作曲の筆を進めたシュトラウスの気の乗りようが随所に感じられる充実した作品です。
この曲は、最晩年に書かれたいわゆる「小春日和」作品群に属する小品であり、しかも『4つの最後の歌』の直前に作曲されたものです。『4つの最後の歌』は (シュトラウスには珍しく) 自分たち夫婦の内面の心情を正直に告白した、純粋にパーソナルな作品ですが、一方こちらの『二重小協奏曲』は、純粋に他人のために書かれたエンターテインメント作品であり、ほぼ同時期に書かれたにもかかわらず、ある意味『4つの最後の歌』とは対照的な性格を持った作品、という見方もできるかもしれません。