″″桃版夢十夜″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″          杜 若  ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″上代桃世″″                  夕宵   さらさらと葉擦れの音が庭をゆく。風が、細くとがった葉をゆするのだ。静  かな庭に、風の戯れかかる音がしみいる。  「よい風だ。なあ、清(さやか)」   そう言って、男はぐいと杯をあおった。空いたところへ、傍らの娘が酒を注  ぐ。満たされた杯を、また、あおる。笑んで娘は、別の徳利をとりあげた。空  の徳利がすでに数本ころがっている。  「ここで花を愛でるのも、もう四度目になるのだなあ」  青紫のしっとりとした花を見つめて男はつぶやく。ため息まじりの言葉を聞  いていたのか否か、娘はしぐさで酒をすすめた。空の杯をさしだしながら、男  は苦く微笑んでいる。   この男、名を葛原保南(くずらはらのやすな)という。   陰陽博士・安倍晴明に破門を申し渡されて以来、太田社そばの庵にひとり、  棲みついている。   太田社は大内裏の北東にあり、杜若の群生で知られる閑暇な社である。いま  は花の盛りのことでもあり、都から一里ほどの道のりを網代車で訪れる者も少  なくはない。とはいえ、鬱蒼とした杜の奥までその賑わいがひろがることはめ  ったになく、保南はふだんと同じ、しずかな日々を過ごしている。  ごくりと保南の喉が鳴る。  その才を、当代きっての陰陽師たる晴明に見いだされながら都を離れ、すで  に四年が過ぎていた。  破門の理由は明らかでない。ともに優れた才をもつため、余人には、うかが  いしれぬ理由があってのことに違いなかった。  「今宵の月は美しかろう」  目を閉じて、からの杯をかるく持ちあげ、保南はいう。風は変わらず葉をゆ  らし、薄くちぎれた雲がゆっくり流されてゆく。  「――呑みすぎたな」  ちいさく言って、保南はごろりと横になった。傍らで、もの問いたげに娘が  首を傾けている。   ごくろう、と保南のくちびるが動いた。透きとおるような微笑を残して、娘  の姿は消えてしまった。娘は、保南の式神であったのだろう。   いつのまに取りだしたのか、寝ころんだまま保南は笛を手にしている。くち  びるの端を心持ちあげて笑んだ保南は、大切そうに笛を懐にしまうと、そのま  ま深く息をついた。  庵に人の気配はない。   杯と徳利の散らばるなかで、保南はやがて小さく寝息をたてはじめていた。                 第七夜   鞠のように跳ねるものが横切った。   きつねである。  ふと眉をひそめた保南は、きつねを追って森の奥へわけいった。下生えもま  ばらな、鬱蒼とした森の空気は冷たく冴えて湿っている。   薄暗い森の小道を辿る。道はほのかに光っていた。   どれほど歩いただろうか。   急に途切れた森のむこう、目前で湖が真昼の光をはじいていた。水は碧で、  澄んではいるが底は見えない。   深いな、とつぶやいて保南はしゃがみ込んだ。水に触れようと手を伸ばした  とき、ぼちゃん、となにかが飛び込む音がした。湖面にうすい輪がひろがる。   周囲に生きたものの気配はない。左手で懐をさぐったが、あるはずの笛も術  具も、なにもなかった。からっぽの手触りを残して、なにもかもが失せていた。   がくりと肩を落とし、鋭く息をついて湖へ向かう。なんであれ、飛び込んだ  ものを引きあげるつもりだった。   すぅ、と女があらわれた。   音もなく、湖の中央から浮かびあがってくる女は茜色の袿をまとい、朱塗り  の笛を捧げもつ。濡れた様子は、まるでない。やがて足もとまで顕れた女の、  枯葉色の髪が碧水にひろがっていた。伏せられた目が、ゆるりとあがる。女は、  あめ色の目をしていた。  笑みをうかべることもせず、女は笛を保南にさしだした。無言のままに受け  とると、あめ色の目も枯葉の髪も、すべてが霧のように散じてしまった。   手に残された朱笛ばかりが、まぼろしでなかったことを示している。冷たい  風に頬をなぶられ、いつのまにか、草野原に佇んでいることを保南は知った。   湖も背後にあった黒々とした深い森も消えていた。目を極めても、痕もない。  見あげた空は夜の色に染まっていた。月はない。星ばかりが妙に冴えて寒々し  い。   では、とちいさく言って保南は笛を口許にあげた。そのつもりだった。   朱塗りの笛は、いつか蔓を生やしていた。蔓はすでに手足に絡まり、動くこ  ともままならない。   ぶつり   にぶい音がした。蔦が、肉を突き破った音だった。左足の甲を蔓が貫いてい  た。  ああ、俺も蔦になるのだな、と保南は思った。   冷たい風が、蔦と保南をなぶっていった。                 第十夜   保南(やすな)は川辺に佇んでいた。   蔀戸(しとみど)をあげても、じっとりとまといつく暑さを逃れて訪れた川  べりは、ひやりと湿った風がゆるく草木を揺らしていた。   首筋を、汗がつたう。  瓜でもあればよいものを、そう呟いて座り込む。尻に敷かれてつぶれた草が、  青い匂いを放っている。雲ひとつない青天で、陽が脅かすようにつよく輝く。  じぃーわじぃーわ、と蝉が声をあげている。  川面がひかる。  水の流れる静かな音が、保南に涼を感じさせた。   ちゃぷ、と水のはねる気配がした。閉じかけていた瞼を押しあけ、みやった  先に女がいた。川を女が流れていた。濡れた肌が艶を帚く。女は、なにも纏っ  ていなかった。   裸の胸であらわな乳房が、ふるんとゆれた。  見つめる保南と女の目があった。紅いくちびるがひらく。女の顔に笑みが滲  む。細い白い腕が、水の中から音もなくあがる。  ざぶりと重い音をたてて、保南は女の胸にとびこんだ。待ちかねたように濡  れた腕が絡みつく。   柔肌に手をはわせ舌をはわせる。ぬめらかな弾力のある女だった。くちびる  を求めて顔をあげた保南は、身をくねらせる腹の赤い魚を見た。岩陰に女の魚  が逃げ込んだ。岩のあいだで、うすい尾びれがゆれている。  追って尾鰭をひとうちした。川の流れが頬をうつ。いつか、保南も魚に変わ  っているのだった。  誘いこまれた岩の陰、女の魚を前にして、白濁した気を保南は吐いた。流れ  る水が、ほのかな熱を奪ってゆく。  さわ、と風が草をならした。青い匂いが鼻をつく。しばたかせた目に映るの  は、先とおなじ、川べりの景。深くしずかな息をつく。川面はかわらず、きら  めいていた。                 第十二夜   あまい瓜である。濡れ縁で、保南は瓜を食べていた。あまい汁が、つぅ、と  顎をつたってゆく。左手で汁をぬぐって、また、かぶりつく。  ぷっ、と庭に種を吐く。種は、いくつもちらばっていた。  ふいに保南の口がとまる。いぶかしげに眉をひそめる。   どこかから、子供の泣き声が聞こえるのだった。目を閉じて、かすかな声に  耳を澄ました。周囲に人の気配はない。じっと耳を傾けていた保南はやがて、  あしもとに目を向けた。さぐるように目を凝らす。   種がひとつ、泣いていた。  しくしく、と哀しげに泣く種を見かねて、つまみあげる。ぽいと食べかけの  瓜の中に戻してやった。泣き声は、ぴたりと止んだ。  と、見るまに瓜が減ってゆく。  驚く間もなく食べ尽くされて、瓜は、皮と汁だけになっていた。ずずっ、と  啜る音がする。汁さえ残さず、瓜の中味はなくなった。けぷ、とちいさなげっ  ぷの音がする。皮の中を覗いてみれば、種がひとつぶ、残っていた。   ぴょん、と保南の鼻先を掠めて、種は庭にとびおりた。種はそのまま、跳ね  てどこかへ行ってしまった。                 第十三夜   月が青く照らしていた。見わたす限り、雪の原だった。青白い雪に、白い兎  がちんまりと座っている。  かわいらしいなあ、とつぶやいてみた。つぶらな瞳が見返している。   眺めるうちに妙な心地がしてきた保南は、はて、と首をめぐらした。あたり  に変わったことはない。首をひねりながらも兎に目を戻す。  こころなしか、大きくなったようである。うり坊ほどの大きさだろうか。  もぐもぐと口を動かす兎をじっとみつめて、かわいらしいことだ、とまたつ  ぶやいた。   いくぶんか大きくなった兎は、いまは若い猪ほどになっている。  不思議なこともあるものだ、と言って保南はにこりと笑んだ。それにしても、  愛らしい瞳をしているなあ、と兎の頭を撫でている。柔く、しなやかな毛の手  触りが、心地よい。   気がつけば、兎は見あげるほどの大きさだった。   ひくつく鼻と、もぐもぐ動く口元を見あげて、かわいらしいものだなあ、と  保南は思った。                 第十五夜   井戸がある。   しずまりかえった夜の中、取り残されたような井戸が見えた。井戸車に釣  瓶縄(つるべなわ)、脇には釣瓶が置いてある。どこがどうというのでもな  い。ただの、ふつうの井戸である。  それが、闇の中に浮かびあがって見えている。仄白く、淡く鬼火で照らさ  れたよう。とはいえ、鬼火の隠れた様子もない。   烏夜に、星のかけらを喰らったか   胸の奥でそう言って、保南は井戸に近づいた。まわりが濡れた跡はない。  釣瓶も縄も乾いている。   さては、枯れた井戸であろう   井戸の上に身をのりだして、ぐっと底のほうを覗いた。  なにかが、ちかりと黒く煌めいた。ごぉ、と低い音がした。あわてて井戸  から離れたところで、おおきな水柱があがった。井戸の幅ほどもある水柱だ。   おお、と保南がちいさく声をあげた。   水柱から舌がでて、あかんべえを保南にした。そうしておいて、ばしゃん、  と崩れた。保南は、頭から水をかぶって、ずぶぬれのまま立ちつくしていた。                第二十一夜   ほう、と保南は息をついた。   花あかりに、あたりがうすく輝いている。足もとの影さえ淡く色づいて、風  の愛撫をうけいれている。   ひらり   花びらが舞う。ひらひらと落ちる花の欠片を杯に受けて、保南の頬に笑みが  浮かんだ。   うす紅の花は散るのが、美しいのだ。   ふいにだれかに呼ばれた気がして、保南は背後をふりあおいだ。花の吐息が  聞こえるような静けさが、保南をゆるく包んでいる。   気のせいか   そう、つぶやいて、花のうかんだ杯を乾す。胃の腑から、ほのかな熱が這い  のぼる。酔ったかな、とちいさく言ってしずかに目をとざす。   さわさわと風が花を鳴らしてゆく。かすかにあまい薫りが鼻をくすぐった。   ゆっくりと保南がその目をあけたとき、夜はすべてが変わっていた。   花が散る。衣をはがれてゆくような、頼りなげな心地がする。ひらり、とい  ちまい風にさらわれるたび、身体にまとったうす紅の花びらが減ってゆく。じ  きに、裸の枝をさらすことになるだろう。   保南は、花の樹になっているのだった。   目の前を、男がひとり行き過ぎる。手には杯、袍は花色。赤みがかった髪が  ふたすじ、みだれて項に垂れている。   ああ、と思わず保南は声をもらした。男に声がとどいたものか……保南の樹  を、立ち止まってふりあおいだ。   男の顔は、保南だった。   あの俺も花になるのだな、と保南は静かに思った。風に花を奪い去られる樹  が一本、また、端のほうで増えていた。                第二十六夜   樹の根本になにやら大きなキノコが生えている。   見たこともないキノコで、黄色地に紅色の斑点が散らばっている。軸は薄黄  緑で、妖しげだ。しゃがみ込んで眺めるうちに、ぱかり、と笠が口を開けた。   ぎゃーはっはっはっはっはっは、ふへへへへへへへへへへへ、ひょほほほほ  ほほほほ・・・・   キノコは、大声でげらげらと笑っていた。   おお、これが笑い茸というものか。保南は、妙に感心した面もちでうなづい  ていた。                第二十九夜   昏い。   空を見あげても、あるはずの星も月あかりもない。烏夜の、闇を塗り込めた  ような暗さではなく、厚い雲が垂れ込めるに似た暗さである。   妙だな、といいながら目をしばたかせていると、ばさりと音がして急にまぶ  しい光が射した。銀の光に目がくらむ。   ――満月であった。   冴えざえと鋭い光が、闇慣れた目を射すくめる。   天に蓋でもついていたかと眇めた目で見あげるが、明るさに眩んでほとんど  なにもわからない。   そういえば、と口の中でつぶやいた保南は顔を足下に向けた。さきの音は、  なにかが落ちた音にちがいない。ならば、足もとの辺りに転がっているはずで  ある。  月光に、保南の影が黒々とうかぶ。  それは、たしかに落ちていた。大きく丸い……まるみを帯びた、鱗である。   ああ、瞼に鱗がついていたか。そう言って拾い上げた鱗を、保南はしげしげ  と眺めた。  なるほど、昏いわけよなあ。保南はふかく嘆息した。                第三十四夜  ピィィィン   澄んだ音色がした。   闇の中に、ぽかりと琴が浮かんでいる。琴頭(ことがしら)と琴尾(ことじ  り)は、鴇色地に今様と濃色、樺色などの文様を織り込んだ錦で飾られている。  弦は張られ琴柱(ことじ)もおかれて、あとは、琴爪をつけた手があれば、麗  しい琴曲が闇をとかして響くにちがいない。   だが、弾き手の姿はないのだった。   ピィィィン   また、弦が鳴る。   おおかた主を慕って鳴るのであろう、あわれなものよ、と保南は思った。黙  って、弦の響きに聴きいって立つ。   と、保名の背になにかがあたってぽとりとおちた。足もとを見れば、琴爪が  ひとつ、おちている。   ちいさな爪であった。稚い方であったろうに、と思うといつか琴はかき消え  ていた。  ――あわれな  保南はつぶやく。この世の春も女の夏も、知らずに儚くなったのだろう琴爪  の主に、保南はみじかい呪(しゅ)を捧ぐ。この世とかの世の狭間をはやく、  抜けでるようにと祈りを込める。   また、どこかで琴が鳴っている。姿なく、弾き手さえない琴が鳴る。   手の中のちいさな爪をゆるく握りしめたとき、つぅ、と天から琴糸が垂れて  くる。   これが欲しいのだな、と思って爪を結んでやるとまた、音もなく糸は天に戻  っていくのだった。……どこまでも。                第三十八夜   狐が罠にかかっていた。   後ろ足を挟に咬まれて動けずにいる。だいぶ暴れてみたのだろう、ぐったり  と横たわっていた。細い足には血が、赤黒く滲んでいる。  保南は、狐に声をかけた。   ――かわいそうだが、猟師も生きてゆかねばならぬでなあ   ひくり、と狐がみじろぐ。ゆっくりとあげた瞼の下には、黄金色の目が濡れ  濡れと光っていた。   ――それでは、そこにあるつづらを代わりに置いてくだされ   かがみ込んで見ている保南に狐が言った。鼻先でしめす方を見れば、なるほ  ど、つづらが置いてある。   ――わたしの代わりに、なかのものが、猟師どのを潤してさしあげることで  ありましょう   抱えてみれば、つづらはかなりの重みがあった。   よっ、とかけ声をあげて抜け殻のように横たわる狐の側に置いてやった。そ  うしておいて、ぎちぎちと鈍い音をたてさせながら、罠の顎を僅かずつ押し広  げてゆく。   ひらり   狐は、燕のようなすばやさで身をひるがえすと傷ついた片足を腹に引き寄せ、  地につけることなく跳ね去った。   それからしばらくたった頃、酒が一杯に入っていていくら掬っても尽きるこ  とがないつづらがある、との噂が村から流れてきた。  あのときのつづらだな、と保南は思い、相伴に預かろうかと腰をあげた。   ほんの数歩も行かないうちに、若い狐があらわれた。太い尾がゆらゆらとな  まめかしく、うごめいている。   ――およしなされ、あの酒は狐の小便でできているのだから   女の声で狐が言った。   ――罠をはずしてくだされたお礼に、これを貴方にさしあげましょう   さしだされたのは、徳利だった。濡れた鼻が黒々と煌めき、うねうねとくね  る金尾が女の媚びを思わせる。  杯にそそいで一息に……呑みほそうとしたが、なにやら生臭い。   ――まさか、涎でできておるのではあるまいな   保南の言葉に、ケーン、と鳴いて狐はどこかへ行ってしまった。   やれやれ、と嘆息をもらして保南は杯をあおった。どろりとあまい、味だっ  た。                 朝まだき   しめった風が、水の匂いをのせている。青紫の花にやどる朝露は、甘露であ  るに違いない。   ことん、と小さな音がした。かたかた……と音は続く。鳥の声も響かない、  静けさに沈む庵である。さほど響くでもないその音に、庵の主は夢から引き戻  されたようだった。掛け布もなく、滅紫(けしむらさき)の直衣のまま転がる  ようにして眠っていた保南の瞼が、ぴくりと震える。  「む……」   保南がうめいた。   葛原保南(くずらはらのやすな)。都をはなれ、野に下って四年。閑暇な庵  に、一人の供もなく暮らす陰陽師である。   ぱちりと開いた切れ長の目が、忙しなく瞬かれる。やがて、仄明かりに目を  眇めた保南は、訝しげに首を傾げた。  「やれ……ずいぶん長い夜だったような気もするが」   半身を起こして、くるりと座敷をみまわした。辺りにころがった徳利のうえ  に塵がつもっていることもなく、昨夜から長い時間が過ぎたような跡はない。  畳も、古びてはいるがすり切れたところもさほど目立ちはせず、昨夜と変わっ  たところは見つけられない。   にやりと保南は口の端をあげた。  「狐にでも化かされたかな」   くつくつと咽喉の奥で笑った。  ふと、笑いがとまった。倒れた徳利のなかに、一本だけ立ったままのものが  あった。手を伸ばして取りあげ、そっと、左右に振ってみる。   ちゃぽり、とかわいらしい音がする。   昨夜の酒を、呑み残していたようであった。   夜毎にあおる杯は、陰陽師の目になにを映してみせるのか――この四年、花  の季節に酒を欠かしたことはない。  どこか哀しげにもみえる微笑をうかべて、保南は杯を拾いあげた。とぷ、と  ちいさく酒がないた。酒で満たした杯をあおろうとして、手を止める。   眉頭にしわが寄る。くん、と酒の薫りを確かめた。   「まさか、狐の涎ではあるまいな……」   くぐもった声でつぶやいて、ぐい、と保南は酒をあおった。  ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″              ハートウェーブ・別冊             第一課題 私家版・夢十夜              杜若(かきつばた)              発行 ハートランド              担当 上代桃世             kaidou@fb3.so-net.or.jp  ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″