÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷            ハ ー ト ウ ェ ー ブ ÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷ 花号 98.05.17 ÷÷÷÷ φ本日のメニューφ  1.白銀(シルバー)  2.ひとりじゃない  3.もうすぐ夏 ☆愛する読者のみなさま方、こんにちは。花山ゆりえです。  ゴールデンウィークもあっと言う間に過ぎてしまいましたが、みなさまいか がお過ごしでしょうか?   爽やかな初夏の陽気と共に、今日もささやかなお話をお届けいたします。 @白銀(シルバー)@    朝起きた時から、彼女は今日やることを決めていた。  大切にしてきた、シルバーのアクセサリーの手入れ。  ゴールドの柔らかな輝きと違って、シルバーの輝きはどこかクールで冷めた 感じがする。彼女はシルバーのそこが気に入っていた。  彼女はクローゼットの上に作られている棚から、小さなジュエリーボックス を降ろすと、それを傍らのデスクの上に置いた。  静かに、蓋を開ける。中には指輪やブレスレット、アンクレットなどのアク セサーがきちんと並べられていた。小さな石のはめ込まれているものもあれば、 凝った細工のほどこされているもの、シンプルな造りのものと様々である。  彼女がシルバーのアクセサリーを最初に手に入れたのは、十九歳のバースデ ーの時だった。その時付き合っていた相手が、バースデープレゼントとしてシ ルバーの指輪を贈ってくれたのだ。  その時、その恋人に言われた言葉が、彼女がシルバーに思い入れを持つきっ かけとなった。  「十代のうちにシルバーのアクセサリーを貰うと、幸せになれるんだよ」  その言葉を聞いた彼女には、シルバーというこの単なる金属の一種に過ぎな い物質が、幸せへのステップのように思えたのだった。  その恋人からは、結局バースデープレゼントは一度しかもらえなかったけれ ど、それ以来彼女は、プレゼントに何が欲しいと聞かれれば、必ずシルバーの アクセサリーと答えるようになった。自分でも気に入ったアクセサリーがあれ ば買ったりしたが、自然とシルバーにしか目がいかないようになっていた。  初めてシルバーを手にしたときからもう何年も経ち、彼女も十代の夢みる少 女ではなくなった。友達は高級なロレックスやエルメスの時計を持ち、ダイヤ やエメラルドのあしらわれた豪華な指輪を身につけている。そういう装飾品か ら比べると彼女のシルバーのコレクションは、随分色褪せて見えるのだが、彼 女はいっこうに気にせず、コレクションが白銀特有の黒ずみを見せてくると、 丁寧に手入れをしては身につけ続けている。  「シルバーじゃなくてプラチナにすればいいじゃない?」と、同僚に言われ たことがあった。同じ銀色をした金属。けれど、シルバーのように簡単にくす んだり傷ついたり、汚れたりもしない、それがプラチナだった。その同僚には、 単に金色ではなく銀色のアクセサリーが好きな人間だと思われたのだろう。  シルバーは、手入れが大変な割には高級感が出ない、と、その同僚は言った。 けれど、彼女にとってはそんなことはどうでも良かった。  彼女が好きなのは、シルバーだった。指輪の小さな隙間にこびりついた汚れ を落とそうと必死になって手入れをする度に、彼女にはその小さな指輪に込め られた自分の過去が思い出される。彼女にとって大切なのは、むしろ、愛した シルバーのアクセサリーを手に入れた時の思い出をその度にひらけること。自 分が頑張ってきた時間を、時々そうして思い出すことなのだろう。  開いたジュエリーボックスの中のアクセサリーを、一つ一つ取り出しては、 汚れ具合をチェックして、デスクの上に並べていく。今日は一日かかりそうだ な、と思いながらも、彼女は、苦みや甘みが入り混じった思い出を開くことへ の期待に、ほんの少しわくわくしながら、静かな微笑をたたえていた。 @ひとりじゃない@  これ、KinKi Kidsの歌の名前なんですけど(笑)もちろん、それとは関係あ りません。余計な前置きしてごめんなさい(笑)  最近、人間って一人で頑張って突っ張ってるつもりでも、一人じゃないんだ なあ、と実感しています。たとえば、仕事してる時、一人でがんがん電話して 相手と話つけて進めてる時なんかでも、本当に一人でやってるわけじゃない。 たとえば、一人で小説書いてる時、一人でいろんなこと考えて、煮詰まりなが ら、ぶつぶつ言いながらワープロに向かっている時でも、本当に一人なわけじ ゃない。そんなことを、最近は実感しています。  その時は一人でも、本当に一人で何もかもやってるわけじゃないんですよね。 誰かが自分のことを心配してくれていたり、考えていてくれたり、している。 そういうのがあるから、みんな一人の時を頑張れるんじゃないかなぁ。  一人っきりで頑張っている時でも、きっと大丈夫って思うんです。話を聞い てくれる人がいるから、怒ってくれる人がいるから、慰めてくれる人がいるか ら。そういう人が一人でもいる限り、頑張れる。そんな風に今は思っています。 そう思うと、ふっと肩から力が抜けたりしてね。気分が楽になります。  嫌な人もたくさんいるし、好きな人とばかり付き合っていくというわけにも いかないから、もちろん、嫌な思いも悲しい思いもするけれど、でも、自分に は味方がたくさんいるから、と思うと早く立ち直れたりします。単純なのかな?  でも、今はこんな自分を幸せだなぁ、なんて思っている毎日です。 @もうすぐ夏@  一年で一番好きな季節なんです。春から、夏にかけてのこの時季。あたたか くなってくると、動こうって気持ちになれるし、じっとしているのがもったい ないように思えてくる。冬の間は、寒いからって結構縮こまって家からでなか ったりすることが多いんですが、この時季になるとまるで別人のように、表に 出たがるようになってくるんです。何か、虫とか鳥とか動物とかと一緒なんで すよねぇ(笑)反応が単純というか。  冬の冷たいどんよりした空を見ても、なかなか気分は明るくならないものな んですが、この季節になると、天気が良いだけでもう元気いっぱいです。早起 きして洗濯して、お布団干して、お掃除して、それでも時間が余ったら... 好きなこと、たくさん出来るぞ!みたいな感じです。  ちょっと嫌なことがあっても、頑張れるようになってくる。物事も、良い方 向に考えられるようになったりして...本当に、単純だなあ、と思うけれど、 この単純さに助けられてるような気もしています。  さあ、いろんなことを頑張ろう!  ☆一ヶ月ぶりの花号ですが、いかがでしたでしょうか?  今日は、前回のハニー号でご披露した課題「何気ない休日」のリトライ版の ようなお話を書いてみました。まだまだ勉強不足の私ですが、これからも頑張 って行こうと思っていますので、末永くよろしくお願いいたします。  次は27日、上代桃世の「桃号」をお届けいたします☆ --------------------------------------------------------------------                       ものかきのひと、集えっ! ** 文芸広報 ** http://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/maga.html 本メールマガジンは、情報の山の中に埋もれた創作文芸物を発掘し、読むこ とを楽しみたい人々への指針となることを目的とする、オンライン創作文芸 の宣伝告知サービスです。刊行ペースは週刊、毎週金曜日発行。 -------------------------------------------------------------------- ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆発    行  ハートランド ☆本日の担当者  花山ゆりえ(yn6y-iruc@asahi-net.or.jp) ☆このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して  発行しています。( http://www.mag2.com/ ) ☆バックナンバーはhttp://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/HW/ でご覧いただけま  す。掲示板もありますので、ふるってご参加ください。よろしくね。  メールでのおとりよせもできますのでお気軽にどうぞ。 ☆みなさまからのご感想、リクエストなどを心から、お待ちしています♪ ☆お 願 い  掲載された内容を許可なく、転載しないでください ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞