組曲『ホイップクリーム』
Suite aus "Schlagobers"


◎ 作曲年

1932年 (バレエの作曲は1921〜22年)

◎ 初演

1932年11月8日,マンハイム, (バレエの初演は1924年5月9日,ウィーン,国立歌劇場)

◎ 楽器編成

◎ 内容

1921〜22年にかけて自分の台本に基づいて作曲された2幕物のバレエ音楽『ホイップクリーム』から作曲者自身が抜粋して8曲からなる組曲とした。抜粋された部分のみをごくおおざっぱに辿ると大体以下のようである。 (曲の番号は CD 解説に基づく。)

堅信礼を控えた子供たち (Firmlinge) が馬車で市内を巡り、最後にお菓子屋さんでお菓子を好きなだけほおばることを許される。お腹いっぱい食べた後、子供たちは楽しげにレンドラーの舞曲を踊る。 (導入部)
子供たちが去った後、人影のなくなったお菓子屋さんのキッチンで、お菓子でできた兵隊たちが動き出し、隊列を組んで歩き出す。やがて戦争ごっこが始まる。 (第1曲)
続いて5/8拍子の舞曲の体裁を取る紅茶の葉の踊り (第2曲) 、コーヒーの踊り (「ブラジルの Matschitsch のスタイルで」書かれた行進曲) と続き、ここで登場したコーヒーの王子様のために夜想曲が奏でられる。最後に行進曲のメロディーが少しだけ再現される。 (第3曲)
第1幕の最後はホイップクリームのワルツで華麗に締めくくられる。 (第4曲)

第2幕は食べすぎで倒れた子供の病室で始まる。眠りについた子供の夢の中でプラリネのお姫様がワルツを踊り (第5曲) 、次いで小さなプラリネたちの踊り、クラッカーボンボンの踊り、ギャロップと速いテンポの曲が続く。 (第6曲)
次にシャルトルーズ酒の精であるマリアンヌが優雅なメヌエットを踊り、それからスリボヴィッツ酒 (ユーゴスラビア産のすもも酒) の精のラディスラフとパ・ド・ドゥを踊る。 (第7曲)
最後にそれまでの主題も折り込みながら全体の舞曲 Allgemeiner Tanz で華麗に全曲は閉じられる。 (第8曲)

  1. (Vorspiel)
  2. In der Konditorkueche
  3. Tanz der Teebluete
  4. Tanz des Kaffees - Traeumerei
  5. Schlagoberswalzer
  6. Tanz der Prinzessin
  7. Tanz der kleinen Pralinees - Springtanz der Knallbonbons - Galop
  8. Menuett und Pas de deux
  9. Allgemeiner Tanz


◎ メモ

上記の抜粋された曲だけではバレエ音楽の筋を詳しくたどることは不可能ですが、チャイコフスキーのくるみ割り人形を意識して書かれたことは明らかです。組曲の曲の配置を決める際にも意識していたかもしれません。ちなみに「花のワルツ」に相当する (ように思われる) ホイップクリームのワルツは組曲の中程に置かれています。

残念ながらバレエ全曲版の方は今日滅多に演奏される機会がなく、ディスクの数も非常に限られているのが現状です。このバレエの初演は失敗に終わりましたが、それでも個々の曲の中には魅力的なものが多く含まれています。第4曲のワルツはその代表でしょうし、個人的には第1曲もとても気に入っています。軍隊行進曲調のリズム (マーラーの第6に出て来るリズムをもうちょっと複雑かつ軽やかにした感じの...) に乗って、奥行きのある豊かな響きのメロディーが奏でられます。すぐに終わってしまうのがちょっと残念な曲です。他ではやはり夜想曲 Nocturne が秀逸ですが、それ以外の曲も、総じて盛り上がりで多少騒々しい感じになることはあるものの、どれも楽しめる曲ばかりです。純粋に楽しんで聴く分には、批評家による辛口の批評は全く気にする必要はないわけですし、せめて第4曲のワルツだけでももうちょっと有名になってほしいと思います。

第2幕も悪くありません。メロディの中にふと訪れる、郷愁を誘うノスタルジックな瞬間は、むしろ第2幕の方に多い気がします。

余談ですが、作曲者自演によるホイップクリームのワルツの録音をラジオで聴いたことがあります。確か作曲者が相当高齢になってからの録音だったように思うのですが、とても速いテンポの演奏で、ベームやカラヤンでさえ晩年には指揮のスピードは遅くなっていったのに、それに比べてこのテンポは何なんだ、と、びっくりした記憶があります。とても熱気のこもった演奏ですので、機会があったら是非一度聴いてみてください。



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