ハートウェーブは、ハートランドがお届けする読み物メールマガジンです ÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷            ハ ー ト ウ ェ ー ブ ÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷ 花号 98.12.17 ÷÷÷÷ ☆こんにちは。花山ゆりえです。  年の瀬を控えたこの時期、花山は見事に風邪をひいてしまいました...頭 がんがんしてます...もともと偏頭痛持ちなので結構頭痛いのは平気という か、慣れてるんですけど、さすがの私もかなり辛い頭痛です...配信も遅れ てしまってごめんなさい、なんですが、今年最後の花号、皆様に少しでも楽し んでいただけることを祈りつつ。 φ本日のメニューφ  1.サテライト・シティー  2.歯が痛い  3.だからこそ、愛しいもの。 @サテライト・シティー@  見上げた夜空にきらめく光の点は、どれ一つとして瞬いてはいなかった。  人々はそれを、別段不思議とも思わずに生きている。肉眼で確認できる恒星 が最後に確認されてから、優に200年は経っているのだから、当然と言えば 当然なのだが。  きらめく光はすべて、地球から打ち上げられた衛星だった。そのどれもに大 勢の地球人が住んでいる。移住者はすでに地球に存在していた人口の9割を越 えており、まもなく全人口の完璧な移住が完了すると言われている。  ジュリアンは、改良が重ねられたスマートな防護服に守られた身一つで、地 表に立っていた。  見渡す限り広がるのは、凍てついた氷に覆われた大地のみ。地球上を覆って いたはずの大気は、今や人間が生きていくに足る十分な酸素を供給できないほ ど薄く、生命の息吹を感じさせるものは何一つ存在していなかった。  静寂に支配された真っ白な大地の延々と続く様には、悲しさや哀れさえも感 じられない。あるのはただ、空虚だった。  そこには、かつては緑に覆われ、様々な生命が満ち満ちていたこともあった 名残など、どこにも見ることは出来なかった。  けれど、ジュリアンはここに立って、この大地を眺めるのが好きだった。  その昔、地球上に異変が起き始めた時になされた大方の科学的な予測を大き く裏切って、地球は温暖化による壊滅ではなく、再び訪れた氷河期によって、 その営みに終止符を打った。全ては凍てついた氷に閉じこめられ、生き残った 人間達は、地下都市へと逃げ込んで、生き延びてきた。  そうして生き延びた人間の末裔が、ジュリアン達だった。  ジュリアンは太陽を知らない。知りたいと思わないでもなかったが、それは かなわぬ夢だ。  太陽周期の軌道を外れ、地球が氷に覆われるようになった原因は、今でも解 明されていない。けれど、ジュリアンはこの時代に生まれたことを、運命とし て受け入れていた。  真っ白な大地と、きらめく星たち。これが、ジュリアンにとっての地球のす べてである。それを確かめようとするかのように、ジュリアンはこうして、地 表へやってくる。そして、衛星たちを眺め、凍てついた大地を踏みしめながら、 自分の星の運命を思う。  ジュリアンにとっての地球は、青く美しい星ではない。白一色に染め上げら れた冷たい氷の星でしかない。それでも、ジュリアンは地球を愛していた。  だから、きらめく星の群に逃げ出すことはしないと、そう誓った。どんなこ とが、あろうとも。  永遠に瞬くことのない星たちが、一人立ちつくすジュリアンと、白い大地を 静かに見おろしていた。 @歯が痛い@  便利な歯だな、と思う。自分では気付かない嫌なことに、必ず気付かせてく れるから。  一番最初は、初めてのデートの前の晩だった。  誘われるまま何となくOKしてしまったデートではあったけれど、まあ、そ んなに感じの悪い人じゃなかったし、まずはリサーチも兼ねてデートしてみる のも悪くないだろう、なんて自分では思っていた。  それなのに。  明日は何を着ていこうかなあと思いながらクローゼットの扉を開けたその時、 突然歯が、痛み出したのだ。きりきりとものすごい勢いで痛み始めたと思った ら、次には歯が浮いたみたいな違和感が口の中いっぱにひろがって、あっと言 う間にほっぺたまで腫れてしまった。  鏡を覗き込んだ私は、次の瞬間には、明くる日のデートを諦めざるを得ない 状況にあることを、自分の無様な顔を見て悟っていた。  あまりの痛さに話をするのも辛かったのだけれど、何とか電話して次の日の デートを断った私は、腫れた方の頬の下にアイスノンを引いて、そのまま眠っ てしまった。良く眠れたものだと思うけれど、なぜか眠りは妨げられなかった。  そして明くる日の朝。  目覚めてみると、痛みはまるで嘘のように消えていた。ほっぺたも腫れてお らず、歯が痛んだのは夢だったのかとそんな風に思えるほど、見事になんの名 残も残っていなかった。  不思議なこともあるものだと思っただけで、その時には特に何も思わなかっ たのだけれど、それからも度々、同じように急に歯が痛んではけろっと治って しまうと言う現象が起こった。  そして、いつしか私は気付いたのだ。歯が痛くなるのは、決まって何かのイ ベントを控えている前の日だということに。  どうやら、自分ではそうと意識していなくてもイヤだと思っていることが、 自分で思うよりもたくさん、あるらしい。そして、それを教えてくれるのが、 この歯だったというわけ。  ありがたいのかお節介なのかわからない歯だけれど、気付いてからは、それ なりにこの痛みも役に立っているし、今のところ、外れもなしにきている。だ から、これはこれで別に良いかな、と近頃では思う。  とはいえ。  今回だけは、ちょっと特別だ。そして、どうかこの歯が痛み始めないように と祈りながら、私は目の前の時計を眺めている。  日付が変わるまで、あと3分。どうか歯が痛み出さないようにと、私は祈っ ている。  明日は、待ちこがれた結婚式なのだから。 @だからこそ、愛しいもの。@  今、この瞬間をつなぎ止めておきたい! と熱烈に思うことはないですか? 私はありますねぇ。ああ、このまま時間が止まっちゃえば良いのに! って思 うとき。そんなにたくさんはないけれど、でも、あります。  本当に心の底からそう思うのだけれど、つなぎ止めておくことが出来ないか らこそ、愛おしくもあり、また切なくもあり....その時間を、本当に大切だと 思えるのかもしれないですね。  同じ時間を生きることは二度と出来ないから....一生懸命頑張ってみよう、 と思うことしきりのこの頃です。もちろん、いつだって全力投球、後悔のない よう頑張り続けられる人なんていないと思う。でも、せめて、自分の愛や情熱 に対して、恥ずかしくないように頑張りたい。ちょっとクサい台詞ですけれど、 そんな風に思います。  世紀末をいよいよ迎える年末に寄せて、思うところでありました。   ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″ ☆今年最後の花号、お楽しみ頂けたでしょうか?  あまりにも頭ががんがんしているので、楽しいことが思い浮かばず、力任せ にショートストーリーを書いてみました。万全の状態じゃないところで書いた ものではありますが、書きたい気持ちはいつも以上にありましたので、皆様に 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。  今年はこの「ハートウェーブ」を通してたくさんのみなさまと出会うことが 出来ました。自分の中にあるいくつものストーリーを、こうして読んで頂けた こと、本当に幸せだと思っています。まだまだ未熟な私ですが、これからも頑 張って踏ん張っていきたいと思いますので、来年からも、どうぞよろしくお願 いいたします。   ☆次回は27日に桃号発行の予定です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆発    行  ハートランド ☆本日の担当者  花山ゆりえ(yn6y-iruc@asahi-net.or.jp) ☆このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して  発行しています。( http://www.mag2.com/ ) ☆バックナンバーはhttp://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/HW/ でご覧いただけま  す。掲示板もありますので、ふるってご参加ください。よろしくね。  メールでのおとりよせもできますのでお気軽にどうぞ。 ☆みなさまからのご感想、リクエストなどを心から、お待ちしています♪ ☆お願い 掲載された内容を許可なく、転載しないでください ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞