ハートウェーブは、ハートランドがお届けする読み物メールマガジンです  %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%           ハ ー ト ウ ェ ー ブ  %%%%%%%%%%%%%%%%%%%% グリーティング 99.03.14 %%  ◎はあい! お約束のホワイト・ディの贈り物でございます。ヴァレンタイン   のつたない贈り物のお返しに、月刊ノベルのジョッシュさまから、素敵なお   はなしを戴きました。   普段とは、ちょっぴりちがうハートウェーブ。どうぞ、ご賞味くださいませ。     φ本日のメニューφ   1.ジョッシュさまからご挨拶   2.0.1秒の逢瀬   ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″  @ジョッシュさまからご挨拶@   HEARTWAVEの読者の皆様、こんにちは。   百花繚乱のまじめな(?)小説マガジン「月刊ノベル」です。   今回はHEARTWAVEさんとの共同企画という形で、   ホワイトデイにあわせて、掌編を投稿させていただきます。   ほのぼのとした気持ちになっていただければと思います。   それでは「0.1秒の逢瀬」を、どうぞ。   月刊ノベル制作人 ジョッシュ( prn81060@ba.mbn.or.jp )  @0.1秒の逢瀬  叙朱@   1時間に1本しか列車の来ない、片田舎の駅前広場。   口数少ない男子学生の一団の中に僕はいた。ズボンのポケットに手を突っ込  んで、小さな封筒の位置を確認しながら、目だけで君を追っていた。   まったくもって、寝耳に水だった。君が転校してゆくなんて……。   2年前の春、遠い町から転校してきた君。田舎訛りのないきれいな言葉を喋  り、見たこともないような草花の話をした君。原色の絵の具から夢のような色  彩豊かな絵を描いて見せた君。   動くたびに人を惹きつける、君は実際に輝いていた。   そんな君についたニックネームが宇宙人。しかも頭でっかちの火星人。おで  この広い君にはぴったりだと僕は笑ってしまったけれど。   でも、火星人としたのは、おでこだけが理由じゃない。君の話や考え方は、  たいてい僕の想像を超えていた。僕と同じ、この地上の生物とはどうしても思  えなかったんだ。   あれは去年の秋だった。ちょっとしたトラブルの中に君はいた。   君の授業用の副テキストが、突然無くなってしまうというつまらない事件だ  った。昼休みの終わりのチャイムが鳴って、君は運動場から席に戻った。午後  1番の授業のために、いつものバックパックを取り出した君は、最初に少しだ  け首を傾げた。まるで精密なプログラムが、少しだけ狂ってしまったような、  そんな仕草だった。それから、机の引き出しや廊下のロッカーを調べている内  に、同級生が捜索に加わり、教室中が大騒ぎになった。僕はそんな君をじっと  見ていた。君の真剣な眼差し、考え込む仕草。そしてついに意を決したように  君は僕のところへやってきた。  「委員長、お話があります」   僕は確かにその時はクラス委員長をやっていた。それに、みんなに委員長と  呼ばれることにはある種の優越感を感じることもあったくらいだった。そのく  せ、その時、君にそう呼ばれたときはひどく寂しかった。なぜだろう。  「私、テキスト忘れちゃったみたいなのです。午後の授業の時に、いっしょに  見せてもらえませんか」   君は僕のところにまっすぐに来た。その時はたいして気にしなかった。それ  は僕がクラスの代表である委員長という立場で、問題(もめ)ごとのまとめ役  の役割を負っていたからだ。でも、君にまっすぐに見つめられて、僕はどぎま  ぎした。僕の目をのぞき込むように見ていた君の目。目の奥に吸い込まれそう  な気がして、僕は目をそらしながら、自分のテキストを君に押しつけた。  「僕は他のやつのを見るから、これ使って良いよ」  「え?」   君の怪訝そうな顔。僕の心を測るような目の色。しばらくの沈黙のあとの破  顔一笑。  「ありがとう」   あの微笑みは、あれから僕の宝物になった。   でも宇宙人の君のことだ、きっと副テキストの所在を分かっていたんだろう。  だから、君は僕のところへ来た。僕をまっすぐに見つめて。まるで僕の企みを  を見透かしたように。   そんな君の転校の知らせを聞いて、僕はすっかり慌てた。   君をずっと見つめていた、それだけのことだったのに、何か大きな無くしモ  ノをするような気がして、頭の中が真っ白になった。それに取り返しのつかな  い後悔もあった。   そんな僕に、母が小さな餞別袋を持たせて、追い立てた。  「ほら、ぐずぐず言ってないで、見送りにくらい行って来なさい」   中にはきれいなお札が一枚だけ。   でも、駅についても僕は餞別袋をポケットから取り出せないでいた。   君はいつものように、同級生の女の子たちといっしょにいたし、ぼくは悪友  どもとともに、君を遠くから見ているだけだった。確かに君を見送りに行った  のだけれど、君には近づけなかった。   列車はすぐにやってきた。   乗客は君と君の生意気な妹。それから頭をしきりに下げているご両親。改札  を通り抜けるときに、ちらりと君は振り返った。白いセーター姿の君の背中を  見つめていた僕と、0.1秒くらい、目があった。   たった0.1秒の逢瀬。   君は目の奥から話しかけてきた。  「ありがとう」   口元からきらっと白い歯がのぞいた。   青い列車は容赦なく出発し、そしてあっけなく姿を消した。猛烈な脱力感と  ともに、ぼくはなぜかかすかな満足感を覚えていた。   渡しそこねた餞別袋は、ポケットの中でしわくちゃになっていた。                        ( 0.1秒の逢瀬−了 )  ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″  ☆こんにちは、上代桃世です。   月刊ノベルさんとのタイアップ、いかがでしたでしょうか。   ホワイト・ディの今日、3月号が発行されるそうです。   掲載されている「モーニングコール」という短編には、ホワイト・ディが具   体的にでているとのことで、おもしろそうですよね。  ☆今回の企画では、ジョッシュさまには大変おせわになりました。   心から、お礼を申しあげたいと思います。本当に、ありがとうございました。   これに懲りずに、また楽しい企画でご一緒したいと思います。   ご感想は、prn81060@ba.mbn.or.jp のジョッシュさまへ、よろしくね。   それではまた、7のつく日にお会いしましょう(次回は17日の花号ね)。  //////////////////////////////////////////////////////////////////////  ■テキスト版・月刊ノベル   ミステリーやロマンス系の小説を月に1本、電子メールでお届けします。   http://plaza5.mbn.or.jp/~joshjosh/densimag.htm   //////////////////////////////////////////////////////////////////////  ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ☆ 発  行  ハートランド  ☆本日の担当者  上代桃世(kaidou@fb3.so-net.ne.jp)  ☆このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して   発行しています。( http://www.mag2.com/ )  ☆バックナンバーはhttp://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/HW/ でご覧いただけま   す。掲示板もありますので、ふるってご参加ください。よろしくね。 メールでのおとりとせもできますので、お気軽にどうぞ。  ☆みなさまからのご感想、リクエストなどを心から、お待ちしています♪  ☆お 願 い  掲載された内容は許可なく、転載しないでくださいね。  ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞