センタースタッフによる研究業績一覧(2000年度)

 以下に、スタッフ3名の2000年度の業績を紹介する。第8号に掲載した1999年度の一覧に連続するものである。掲載順は、@発表年月、A「論文名あるいは発表題目」あるいは『書名』、B(種別)、C所収(発行者)あるいは発表会名(会場)の順である。他の者との連名のもののみAの後ろに論文掲載順あるいは発表時掲載順に名前をあげた。


西端幸雄

2000.06

「数理的研究」(特集 1998・1999年における国語学界の展望)(解説)国語学 第51巻2号(通巻202号) 国語学会

2000.12

「萬葉学会創立50周年記念・雑誌『萬葉』復刻版(DVD)の紹介」(万葉情報システム調査会・西端幸雄)(口頭発表)第17回西日本国語国文学データベース研究会(大阪樟蔭女子大学)

2001.03

『名義進行集 影印・翻刻』(著書)法蔵館

田原広史

2000.06

「大阪アクセントにおける二拍名詞W類・X類の統合について -20代から60代までの実態-」(田原広史・村中淑子)(論文)『20世紀フィールド言語学の軌跡 徳川宗賢先生追悼論文集』(変異理論研究会編)

2000.07

「全国方言談話資料のデータベースの作成に向けて」(井上文子・田原広史)(口頭発表)第16回西日本国語国文学データベース研究会(大阪樟蔭女子大学)

2000.12

「「青空文庫」データベース化と研究への利用」(南場尚子・田原広史)(口頭発表)第17回西日本国語国文学データベース研究会(大阪樟蔭女子大学)

2000.12

「pdf版 方言桃太郎データベース」(デモンストレーション)第17回西日本国語国文学データベース研究会(大阪樟蔭女子大学)

2001.03

「人間を対象にした調査や実験の問題点」(荻野綱男・内田伸子・田中ゆかり・田原広史・齋藤孝滋)(ワークショップ)第7回社会言語科学会(國學院大學)

2001.03

「全国方言資料データベースの作成に向けて」(井上文子・田原広史)(論文)『大阪樟蔭女子大学日本語研究センター報告』第9号(大阪樟蔭女子大学日本語研究センター)

2001.03

「「青空文庫」のデータベース化と研究への利用」(田原広史・南場尚子)(論文)『大阪樟蔭女子大学日本語研究センター報告』第9号(大阪樟蔭女子大学日本語研究センター)

2001.03

「[授業報告]基礎演習B」(報告)『大阪樟蔭女子大学日本語研究センター報告』第9号(大阪樟蔭女子大学日本語研究センター)

2001.03

「[授業報告] 樟蔭高校生対象体験講義 話しことばの研究について」(報告)『大阪樟蔭女子大学日本語研究センター報告』第9号(大阪樟蔭女子大学日本語研究センター)

※訂正 第9号にあげた次の業績は誤りでした。削除願います。お詫びして訂正致します。【2000.03「邦画の題名における字種の移り変わり −日本映画データベースを用いて−」(田原広史・渡邊陽子)(論文)『大阪樟蔭女子大学日本語研究センター報告』第8号(大阪樟蔭女子大学日本語研究センター)】

有田節子

2000.09

「『V-テクル』について」(口頭発表)(音声文法研究会)

2001.03

「日本語の移動構文『V−テクル』についての覚書」(論文)『大阪樟蔭女子大学論集』第38号(大阪樟蔭女子大学)

2001.03

「条件文研究の最近の動向」(論文)『大阪樟蔭女子大学日本語研究センター報告』9号(大阪樟蔭女子大学日本語研究センター)


特別研究助成費研究概要報告(2000年度)

 特別研究助成費とは、大阪樟蔭女子大学が研究費補助の一環としておこなっている制度である。申請額は、上限30万円、下限5万円で、予算総額は600万円、助成対象は助手以上の選任教員である。研究目的には、(1)海外研修規程の「2号研修」「3号研修」(短期海外研修)を希望するもの、(2)特別の研究のため、定額研究費では不足するもの、の二つがある。申請は毎年5月におこない、交付を受けた者は本学紀要である『大阪樟蔭女子大学論集』の特別研究助成費研究概要に報告を載せる義務がある。以下に、センターのスタッフの研究概要(上記論集に掲載したもの)を転載する。


「新撰字鏡」のデータベース化

西端幸雄

 平安時代に作られた、現存最古の漢和辞典「天治本新撰字鏡」の総合索引を作成することを目的に、その見出し漢字と注文中に記されている和訓のデータベース化を行っている。計画では、平成11年度から平成13年度までの3ヶ年を予定している。
 「天治本新撰字鏡」には、見出し漢字として、約21,000字、和訓としては、約3,700語が掲載されている。これまで、後者の和訓については、索引が刊行されているが、見出し漢字については、データベース化も索引としての刊行も行われていない。そうした「天治本新撰字鏡」を取り巻く資料整備の遅れが、その研究を遅滞させていると言えよう。その意味で、今回のこの作業は、意義あるものと思われる。
 平成12年度の作業としては、まず、既に10年がかりで作成した見出し漢字索引・和訓索引の手書き原稿の見直しを行った。その後、特に見出し漢字データベースの体裁を検討するために、データベースソフト「ファイルメーカープロ」上で索引原稿の先頭から500字を対象にデータベースを試作した。
 来年度以降は、本格的なデータベース化と、「天治本新撰字鏡」の抄録本「群書類従本」と「享和本」のデータベース化も行うことにより、文字通り「新撰字鏡」の総合データベース・索引を作成していきたい。(交付金額254,700円)


近畿中央部地域におけるアクセントの世代差に関する研究

田原広史

 1997年度から共同研究としておこなっている、「近畿中央部地域におけるアクセントの世代差に関する研究」を継続して進めた。2000年度の成果は以下の三つである。
 一つ目は、1998年3月に東大阪市において調査をおこない、1998年10月に国語学会で発表し、1999年3月に報告書としてまとめた調査研究について、2000年6月に「大阪アクセントにおける二拍名詞W類・X類の統合について−20代から60代までの実態−」と題して『徳川宗賢先生追悼論文集 20世紀フィールド言語学の軌跡』(変異理論研究会編)に発表したこと。二つ目は、この現象の地域差について検証するため、2000年9月に奈良市内の生え抜き50名に対して、東大阪市と同様の調査を実施したこと。三つ目は、1999年9月に東大阪市において実施した追加調査の整理・分析をおこない、報告書を刊行する手前までの段階にまで進めたことである。
 来年度については、1998,1999年の調査結果をあわせた報告書を刊行し、分析を進めた上で、上記論文をさらに発展させた論文を完成させる予定である。(交付金額254,700円)


現代日本語の対話に見られる対比性および漸次性の表現と文法化について

有田節子

 現在主に研究対象としているのは、現代日本語のテ形複合動詞の類である。なかでも、「〜ていく/てくる」という移動動詞が補助動詞として用いられた表現に関心がある。最近の傾向として、部分・変化の表現が多用されるという現象(「こちらがお手洗いになります/になっています」)が指摘されるが、「〜てくる」もそのような場面で多用される。(「このあたりの商品が売れ筋になってはきています」)このような移動動詞の用法を解明するために、「〜てくる」の持つさまざまな用法の記述的研究を整理し、その問題点を指摘し、分析の方向性を示したものが、本学紀要に掲載された論文である。
 現在は、「ていく」表現も含め、移動の複合動詞構文の多様な用法を生成語彙論(Generative Lexicon)の枠組みを用いて、理論的分析を行っているところである。従来から問題になっている、前項動詞と後項動詞の結びつきの可能性、補助動詞と本動詞の関係に加え、本研究の中心的課題である対比性・漸次性についての問題が、解明されつつある。
 以上の研究は、筆者がこれまで研究してきた条件文の研究への適用の可能性がある。その点についても、今後研究を進めていくつもりである。(交付金額254,700円)


センター関連の科学研究費補助金等の課題と内容 (2000年度)

 

国語学論文所収語彙データベース(Japanese Linguistics Lexical Database)

委 員 長 :西端幸雄・大阪樟蔭女子大学・学芸学部・教授(国語学)
種   別:文部省科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(データベース)
年  次 :1997,1998,1999,2000年度(5年計画の4年目)
申請番号:1997年度55、1998年度65、1999年度501026、2000年度128031
組 織 名 :JALDA作成委員会
副委員長 :江川 清・国立国語研究所・情報資料研究部・部長(国語学)
委  員  :ダニエル・ロング・東京都立大学・人文学部・助教授(国語学)
   伊藤鉄也・国文学研究資料館・助教授(国文学)
交付金額:1997年度6,190,000円、1998年度6,800,000円、1999年度6,120,000円
   2000年度5,600,000円
研究概要:本データベースは、『日本語学論説資料』(旧称 国語学論説資料・論説資料保存会編:1963年〜1993年・31巻延べ133分冊、1996年10月現在、以下同じ)や雑誌『国語学』(186冊)『訓点語と訓点資料』(98冊)『日本語学』(174冊)などに所収の論文内において論述されている語句(単に用例として掲出している語、また語彙索引、用例集や英文論文などは除外:以下、論述語句と略す)をデータベース化し、その検索の便を図り、主として国語学・日本語学における語彙研究に資するものである。試作段階での1分冊あたりの所収論述語句は、5,000語ほどであることから、他の雑誌論文も加えると最終的には、延べ約900,000語を越える論述語句のデータベースとなる。
 


全国方言談話資料データベース(Database of Discourse in Japanese Dialect)

委 員 長:佐藤亮一・東京女子大学・現代文化学部・教授(社会言語学)
種  別 :文部省科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(データベース)
年  次 :1997,1998,1999,2000年度(5年計画の4年目)
組 織 名:DDJD作成委員会
副委員長:江川 清・国立国語研究所・情報資料研究部・部長(社会言語学)
委  員 :井上文子・国立国語研究所・情報資料研究部・主任研究官(社会言語学・方言学)
  田原広史・大阪樟蔭女子大学・学芸学部・助教授(言語情報処理)
交付金額:1997年度1,800,000円、1998年度1,800,000円、1999年度1,800,000円
   2000年度2,400,000円
研究概要:本データベースは、日本全国の47都道府県について各5地点ずつ、合計235地点における、約2000人の話者の、のべ4000時間にも及ぶ方言談話の音声・文字化データベースである。伝統的方言を残している、1977〜1985年当時の高年層話者同士の自然談話を中心に、高年層と若年層の対話、同性間・異性間の会話、場面設定による挨拶など、話者の年齢・性・社会的地位を考慮した、さまざまな組み合わせによる談話で構成する。また、民話などの独話も採録している。談話データは、方言音声とその文字化(カタカナ表記)、標準語訳(漢字かなまじり表記)から成る。さらに、調査の概要と、収録した談話内容、地点、話者についての情報なども付加する。