水の分子式はH2Oで表され,水素原子2個と酸素原子1個から構成されている単純な化合物である。常温では無色,無味,無臭の透明な液体である。日常われわれ接するこの液体は,何の変哲もない物質ととらえがちであるが,一つの化学物質としてみると種々特性を有していることがわかる。

表1 水の物理化学的性質
性     質 温度 H2O
比重   20℃ 0.9982
融点 (℃)   − 0.00
沸点 (℃)    − 100.00
蒸気圧 (mmHg)   17.535
密度の最大なる温度 (℃)   − 4
誘電率 20℃ 82
屈折率 (D線) 20℃ 1.33300
粘度 (c.p.) 20℃ 1.009
融点における融解熱 (kcal/mol)   − 1,435
沸点における蒸発熱 (kcal/mol)   − 9,714
イオン積   25℃ 1×10-14
生成熱 (kcal/mol) 20℃ 68.35
双極子能率 c.g.s.×1018 (気体) 1.84
密度 (g/ml) 沸点 0.958
表面張力 (dyne/cm) 沸点 58.9
NaClの溶解度 (g/100g水) 25℃ 35.9

 水の物理化学的性質を示すと表1のとおりである。表2に示すようによく知られている他の化学物質と比較すると,水は比熱,融解熱,蒸発熱などが大きな値を示しており,熱を吸収する能力が大きいことがわかる。

表2 化学物質の物性(例)
物質 物性
融解熱
(cal/g)
蒸発熱
(cal/g)
比熱
(cal/g℃)
誘電率
25℃
アセトン 23.4 124.5 0.506 20.7
エチルアルコール 24.9 204.0 0.535 23.8
硫酸 24.0 122.1 0.270 100
79.7 539.6 1.007 78.3

 水の分子は図1に示すような形をしており,誘電率が約78と大きく,他の分子やイオンとの相互作用が強く働く特徴がある。これらのことから,水は極性の強い溶媒ともいえ,多くの物質をよく溶解する性質をもつものである。



図2 水の分子構造