JCMD報告書(9)


 「主要都市調査」とは、Aの「日本語音声」の中でおこなわれた調査の一つである。この調査資料は、「日本語音声」期間中はDATのダビング複製といった、データの保全をはかるにとどまり、生の録音資料のままで、手つかずの状態であったが、「日本語音声」終了後、別の科学研究費の交付を受け、現在データベースの形にまとめているところである。以下では、この資料の概要と現状について簡単に紹介する。

 1.どのような資料なのか?

 「主要都市調査」は、全国13主要都市、すなわち札幌、弘前、仙台、新潟、名古屋、東京、富山、大阪、高知、広島、福岡、鹿児島、那覇においておこなわれた方言発話収録調査である。1都市につき、老年(60歳以上)、壮年(40〜59歳)、若年(20〜39歳)、中学2年生、小学5年生の5世代を収録対象とした。調査規模ついては、それぞれの世代から、老年、壮年、若年については、男女5人ずつ、中学生、小学生については男女10人ずつを調査した。よって、1地点あたりの人数は70人となるが、実際は、予備の人も含め、1地点平均90人程度が調査されている。
 調査項目については、具体的な調査項目は地点によってかなり異なるが、主な調査項目としては、単語(名詞、動詞、形容詞)を発話したものがあげられる。単語については、単独で発話したものから、助詞をつけた形、短文に入れたものが調査されている。単語アクセントを念頭においた調査であることから、このような形になっている。
 これに加えて、各方言独自のイントネーションを収録したもの、外国人に対する日本語教育という観点から設定された、簡単な問いと答えを演じてもらうもの、「天気予報」(ニュース)「桃太郎」(昔話)「霧」(短いエッセイ)を朗読したもの、五十音、数字を読みあげたものなどが含まれる。
 調査項目の規模は、1人につき400〜900項目程度(地点によって異なる)で、平均すると、約640項目になる。1人あたりの調査実時間は30分〜1時間程度である。

 2.今どのような状態にあるのか?

 「日本語音声」終了後、新たに「日本主要都市方言音声データベース Japanese Speech Corpora of Major City Dialects(JCMD)」(平成5〜9年度<予定>、代表筆者)という題目で、文部省科学研究費の出版助成を受け、現在、音声データを、パソコンを用いて単語ごとにばらばらにし、それぞれをパソコン形式のファイル(WAV形式)に編集している最中である。文章項目については、すでに、「天気予報T〜X」という10地点分を収録した5枚のCDとして出版した。文章項目以外については、今年度以降、順次CD−ROM化を予定している。
 また、現在、重点領域研究「人文科学とコンピュータ」の公募班として「方言音声データベースの作成と利用に関する研究」(平成7〜9年度<予定>、代表筆者)と題し、データ作成、検索プログラムの開発、モニター利用による流通化のルール作り等の研究をおこなっている。
 詳細は、http://www.age.ne.jp/x/oswcjlrc/index.htmをご覧いただくか、あるいは筆者まで問い合わせいただきたい。