ハートウェーブは、ハートランドがお届けする読み物メールマガジンです ÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷            ハ ー ト ウ ェ ー ブ ÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷ 花号 98.07.17 ÷÷÷÷ ☆こんにちは。花山ゆりえです。  夏とは思えないような涼しい日が続いていますが、皆様、季節外れの風邪な どひいていらっしゃいませんか?  お祭り騒ぎのワールドカップも終わり、花山は胸にぽっかり穴が空いてます。 この寂しさをどうしたら良いんだ〜!ということで、このハートウェーブに今 日は(今日も!)全力投球したいと思いますので、よろしくどうぞ。 φ本日のメニューφ  1.夏の音  2.今世紀最後の/その2  3.宿題 @夏の音@  抜けるような青空が広がっていた。真夏の太陽のぎらぎらした日差しが、ま るで睨み付けるように降り注いでいる。どこまでもまっすぐ続く道路の上では、 その向こうに広がる景色がゆらゆらと揺らめいている。  その中で、リュウは懸命に自転車をこいでいた。  四車線の広い道路には、他に誰もいない。車の影もなく、歩いている人もい ない。そこにはただ、自転車をこぎ続けるリュウだけがいた。  からからと回る自転車のチェーンの音が、やけに大きく聞こえる。そこに時 折飛び込んでくる、舗装の痛んだ道路を擦るかすかなタイヤの音以外は、他に 何も聞こえない。この暑さの中では、鳥や虫さえもが息を潜めて、じっとして いるのだろうか。  リュウがこの島に来るのは、これで三度目になる。一度目は友達に連れられ て来たのだが、それからは、自分で来ている。  来るのは、決まってこの時季。梅雨が上がって夏が始まるこの時季だ。  自転車をこぎ続けるリュウの息が、段々とあがってくる。それに連れて、ペ ダルをこぐスピードも上がっていく。  リュウは少し苦しそうに、唇の端をゆがめた。それでも、ペダルをこぐ足の 力強さは変わらない。  道ゆく人がいたなら、何をそんなに急ぐのかと首を傾げただろう、そんな急 ぎ方だった。  やがて広かった四車線の道が一気に狭まった。  前方に、小さな木の看板が見えてくる。リュウは少しスピードを落とすと、 すっかり古びて、今はもう何が書いてあるのもわからないその看板の手前で、 右へ曲がった。  落ちたスピードを取り戻すために、リュウはサドルの上で立ち上がる。ペダ ルを踏む足にぐっと力をこめると、あっと言う間にスピードを上げたリュウの 自転車は、そのまま一気に駆け抜け、しばらく走って止まった。  道はそこで終わっていた。  自転車を飛び降りたリュウは、大きく息を吐き出すと、目の前の光景をゆっ くりと眺めた。静かに流れる風が少しずつ強さを増しながら、一面に広がる緑 色の植物を揺らし、大きな緑色の波をうねらせている。  そこは、一面に広がるサトウキビ畑だった。  リュウはもう一度大きく息を吐き出すと、そっと目を閉じた。額から頬を伝 った汗がだらだらと流れ落ちているのも気にとめず、リュウは黙って目を閉じ たまま、そこに立っていた。  風が音を立てて、サトウキビの葉をこすって通りすぎていく。時折強くなる 風がばたばたと葉を揺らすけれど、すぐに風はまたおさまって、元の静かな音 が、戻ってくる。  耳に心地良く、不思議なほど懐かしい音。リュウはじっと耳を傾けながら、 ゆっくりと目を開けた。  目の前に広がっているのは、どこまでも続くサトウキビ畑。リュウは自分の 心からすうっと何かが抜けていくのを感じた。  風はやむことなくさらさらと流れていく。リュウと、サトウキビと、そして、 辺りのすべてのものを、静かに愛おしむように、優しく流れていく。  リュウは満足げに微笑むと、もう一度目を閉じた。今度は、太陽の光を求め るように、少し顔を上げて。  じりじりと焦げつくような日差しを顔いっぱいに受けていると、心の中で自 分の時を刻んでいる時計が、だんだんとその速度を緩めていくのがわかる。  もうしばらく、こうしていよう。緩やかに、静かに流れる風のように、自分 の時計がその歩みをゆったりとしたリズムに変えるまで。  リュウの夏は、始まったばかりだった。 @今世紀最後の/その2@  今世紀最後のサッカーワールドカップ・フランス大会が終わりました。結果 は開催国・フランスの見事な初優勝。まさに絵に描いたようなドラマチックな 結末は、開催国であるフランスの人達をとてつもなくロマンチックな興奮にた たき込んでくれたのではないかと思います。  この間、連日の早朝からのテレビ放映のせいでへろへろになっていたのは、 決して私一人だけではないでしょう。  途中から、フランスは負けないような気がしていました。でも、勝つような 気もしなかった。絶対に勝つぞ!みたいなあからさまな気迫みたいなものが、 彼らからは感じられなかったから、なんですね。でも、いざゲームをすると、 これが実に固くて、強い。おまけに、フランスのサッカー、何とも言えず華や かでありました。  これって、ものすごーくスマートで素敵ですよね。勝つぞ、勝つぞ、勝つぞ ぉ!みたいにがっついた感じがないのに、結果的には勝者になっている。気持 ちに余裕があったのか、それとも、国民の後押しという最大の応援が自信にな っていたのかは私にはわかりませんが、とにもかくにも、フランスにとっての 史上初めての優勝は、地元開催の大会で飾られたわけです。  我が日本は早々に予選で姿を消し、その戦績は3戦3敗。数字だけ見れば、 それはそれは惨めな結果ではありますが、実際にその場に立たなければわから ないことや知り得ないことを、たくさん掴んでくれたのではないか、と思って います。特に、次の大会にも出場すると思われる若手選手は、今回の事がきち んと身になったことを証明する機会が4年後には来てしまうわけですから、た だ行ってきただけじゃない、と思わせるよう、頑張って成長して欲しいです。  次は、日本で開催されるワールドカップ。予選無しで出場する日本ではあり ますが、今回のフランスのように大健闘してくれれば良いなあ、と思います。  以上、4年後は絶対に死んでも見に行くぞ!と今から心に決めている花山ゆ りえより(笑) @宿題@  夏休み、と言えば宿題ですね。でも、社会人になって久しい私にとって、夏 休みの宿題なんて、もう思い出の中にしか存在しないものでした。  でも、貰ったんです。夏休みの宿題。はい、課題です。  前にも一度課題を頂いたことのある稲垣徹さんから、またまた課題を頂きま した。私達の作品を読んでみたいとおっしゃっていただいて、大変嬉しく、光 栄に思っております。  今回の課題は「お引っ越し」です。9月の花号と桃号で、それぞれの課題作 品を発表する予定です。ご期待に添えるような作品にすべく、これから二人で 頑張りたいと思っておりますので、9月の発表をどうぞお楽しみに☆ ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″ ☆今回の花号、お楽しみ頂けたでしょうか? サッカーが本当に好きな私にと  って、前回の花号から今回の花号までの間は、本当に幸せな期間でした。  ワールドカップも終わり、課題も頂き、8月にはパラダイス・ハニー号の発  行も控え、しばらくはお話づくりに没頭、ということになりそうです。頑張  りますので夏の間も「ハートウェーブ」をよろしくお願い致します☆   ☆次回は8月7日にパラダイスハニー号を発行の予定です。  8月は17日の花号はお休みとさせていただきます。  27日の桃号は通常通り発行の予定です。 --------------------------------------------------------------------                       ものかきのひと、集えっ! ** 文芸広報 ** http://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/maga.html 本メールマガジンは、情報の山の中に埋もれた創作文芸物を発掘し、読むこ とを楽しみたい人々への指針となることを目的とする、オンライン創作文芸 の宣伝告知サービスです。刊行ペースは週刊、毎週金曜日発行。 -------------------------------------------------------------------- ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆発    行  ハートランド ☆本日の担当者  花山ゆりえ(yn6y-iruc@asahi-net.or.jp) ☆このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して  発行しています。( http://www.mag2.com/ ) ☆バックナンバーはhttp://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/HW/ でご覧いただけま  す。掲示板もありますので、ふるってご参加ください。よろしくね。  メールでのおとりよせもできますのでお気軽にどうぞ。 ☆みなさまからのご感想、リクエストなどを心から、お待ちしています♪ ☆お願い 掲載された内容を許可なく、転載しないでください ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞