1940〜1941年8月3日総譜完成.
1942年10月28日,ミュンヒェン, Clemens Krauss 指揮, Staatsoper
ヴァイオリン2,ヴィオラ2,チェロ2
シュトラウス最後のオペラ『カプリッチョ』の導入部として演奏される音楽。『カプリッチョ』は、正式には『カプリッチョ,音楽のための会話劇』 Capriccio, ein Konversationsstueck fuer Musik といい、オペラにおいて言葉と音楽とのどちらが優先されるべきかについて、登場人物たちが交わす論争を主軸に展開される1幕物のオペラである。元々は18世紀のオペラ・ブッファ『初めに音楽,それから言葉』 (1786年サリエリ作曲/カスティ台本) を下敷きとし、それを大英博物館で閲覧したツヴァイクが原案の形にまとめあげシュトラウスに提示した。ツヴァイクとの共作が困難になってからは演劇学者のグレゴール Joseph Gregor が台本作成を引き継ぎ、最終的に指揮者のクレメンス・クラウスによって1941年1月に台本は完成した。 (シュトラウスによる総譜は同年8月3日に完成。)
言葉と音楽、それぞれの立場を代表する詩人オリヴィエ Olivier と音楽家フラマン Flamand は実は恋仇きでもある。双方から愛を告白される伯爵夫人 (あるいは伯爵未亡人) Madeleine の苦悩は、実は永年オペラという芸術と深くかわってきた作曲家シュトラウス本人の思いそのものでもある。
曲は3部構成を取る。まだ幕の上がる前、まずはオーケストラ席で演奏され、長い中間部を経て主部の再現される所あたりで幕が上がる。演奏は舞台裏の六重奏に引き継がれる。舞台上では詩人オリヴィエと音楽家フラマンが、目を閉じて音楽に聞き入る伯爵夫人の姿を称賛しながら、その一方で「言葉が先か、音楽が先か」について小声で論争を始める。この二人が恋愛だけでなく、芸術家としてもライバル関係にあることが、この短いシーンだけでひととおり観客に伝わるようになっている。
Andante con moto
とても繊細で美しく、かつ情熱的な曲です。この導入部だけ聴くとオペラも全編この調子なのかと思ってしまいますが、本編の方はもっとにぎやかで、事件と呼べるほどの事件が起こるわけでもなく、ただひたすら美しい旋律に乗せた登場人物たちの議論が続いていきます。この六重奏曲はむしろ、最終場での未亡人の情熱的な独白を暗示したものなのかもしれません。
なお、この六重奏曲ですが、オペラの導入部として演奏される場合には途中から人の声が入るため、室内楽曲として終りまで楽しむのであれば独立して演奏された CD を聴く方がいいかもしれません。しかし、可能ならやはりオペラ版の方の雰囲気も是非一度味わってみていただければと思います。自作や他人の作品からの引用も多いので、探しながら聴くという楽しみ方もできるでしょう。