センタースタッフによる研究業績一覧(1996年度)


センターが事務局となっている研究会

西日本国語国文学データベース研究会(DB-West)(西端、田原、ロング)
 年2回(6月と12月の第1日曜日)研究発表会をおこなっている。97年6月に第10回を開催予定。

あらたまの会(西端)
 曽禰好忠集所収の和歌を毎月1回(第2あるいは第4土曜日)、1人10首担当し、輪読している。

近畿音声言語研究会(田原)
 年3回の研究発表会と月例会をおこなっている。研究発表会会場は、世話人の大学の持ち回りでおこなっている。
96年度の発表会は、4/20に大阪外国語大学、10/5に京都教育大学、1/25に大阪樟蔭女子大学で開催された。
97年5月に第39回を聖和大学で開催予定。月例会は当センターで第1土曜日に開いており、4/6,6/1,7/6,8/3,9/7,11/2,3/1に開かれた。

変異理論研究会(ロング)
センター内の演習室で月例会をおこなっており、現在66回を数えている。
今年度は、4/27,6/22,9/28,11/30,2/22,3/22にセンターで開催された。
また、夏には長野県高遠町で2泊3日の合宿をおこなった。


センタースタッフによる研究一覧


西端幸雄

1997.03『土井本「太平記」本文及び語彙索引』(著書)
    勉誠社・平成8年度研究成果公開促進費による出版
1997.03『平安朝和歌の語彙論的研究』(報告書)基盤研究成果報告書


田原広史 1996.06「河内方言調査について」(著書)     『フィールドワークを歩く -文科系研究者の知識と経験 』p.249-257     (共著)嵯峨野書院 1996.06「データベースの作成と利用に関する試み−方言音声データベース     JCMDを例として−」(口頭発表)     『第8回 西日本国語国文学データベース研究会』(於 大阪樟蔭女子大学) 1996.09「方言音声データベースの作成と利用に関する研究」(ポスター発表)     『重点領域研究「人文コン」青森シンポジウムポスターセッション』     (於 青森公立大学) 1996.12「ハイパーカードを用いた音声データベース検索」(口頭発表)     田原広史・中村一夫『第9回 西日本国語国文学データベース研究会』     (於 大阪樟蔭女子大学) 1996.12「主要都市調査」(解説)     『人文学と情報処理 特集音声データベースNo.12』p.62-62 勉誠社 1997.01「近畿中央部における専門家アクセントの実態」(口頭発表)     『第38回 音声言語研究会』(於 大阪樟蔭女子大学) 1997.03「関西における卓立下降調について」(口頭発表)     『近畿音声言語研究会月例会』(於 大阪樟蔭女子大学) 1997.03「方言データベースの作成と利用に関する研究」(報告書)     田原広史・江川清・杉藤美代子・板橋秀一・中村一夫     『重点領域研究「人文コン」平成8年度研究成果報告書』 1997.03「日本語方言音声データベースの作成と検索システムの開発」(口頭発表)     田原広史・中村一夫『言語処理学会第3回年次大会』
ダニエル・ロング 1996.04「日本語方言との比較から見たアメリカ方言の現在」(論文)     『方言の現在』130-144(明治書院) 1996.05「外国人における緊急時報道の理解について」(論文)     『月刊言語 5月号』98-104(大修館) 1996.06「応用社会言語学の試み ―緊急時報道と非母語話者の言語問題―」     (口頭発表)『日本研究所国際学術発表会』12-17     (於 Chungang University) 1996.07「The Perception of "Standard" as the Speech Variety of a Specific     Region: Computer-Produced Composite Maps of Perceptual Dialect Regions」     (口頭発表)『Methods IX』(於 University of Wales, Bangor) 1996.08「Perceptions of Regional Variation in Japanese」(口頭発表)     『AILA 96(11th World Congress of Applied Linguistics)』     (於 University of Jyvaskyla) 1996.09「世界の方言研究の最前線 ―Methods IX(第9回方言学方法論研究会)     の報告―」(口頭発表)『第63回 変異理論研究会』(於 大阪大学) 1996.09「方言認知地図にみられる話者のアイデンティティ ―日本とアメリカの     場合―」(論文)『国立民族博物館共同研究会』(於 国立民族博物館) 1996.09「「感じのいいことば」の領域 ―8地方の方言認知地図を比較して」     (口頭発表)『大阪大学日本学科言語系同窓会』(於 大阪大学) 1996.11「Quasi-standard as a Linguistic Concept」(論文)     『American Speech 71』118-135(American Dialect Society) 1996.12「「方言認知地図」プログラムと統計処理地図」(口頭発表)     『第2回公開シンポジウム人文科学とデータベース 「データ」を読む・     観る・解く(於 大阪電気通信大学)』67-78 1997.03「「方言認知地図」の計量的処理と分析のためのプログラム開発」(報告書)     『重点領域研究「人文コン」平成8年度研究成果報告書』

センター関連の科学研究費の内容

種 別  文部省科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(データベース)
申請番号 53
研究課題 和歌語彙データベース
組織名  和歌語彙データベース作成委員会
委員長  西端幸雄 大阪樟蔭女子大学・学芸学部・教授(国語学)
副委員長 伊藤雅光 国立国語研究所・情報資料研究部・主任研究員(国語学)
委 員  小川栄一 福井大学・教育学部・助教授(国語学)
     湯浅茂雄 ノートルダム清心女子大学・助教授(国語学)
     吉田茂晃 天理大学・文学部・助教授(国語学)
     安田純生 大阪樟蔭女子大学・学芸学部・教授(国文学)
交付金額 2,600,000円
 平成4年度から5ヶ年計画で、奈良時代から室町時代に至る、勅撰集・私撰集・私家集・歌合・物語等に所収の和歌の語彙データベース化を行ってきた。平成7年度までに、作成できた和歌語彙データベースは、平安時代から室町時代初期までの和歌集(計351作品・150000首・約1860000語)になる。本年度は、平安時代〜室町時代の物語作品所収の和歌と私家集(計125作品・55000首・800000語)を対象としてデータベース化をおこなっている。なお、本データベースは、本年度中には、和歌数約200,000首、総語彙数(データ数)約2,660,000語を収容することとなり、語彙データベースとしては、わが国に類例のない、幅広い分野と時代を網羅した大規模データベースとなる。


種 別  文部省科学研究費補助金基盤研究B(2年計画の2年目)
課題番号 07451091
研究課題 平安朝和歌の語彙論的研究
代表者  西端幸雄 大阪樟蔭女子大学・学芸学部・教授(国語学)
分担者  西木忠一 大阪樟蔭女子大学・学芸学部・教授(平安文学)
安田純生 大阪樟蔭女子大学・学芸学部・教授(和歌文学)
交付金額 1,000,000円
 本研究では、平安和歌語彙をデータベース化したもの(約400作品・約7万首・約49万語)に対して各種分類コードの付加して、下記の観点から分析を行った。共時的な視点からの研究としては、@作品の各分野<勅撰集・私家集・歌合等>における、和歌語彙の特色を明らかにする(西端・安田)。Aこれまでの和歌文学の面からの研究成果を援用することにより、作品の分野毎の和歌語彙の特色が何によってもたらせれるものなのかを明らかにする(西端・安田)。B各分野の和歌集が散文作品の影響を受けているかどうかを明らかにする(西端・西木)。以上の3点がある。通時的な視点からの研究としては、@作品の成立時期に注目し、平安時代<前期・中期・後期>の各時期における、和歌語彙の特色を明らかにする(西端・安田)。A平安時代400年間の中での和歌語彙の転換点を明らかにするとともに、その変遷が、各時期の歌壇の動向とどのように関わっているのかを明らかにする(西端・安田)。B各時期の和歌集が同時期の散文作品の影響を受けたり、影響を与えたりしているかどうかを明らかにする。特に、歌物語や『源氏物語』成立以前と以後とでの違いには注目したい(西端・西木)。以上の3点がある。本研究では、和歌語彙をデータベース化したもの(約400作品・約7万首・約49万語)に対して各種分類コードの付加作業を行ったが、予想以上に作業に手間取ったため、当初計画で、平成7年度に予定していた平安時代の和歌語彙の共時的な面での特色を明らかにするという点の内、次の2点について十分に解明できていない。すなわち、@これまでの和歌文学の面からの研究成果を援用することにより、作品の分野毎の和歌語彙の特色が何によってもたらせれるものなのかを明らかにすること、A各分野の和歌集が散文作品の影響を受けているかどうかを明らかにすること、以上の2点である。


種 別  文部省科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(データベース)
申請番号 63
研究課題 日本主要都市方言音声データベース(JCMD)
組織名  JCMD作成委員会
委員長  田原広史 大阪樟蔭女子大学・学芸学部・助教授(言語情報処理)
副委員長 江川 清 国立国語研究所・情報資料研究部長(社会言語学)
委 員  杉藤美代子 大阪樟蔭女子大学・名誉教授(音声学)
     板橋秀一 筑波大学・電子情報工学系・教授(情報工学)
     西端幸雄 大阪樟蔭女子大学・学芸学部・教授(国語学)
交付金額 2,590,000円
 本データベースは、日本全国13主要都市における方言を対象とした、音声情報データベースである。1都市あたり5世代、男女各2名、計20名の音声を収録する。まず、ディジタルオーディオテープ(DAT)に収録された音声を取捨選択し、編集をおこなった後に、比較的長い文章はCDとして、短文、単語などの短いデータは、パーソナルコンピュータで検索、分析ができるようにCD-ROMとしてデータベース化していく。音声編集にあたっては、DATからディジタル信号のままパーソナルコンピュータに取り込み、音声を評価し、雑音を除去しながら個々の音声にばらし、それぞれを1ファイルとして光ディスクに書き込んでいく作業が中心となる。できあがった音声ファイルを分類し、検索用データ、検索用プログラムを加えた後、CD-ROMに焼き付け、データベース化する。


種 別  文部省科学研究費補助金重点領域研究
課題番号 08207114 
研究課題 方言音声データベースの作成と利用に関する研究 
代表者  田原広史 大阪樟蔭女子大学・学芸学部・助教授(言語情報処理) 
分担者  江川 清 国立国語研究所・情報資料研究部長(社会言語学) 
     杉藤美代子 大阪樟蔭女子大学・名誉教授(音声学) 
     板橋秀一 筑波大学・電子情報工学系・教授(情報工学)
交付金額 1,300,000円
 この研究は、重点領域研究「日本語音声」(平成元年〜4年度)中に収集された「主要都市調査データ」(13都市、約1000名分)をデータベース化し、より効率的な利用、流通を目指すといった、総合的なデータベース研究である。本年度おこなった研究は、次の4つに大きく分けることができる。
@検索用文字データの入力、整理、データベース化(田原)。検索用文字データには、「発声内容に関するデータ」と「発声者に関するデータ」の二つがある。音声データを検索するためにはこれらの情報がすべて電子化され、かつデータベース化されていなければならない。実際の音声と連動させ検索するためにはデータの整備、改良、試行錯誤が必要である。音声と連動させて効率よく検索をするための研究をおこなった。
A音声データの編集、評価、CD、CD−ROM化(杉藤、板橋)。データベース化する項目の検討、個別の音声の評価、CD−ROM内におけるファイル構造の検討などについて研究をおこなった。
B検索用ツールの開発(田原)。検索のためのツール開発を集中的におこなっていく。WINDOWS及びマックOS上で使用できるようなツール開発をおこなうことが目標である。今年度は、マッキントッシュ用ハイパーカードを用いた検索ツールのおおまかな部分が完成し、実用できる段階に到達した。
C流通化に関する調査研究(江川)。データベース科研により作成したCDをモニター(データベースを使用、評価してくれる人)に配布し、利用方法、利用状況など流通化に関する調査研究をおこなう。引き続きモニター利用による調査研究を継続中であり、約150名のモニターに対するデータベースの配布と評価のアンケート実施をおこなった。その他に、雑誌「人文学と情報処理 第12号 特集音声データベース」で、本研究の概要について述べた。


種 別  文部省科学研究費補助金重点領域研究
課題番号 08207226
研究課題 「方言認知地図」の計量的処理と分析のためのプログラム開発
代表者  ダニエル・ロング
交付金額 1,500,000円
 「方言認知地図」とは、様々な言語変種の使用領域に対する多くの一般人の認識を数量化し、集計した結果を、その方言使用領域の意識として地図上に表示したものである。目標にしていた研究課題を全て達成できたが、それは以下の通りである。
(1)処理可能な属性項目や、言語変種の関係項目を増大することによって、例えば、インフォーマントが「大阪弁」だけではなく、「最も感じのいいことば」や「アクセントが特徴的」と意識されている領域の地図などを作成するのが可能となった。
(2)これまで処理したのは、日本全国版地図と近畿圏地図の2つだけであったが、白地図を自由に入力し、集計できる汎用プログラムを新たに開発した。
(3)認知の度合いを表すカラー表示以外にも、白黒の模様が出るように改良した。
(4)これまでの複数の個別プログラムを、一つのプログラムに統合した。
(5)最大な課題だったのは、これまでのDOS-Basicのプログラムをウィンドウズ対応のビジュアル・ベーシックに作り直すことだったが、PDQ v.1 (Perceptual Dialect Quantifier)を開発し、現在は、韓国の方言認知地図のデータを分析中である。
 これ以外にも、これまでのパーセント表示の地図に加えて、統計処理の結果を地図で現わす方法を考えた。それは、2つの地図を比較する時に、パーセントとの間の有意差を抽出する(a)プロポーション検定の地図、または、複数の地図を扱うときに利用する(b)平均値地図、(c)偏差値地図、(d)標準偏差地図、である。
このプログラムは、方言の使用領域に対する認知を追究するために開発されたものだが、言語に対する認知領域だけではなく、あらゆる社会心理的現象と関係する認知領域を研究する上で役立つと思われる。