ハートウェーブは、ハートランドがお届けする読み物メールマガジンです  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※              ハ ー ト ウ ェ ー ブ  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 桃号 99.08.27 ※※※※  ☆こんにちは、上代桃世です。でろでろに夏バテっている最中です。いや、な   んかもう……ねえ?   そんなわけで、こんなに遅い発行になっちまいました。ごめんなさい。   たったと体力を取り戻して、また元気に活動したいと思います。  φ本日のメニューφ   1.うらぎり   2.朝ごはん   3.ふんっ  ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″  @うらぎり@     むかし、チャレンジをしたことがあります。   普通の一人称と、何もかも自分を通して語らなければいけない一人称(=主  人公以外の人物については、セリフも使ってはいけない)、そして感情を(直  接)表す一切の言葉を使ってはいけない三人称。それを、書きわける。   それはもう何年か前のことで……でも、わたしの出発点でもあったのです。   今回――ぎりぎりまで、迷っていました。   載せようか、やめようか。   迷った末に……やめちゃいました。  「原点に還ろうと思ったの」   そう言って、ゆりえちゃんに相談したのはほんの数日前のことでした。いま  は、ゆりえちゃんが同じことにチャレンジしていますのでね、意見を聞こうと  思ったんです。   載せていいんじゃないか、という返事をもらって。でも、もういっかい考え  たんです。ほんとに、そんなことしていいのかなあって。   とあるアーティストの、博覧会というか展示会というか。そういうのをね、  見に行ったんです。それでね……考えちゃって。   いろいろ。   もういっかい、自分自身のいちばんピュアなところを見つめかえしてみよう  かなあ、と思ったんです。それで、チャレンジしたのを引っぱり出して。   でもねぇ……読めないんだ、これが。恥ずかしくって。   ハートウェーブに載せたら、いやでも読み返すからねー、と考えたんでした。  けど、思い直して。   だって、生意気じゃん? 原点も何も、まだまだまだまだ、これからじゃん?   そんなことはね、もうあと千本も書いたら、考えていいんだ。   そう、思ったの。だからね、やめちったあ!   心配もかけたし、ぐだぐだ色んな事も言ったんだけど。ごめんね、ゆりえちゃ  ん。うらぎっちゃったあ★  @朝ごはん@   晴れた朝には、フォションのモーニングがいい。金色の缶に青く「TEA」  を抜いた黒い円が映える。ぽちゃりとまるいポットの口から、凛とした香りが  たちのぼる。すっきりとした、あまりくせのない紅茶だ。   同じ部屋で暮らしている〈紺〉は、飲み物に対するこだわりどころか、好き  嫌いすらわかっていない。かなり癖のあるアールグレイも、ちょっとカビくさ  い感じのするウーロン茶も、僕の気に入りのFのオレンジペコも、彼にはさし  て変わりはないのか、いつも同じペースでカップを空ける。   たぶん今日も、いつもと同じペース、同じ表情でカップを空けるのだろう。   〈紺〉のために、トースターにパンをほうりこみ、うすいカーテンをひいた  ままだった窓を開け放つ。   うん、いい風だ。   〈紺〉を起こしに行こうと寝室に向かいかけてふと、足を止めた。   そうだ。せっかくの天気だから、ちょっと意地悪をしてみよう。   小さな笑いがこみあげ、こらえきれずにくすりと微笑む。   うん。意地悪をしてみよう。   僕はくるりと踵を返すと、ちょっと深めの白い皿を並べ、コーンフレークを  こんもりと盛った。イニシャル入りのガラスのコップにたっぷりとミルクを注  ぐ。   銀色のスプーンを並べて、完成。   いつものようにささやきと笑顔で〈紺〉の眠りを揺り起こすと、僕は笑いを  ふくみつつ、ダイニングへと戻った。窓からさしこむ清々しい光が、朝食のた  めのスプーンにまぶしい輝きを与えている。   ほどなくして、身支度をととのえた〈紺〉があらわれた。僕はいつもと同じ  く、よい香りのするお茶をティカップへと注いでいる。   そう、いつもと同じ。   いつものカップ、いつものサラダ、いつものヨーグルト。そしてテーブルに  はマカロニ色のコーンフレーク。ミルクまで添えてある白い皿を見つけて、  〈紺〉の足が止まった。僕は極上の笑みを添えて、〈紺〉をうながす。〈紺〉  はなんだか、いつもよりゆっくりな足どりでテーブルについた。   そうだよ、今日の僕はほんのちょっと意地悪だよ。  「どうしたの?」   僕の問いに〈紺〉はあいまいな応えを返しながら、コーンフレークの山を見  つめて、かたまっている。  「いや…」   今の僕の瞳は、きっと獲物であそぶ猫のように煌めいているだろう。  「どうかした?」  「いや、なんでも…」   問いかけるように促した僕に応えて、〈紺〉はミルクのコップに手をのばす。  白い皿にたっぷりとミルクを注いで、〈紺〉は、まずサラダをつついた。   心の準備をしてるんだろう。   コーンフレーク、嫌いだもんね。銀色のスプーンをつかんで、いざ、意地悪  な朝食に挑もうとしたその時、Tin、と何かが音を立てた。  「できたよ、トースト」   にっこりと、極上の笑みを投げてみた。   嫌いなコーンフレークに気を取られて〈紺〉は気づかなかったけれど、実は、  さっきからトースターのタイマーはじりじりと音を立ててまわっていた。   〈紺〉が口をひらく前に、平たい皿にパンをのせてさしだす。  「バターここだよ」   言いながら、〈紺〉の前のコーンフレークを引き取ると、〈紺〉はちょっと  困った顔をしていた。   ごめんね。だって、その顔が見たかったんだ。   かすかに眉を寄せて、唇を引き締めた顔。その顔が、見たくてね。   いっぱいにあけた窓に寄り添うカーテンが、ふわりと大きく風をはらんだ。   うん、すごくいい風だ、気持ちいいね。   意地悪したしね。わざわざ嫌いなものをテーブルに並べて、困った顔みたし。   僕はくすりと微笑んで、〈紺〉から取った朝食をほおばる。ふっと息をつい  た〈紺〉の口元に苦笑がうかんだ。   いつもがんこな僕の恋人。ずっと…僕がまだ、寂しいだけの子どもだった頃  から、ずっと待っていてくれた頑固な奴。わがままで。ちょっとばかり傲慢で、  そのくせ妙に繊細な。大切な、パートナー。   …時々、すごく困った顔が見たくなる。つまんないことで困らせてみたくて。   せっかく淹れてくれたコーヒーが冷めてしまうまでじゃれついて、あげくの  はてに熱いコーヒーが飲みたいなんて言ってみたり、プレゼントなら、〈紺〉  が育てた薔薇の花をとねだったり。   いつもいつも、つまんないことで困らせていたい。くだらないことで困って  欲しい。どうでもいいわがままを、きいていて欲しい。ばかばかしいいじわる  に困って欲しい。   くだらないけど、本気だよ。   僕の小さな仕草ひとつで困った顔する〈紺〉が見たい。小さく苦笑う顔が見  たい。仕方のない奴、そんな風な笑顔が見たい。   ごめんね。僕はときどき、意地悪だ。   確かめたくて、ひどいことする。おねだりも、わがままも、意地悪も。どん  なひどいことしても。   僕は〈紺〉が好きだからね。   ……僕はまだ、寂しい子どものままなのかもしれない。寂しい子どもの影を  曳いて、それでも僕は、そばにいるから。   時々思う。  僕はひどい。餓鬼のよう。なんだかずっと“好き”に飢えて餓えていたから、  貪りつくしてしまいそう。こんなにも、乾いている。何ガロン水をぶちまけて  も、吸いつくし、流しつくして次をねだる砂漠のように、僕も“好き”を求め  ている。そんな気がする時がある。   乾きに果てはあるんだろうか。   飢えに行きつくところはあるんだろうか。   “好き”って本当は一体どういうこと何だろう。いつの時も気にかけていて  欲しい、それが“好き”ってことなんだろうか。   “好き”って本当はどういうことなんだろう。そんなこと、考えたこともな  かった、〈紺〉に出逢うまでは。   それが本当は、どういうことかもよくわからないのに、僕は〈紺〉に求めて  いる。   好きでいたい。好きでいて。もっとずっと“好き”が欲しい。   自分が何を求めているのかも、もうよくわからない。ただ、わかっているの  は、〈紺〉が欲しいと思ってる、そのことだけ。   この胸の嵐をどうしたらいいのか、わからない。   いつも僕をみていて欲しい。   ずっと隣にいて欲しい。   その腕で、僕をもっと抱き寄せて欲しい。   僕だけを、みつめて欲しい。   こんな欲望、醜いと思う、僕だって。ほかの誰にも見せたくないし、触れさ  せたくないなんて、すごい強欲だと思う。   だけど、止まらない。   ずっと、ずっと僕だけ好きでいて欲しい。ほんのちょっとでも、他の人を見  て欲しくない、それが本音。   だからかなぁ、意地悪したくてしょうがないの…。少なくとも、意地悪して  る間は、僕のことだけ考えてるよね。   ごめんね、いつも意地悪してて。   大好きだよ。どうしていいか、わからないほど。どうなっちゃうのか、わか  らないほど。   好き。   大好き。   とりあえず、明日は意地悪、しないからね。  @ふんっ@   うぐいすのふん、って知ってる? なんだかよくわかんないんだけど、もら  ったんだよねえ。だまされたと思って使ってごらん、って。   でね、使ってみたんだよ。それがねぇ、びっくり!   いっやぁん、手触りいーいっ。そんな感じ。うん、ほんとに騙されたみたい。  なんかこう、きつねに化かされたんじゃないかって気がするの。   なんで? なんでこんなにすべっすべなの? なんで?   きつねじゃなきゃ、たぬきにでも化かされてるのか!? という気がする。   んーっと、匂いはねぇ「きな粉」に似てる(きな粉、今日たべたよ。わらび  餅、おいしぃの。くふふ。おやつとかおいしいと、幸せになるよね)。   古くなった「きな粉=食べてもまずそう」を連想させるね。ってことはさあ、  「きな粉」でも効果あるのかなあ? うぅぅん……   あ、使い方はね。泡立てた洗顔料のなかに、ちょっぴり入れるの。で、泡に  混ぜる。そんで洗う。顔洗ってるときに「きな粉」思い出すんだよ。匂いで。   あとはふつう。洗い流して、おしまい。洗い終わった後、びっくりするんだ。  あまりの手触りのよさに、おもわず『なんでっ!?』と叫んでしまったもんさ。   いやあ……昔からの知恵って、あなどれんわ。  ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″  ☆今回の桃号、お楽しみいただけましたでしょうか。   もしなんかで機会があれば、ウグイスの糞――うっわあ、漢字で書くとすご   いなあ――にチャレンジしてみてくださいね。この夏いちばんのオススメだ。   それではまた(今回ちょっと、遅れちゃったけど)、7日のつく日にお会い   しましょう。  ☆次回は9月7日にハニー号(テーマは、な・い・しょ★)を発行の予定です。  ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ☆ 発  行  ハートランド  ☆本日の担当者  上代桃世(kaidou@fb3.so-net.ne.jp)  ☆このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して   発行しています。( http://www.mag2.com/ )  ☆バックナンバーはhttp://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/HW/ でご覧いただけま   す。掲示板もありますので、ふるってご参加ください。よろしくね。   メールでのおとりよせもできますのでお気軽にどうぞ。  ☆みなさまからのご感想、リクエストなどを心から、お待ちしています♪  ☆お願い 掲載された内容は許可なく、転載しないでくださいね。  ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞