ハートウェーブは、ハートランドがお届けする読み物メールマガジンです ÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷            ハ ー ト ウ ェ ー ブ ÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷ 花号 98.09.17 ÷÷÷÷ ☆こんにちは。花山ゆりえです。  台風がたくさん来てます(笑)その合間に感じる秋らしい爽やかな日々が、 妙に愛しい今日この頃です。  今日は、稲垣徹さまから頂いた課題「引越し」をテーマにお送りいたします。 φ本日のメニューφ  1.バカンスは焦らずに(課題)  2.天使と悪魔  3.愛って言うのは @バカンスは焦らずに@  抱え上げた雑誌の山が、いきなり崩れたかと思うと、派手な音を立てて床に 落ちた。途端、ぼわっと埃が舞い上がる。  もうこれで何度目になるだろうと思いながら、未夏はくすっと笑うと、抱え 上げていた雑誌の山を降ろした。  少し、休憩しよう。  自分で決めたこととは言え、初めはこの場所を去ることを、寂しく思ってい た。  親元を離れての初めての一人暮らしには、辛いこともたくさんあったけれど、 決してそれだけではなかった。一人の寂しさを紛らわそうとあがくうちに、い つの間にか、それまでとは違う時間を過ごすことの楽しさを覚えられたし、一 人になったから気づけたことも、たくさんあった。何より、この生活を始めた ことは、自分の夢を叶える第一歩だった。  学生を卒業し、仕事で認められようと必死になって頑張ってきた今日までの 年月のすべてが、ここから始まったのだから。  女もまともに仕事が出来る時代と言われるようになり、未夏はその追い風を 受けていっぱしのキャリアウーマンになろうと、とにかく頑張ってきた。必死 になって、それこそ歯を食いしばって、男に負けないように、女だからといっ てなめられないようにと、自分に出来ることは全部してきたつもりだ。  自分が望んで決めたはずの、道だった。けれど、ある時未夏はふと、思った のだ。  この道の果てに、何があるのだろうと。ひょっとして、自分の欲しいと思っ ているような結末など、ないのではないか、と。  頑張って、偉くなって、男を顎で使えるようになりたいと、そんなことを望 んでいたのか? それが仕事で成功するということなのか?  もしそうなのだとしたら、それは何だか、とても虚しいことのように思えた。  もっとゆったりと、自分を見つめて上げたい。もっと自分がしたいことが、 あるんじゃないかと、その時思った。  それを見つけるまで、少し自分を甘やかしてみても良いんじゃないだろうか。 分刻みで追いかけてくるスケジュールも、必要以上に迫ってくるプレッシャー もないところで、過ごしてみるのも良いんじゃないだろうか。  一生懸命になりすぎていた。脇目もふらずに、何に向かっているのかも良く わからないまま、がむしゃらに走っていた。今、思い出してみても、どんな風 に時間を使っていたのか、何が自分の生活を満たしていたのか、未夏には良く わからない。そんな生活をこれ以上続けていたら、どんどん自分がすり減って しまうだけだろう。  だから、未夏は仕事を辞めた。そして、この場所を去ることを決めたのだ。  思い切って、都会から離れることに決めたことを、後悔はしていない。これ からは、とにかく時間をゆっくり使おうと、そう決めたから。  忙しい仕事の合間に時折訪れたリゾート地で過ごした、ゆったりとした時間。 そんな風に、これからは時間の流れを感じながら生きていこうと思う。  何も決めてはいないけれど、そんな時間の中に身を置いたら、きっと今まで に見えなかったものも、見えてくるだろう。  長い長いバカンスを過ごすように、これからしばらく生きてみよう。何かを 考えるのは、後回しにしても良い。今までの生活に別れを告げて、新しい一歩 を踏み出す。夏の終わりの風とともに、すべてが変えよう。  ここで過ごした年月を思って寂しさを感じていたのが、今は嘘のように、気 分はもう切り替わっている。今、未夏の心を満たしているのは、新しい生活へ のわくわくするような期待と、そして、未知の世界への、ほんの少しの不安。  けれど、心に決めている。どんなことがあっても、後悔だけはしないように、 自分の思うとおりに生きていこうと。  もう、焦る必要は、ないのだから。 @天使と悪魔@  諦めるのは簡単。さあ、楽になってしまいなさいよ、と私の中の悪魔が囁く。  そうだよなぁ。無理しても仕方ないし。気楽に行こうよ、気楽にさ。そのう ちきっと、良いことあるよ。なるようにしかならないよ。  そんなあきらめムードが色濃く私を支配し始めると、不意に頭の片隅から別 の声が聞こえてくる。  諦めたら最後だよ。捨ててしまうのは簡単。でも、捨ててしまえるほど頑張 ったの? 本当にそれで良いの?  ああ、これは何時も土壇場で私の気持ちをつなぎ止めてくれる天使の声だ。  確かにそうだよね。100%頑張ったとはとても言えない。今、諦めちゃう のはしゃくだしもったいないよ。そうだ。もう少し頑張ろう。  こんなことを、私はずっと繰り返してきているような気がします。人間、つ いつい楽な方向に流れてしまいそうになるんだけど、そして、時にはそういう のも必要なんだけれど、自分が本当にやりたいことに対しては、そんな姿勢で は絶対にいけないの。それはわかってるんだけど...たくさんの言い訳を見 つけては、何となく流してしまうことが、良くあります。  天使の言い分も悪魔の言い分も、それぞれもっともだな、と思う。どっちも 間違っていないような気がする。だったら、決めるのは誰だろう? そう。自 分なんですよね。  今の私は、天使派です。絶対に諦めるもんか。自分が納得できないうちは、 楽な道に逃げたりするもんか。そんな風に思いながら...今日もわずかばか りの才能の切れ端(それもあるかどうかはさだかではありませんが)にすがっ て、文章を書き続けるのでした。 @愛っていうのは@  実はね、愛ってすり減ったりしないの。本物の愛は。大切な想いは、なくな ったりしない。ただ、色が変わったり形が変わったりすることを、愛がなくな ったと勘違いする人が多いだけ。  本当に愛しているもの。あなたは持っていますか?  花山はね、持っていますよ。絶対に捨てたくない!と思う反面、絶対に離れ てはいかないだろうな、という確信があるものがね。ちゃんと、あります。だ から、頑張れるの。ああ、私にとっての本物だなぁ、と感じるだけで、何だか 幸せな気持ちになれるんです。  恋愛だけが、愛じゃない。そんな枠にとらわれない、ただただ愛しいものを、 どうか大切にして下さいね。 ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″ ☆今回の花号、お楽しみ頂けたでしょうか? 久々にいただいた課題「引越し」 には、私なりの思いを込めました。みなさまに少しでも私のハートを感じて頂 ければ嬉しいです。   ☆次回は27日に桃号発行の予定。上代桃世の課題作品をお送りします。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆発    行  ハートランド ☆本日の担当者  花山ゆりえ(yn6y-iruc@asahi-net.or.jp) ☆このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して  発行しています。( http://www.mag2.com/ ) ☆バックナンバーはhttp://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/HW/ でご覧いただけま  す。掲示板もありますので、ふるってご参加ください。よろしくね。  メールでのおとりよせもできますのでお気軽にどうぞ。 ☆みなさまからのご感想、リクエストなどを心から、お待ちしています♪ ☆お願い 掲載された内容を許可なく、転載しないでください ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞