1903〜05年
1905年12月9日,ドレスデン,宮廷歌劇場,指揮 Ernst von Schuch
ピッコロ,フルート3,オーボエ2,イングリッシュ・ホルン,ヘッケルフォーン,クラリネット5,バス・クラリネット,ファゴット3,コントラファゴット,ホルン6,トランペット4,トロンボーン4,テューバ,ティンパニ,小ティンパニ,大太鼓,小太鼓,タンブリン,シンバル,タム・タム,トライアングル,カスタネット,シロフォン,グロッケンシュピール,チェレスタ,ハープ2,弦5部 (16-16-10~12-10-8)
舞台裏にハーモニウム,オルガン
以上はオペラ上演の際の楽器編成。『サロメの踊り』独立して演奏の際には使われない楽器も含む。
オスカー・ワイルド Oscar Wilde 原作、ヘドヴィヒ・ラハマン Hedwig Lachmann 独訳のテキストに基づく1幕物のオペラ。物語は、その大筋を聖書から題材を取りながら、特に細部において聖書とは全く別物と呼べるほど独自に脚色された筋書きを持っている。シュトラウスは戯曲台本に若干の手を加えただけで、 Libretto 化の手続きを経ずに直接付曲を行っている。
舞台は1世紀当時のオリエント、ヘローデス Herodes 王の宮殿。牢獄の中では予言者ヨカナーン Jochanaan が捕らわれの身となっている。キリストの到来を予言し、ヘローデス王とヘローディアス Herodias の不義を告発するヨカナーンの声に興味を覚えた王女サロメが、彼を牢獄から連れて来させ、その魅力に心を奪われる。サロメはヨカナーンに激しく接吻を要求するが拒否される。 (その後の短い間奏曲的部分で、後にサロメがヨカナーンの首を王に要求する際の動機が重々しく頭をもたげるのが聴かれる。) その後ヘローデス王が登場し、宴会の席でサロメに舞いを所望する。ここでサロメは7枚のヴェールを1枚づつはぎとりながら官能的な舞いを踊り、王を喜ばせる。舞いの褒美としてサロメは予言者ヨカナーンの首を要求し、ヘローデス王に約束を守るよう激しく詰め寄る。しぶしぶヘローデス王はサロメの願いを聞き入れ、首を切る許可を与える。その後舞台上に銀の盆に乗せられたヨカナーンの生首が届けられ、サロメはその生首に接吻を浴びせる。王はその光景に恐怖を覚え、兵士たちに命じて ("Man toete dieses Weib!") サロメを殺させる。
解説書によると、このサロメの踊りと最終場の音楽はそれ以外よりも先に作曲されていたのだそうです。聴いただけではすぐにはわかりませんが、踊りの部分だけが妙に親しみやすい音楽になっているような気はします。途中ヨカナーンの動機も出現しますが、本編のように重々しく荘重な音楽ではなく、軽やかにあっさりと扱われているにすぎません。単にサロメにはヨカナーンがそのようにしか見えなかった、ということに過ぎないのかもしれませんが...
この『サロメ』というオペラに対してはかのグスタフ・マーラーも賛辞を惜しんでいませんが、一方で妻のアルマ・マーラーは、この踊りの音楽の部分にのみケチをつけています。曰く、「全曲の中のただ一つの弱点」「穴埋めの常識的な仕事」等々。 (アルマ・マーラー『グスタフ・マーラー』石井宏訳) いつ作曲されたのかはともかくとして、確かに前後と異なる雰囲気を持った曲なのは間違いないようです。できれば同じ雰囲気を持った曲として改作してほしかった気もしないではないのですが、その後のシュトラウスの音楽性の転換を考えてみればあえて改作しなかったこともある程度は納得がいきます。もしどんな曲になっていたかを想像したければ、この後に作曲されたオペラ『エレクトラ』の中の多くの楽節を聴いてみるのが一番いいでしょう。より激しいリズムと緊張感にあふれた音楽を聴くことができます。 (ただし、『エレクトラ』のリズムはより単純かつ大胆であり、『サロメ』の繊細さ、神経質さとはかなり異質ではありますが。)
とはいえ、この『サロメの踊り』自体も決して劣った音楽というわけではなく、むしろ独立して演奏する分にはこういった曲の方が受け入れられやすいのも事実です。オペラ本編と比べていくぶん甘目ではありますが、リズムと情緒に富んだ音楽を聴かせてくれます。