ハートウェーブは、ハートランドがお届けする読み物メールマガジンです  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※              ハ ー ト ウ ェ ー ブ  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 桃号 99.01.27 ※※※※  ☆こんにちは、上代桃世です。インフルエンザ、だいじょぶですか?   どうせ寒いなら、雪だるま作らせてくれればいいのに。なんて思いながら、  でもやっぱ、そおんなに寒いのはちょっと嫌かも。と、よろめく桃世は、南国  好きです。   だからといって避寒にでると、帰ってきたとき、風邪ひくんだよね〜。  φ本日のメニューφ   1.瞬キノ間ニ 第1回   2.だから、愛情  ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″  @瞬キノ間ニ@    D   わたしの翼は、あの方が持っている。    1  「なあ、俺のものにならねえ?」   あまい、声だった。   自分に向けられることのない誘いの言葉を、毎晩のように聞かされている。  アズュラフェールと、出会ってから。  「懲りない男だな。お断りだと、何度言ったらわかるんだ」   頷いたことのない彼女の言葉は、それでもどこか艶を帯びて、嬉しそうだ。  眉間にしわを寄せてみても、声の弾みは隠せない。  「何度でもねぇ、言わしてもらうよ。俺はあんたが欲しいからさ。ね。いいだ  ろう?」  「お断りだ」  「また今日も振られるか。ま、いいや。諦め悪いんだ、俺。いつか絶対、もの  にするよ」   呆れたような吐息をついて、アズュラフェールは顔を背けた。   アズュラフェール。数ヶ月前、街道の途中で出会った人形である。どこの人  形師の手になるものか、その造形は芸術とさえ呼び得るだろう。  「マイスター」   遠慮がちに声をかける。  「ん?」   タンザナイト・ブルーの瞳と目があった。こうして、自分から声をかけなけ  れば、彼の瞳はラキーアを見ない。ずっと、仕えてきたというのに。  「日が傾いてきています。そろそろ、野営の支度をしたほうが」  「ああ、そうだね。じゃあ、何か食べれるものを探してきて。俺はアズュラフ  ェールと、寝られる場所を探すから」  「……はい」   戦闘人形として造られたラキーアにとって、狩りはさほど苦ではない。アズ  ュラフェールが狩りをするより、確かな成果が期待できるのは言うまでもない。  それでも、自分が主の側を離れる間、ずっと彼女がいると思うと胸が軋んだ。   逃げるように研究所を出てから、もう何年が過ぎただろうか。その間、幾人  もの女達が主と夜をともに過ごした。それらはたいてい一夜限りで、そうでな  くても一月と同じベッドで眠らなかった。そして、どんな女と過ごした後も、  ラキーアと一緒に町を出た。ふたりきりで。   今はもう、ふたりではない。   主は、アズュラフェールに夢中なのだ。  「わたしが行こう、ラキーア。ウォルドの無駄話はもう、聞き飽きたからな」   拒むふりで背を向ける彼女に、ラキーアはきつい眼差しを向けた。  「無駄ってのは酷いんじゃないか? 翼つけてやるって言ってんだからさあ」   のんびりと、主が言う。拗ねたように唇をとがらせてはいるものの、どこか  楽しんでいるようだ。   主の視線が、アズュラフェールの背を辿る。   アズュラフェールの背には、翼がある。雪に先駆けて飛ぶ鷺に似た白い翼。  そろっていれば、聖堂の壁に描かれた天使を思わせることだろう。背には、翼  がひとつしかない。   「誰にも、指一本触れさせないと言っている。この身体は、マイスターに戴   いたもの。ほかの誰にも、触らせたりしない」   勝ち誇ったような微笑が、アズュラフェールの頬にうかぶ。   ――男は、手に入らない女を欲しがるものなのよ   いつだったか、どこかの町で別れた女が、そんなことを言っていた。主とし  ては珍しく、一月ほども続いた女だった。別れ際、濃い紅をひいた唇を、主の  口に押しつけて泣いていた。   アズュラフェールの微笑みは、その女に似ている。  「だけど、バランス悪いだろう。かたっぽだけの翼なんてさ。だから、つけて  やるって言ってるのに」  「よけいな世話だ」  「まあったく、強情なんだから」   主の、こんなに浮かれた声を聞いたことはない。どんな女を口説くときも、  ずっとどこかで冷静だった。それが……。  「狩りなんて、やめといた方がいいんじゃないの。獲物がないじゃ、笑えない  わよ」   ラキーアの言葉に、アズュラフェールはうすく笑った。  「ラキーアほど得意ではないが、汎用だから、狩りもできる。ウォルドよりは、  ましな狩りができるだろう」  「マイスターは、狩りなんてしないわ。人形師だもの。だから、私がいるんじ  ゃないの」   人形師は、数少ない。   大陸中を探しても、その数は百人に遠く及ばないだろう。そのほとんどは、  小国ターラ・ボゥの研究所に拘束されている。   そこで造りだされた人形達は、大陸を二分するシバイス公国とラエス帝国へ、  そして時には周辺の自治領区へと売られてゆく。   痩せた土地を耕すための農耕用、山賊から村を守るための戦闘用、裕福な商  人たちが侍らす愛玩用……。大陸全土で使用される人形のすべてが、ターラ・  ボゥで造られている。  「色男には狩りは向かないからねえ。それは二人におまかせするよ。俺は、ひ  とりさみしく寝場所を探すさ」   主の言葉に、アズュラフェールがため息をついた。  あまい、誘惑の色を帯びたため息だった。  「一緒に行きます」  「いいよ、二人で行っといで。たまには獲物くらべも面白いだろ?」  「でも」  「いいからさ。行ってきな。ほら、置いてかれるよ」   主は、ラキーアとふたりきりには、なりたがらない。アズュラフェールとな  ら、何時間でも二人でいるというのに。  「マイスター……」   タンザナイト・ブルーの瞳を見つめて、ラキーアは、小さく主を呼んでみた。  わずかに黄色みを帯びた日射しに、まっすぐな黒髪が煌めく。その髪も瞳も、  身体中のすべてが主――ウォルド・ラティンの手になるものだ。   胸の奥深く、絶対服従プログラムを秘めたパブロフ・システムには、ウォル  ド・ラティンの名が刻まれている。   それがどんなものであれ、主の望みに逆らうことはラキーアには出来ない。  たとえ、二度と戻るな、との言葉でも。  「狩りに行きます」  「ああ、待ってるよ」  「……はい」   にこり、と笑ってラキーアは応える。いまはまだ、戻るなと言われていない。  側に居場所は残されている。   いずれ、去れ、と言われるとしても。  @だから、愛情@   大親友が、留学するの。   言葉も水質も、感性も違う国で生活するにはエネルギーがいる。   応援してるの。   でも「がんばって」って言うのはキライ。    だって、頑張ってるに決まってるじゃん。   すごくとっても頑張ってるのに、   「まだまだまだまだ、もっとガンバレ」   なんて、言えないよね。   あたしに言ってあげられるのは、ひとつだけ。   離れていても。想ってる。   きみが無理をしすぎないように。体調を崩さないように。   素敵な友人を得られるように。いい師匠に出会えるように。   糧になる経験ができるように。満足のいく成果が手にはいるように。   怖いめに遭わないように。酷いめをみないように。   面白いめにあ えるように。泣きたいときには、泣けるように。   だから、愛情。たくさん持って、行っておいで。    いつだって、あたしは君の親友だからね。   いま留学中の方へ。そして、これから留学する方へ。   留学はしないけれど、なにかを求めている方へ。   上代桃世は、いつでもエールを贈ります。   あなたに。   幸運と強運が、ともに訪れますように。  ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″  ☆リニューアル桃号でございます。   「瞬キノ間ニ」は、あまりの難しさにくらくら来てます。へろへろですね。   あああ、もう、いったいどうしたら……という気持ちです。でも、まあ。   しょうがないというかなんというか、頑張ります、はい。   「だから、愛情」は、じつは以前、別のマガジンに掲載していただいたもの   です。再録になるんですけれどもね。載せたかったんです。   だって、もうじき、いろんな気持ちになるでしょう?   だから、ね。愛情でございます。  ☆と、いうわけで。今回の桃号、お楽しみいただけましたでしょうか。   ちょっぴりでも、楽しんでいただければ嬉しいのですけれど。   それではまた、7日のつく日にお会いしましょう。  ☆次回は2月7日にハニー号(テーマ『まずい』)を発行の予定です。  ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ☆ 発  行  ハートランド  ☆本日の担当者  上代桃世(kaidou@fb3.so-net.ne.jp)  ☆このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して   発行しています。( http://www.mag2.com/ )  ☆バックナンバーはhttp://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/HW/ でご覧いただけま   す。掲示板もありますので、ふるってご参加ください。よろしくね。   メールでのおとりよせもできますのでお気軽にどうぞ。  ☆みなさまからのご感想、リクエストなどを心から、お待ちしています♪  ☆お願い 掲載された内容は許可なく、転載しないでくださいね。  ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞