ハートウェーブは、ハートランドがお届けする読み物メールマガジンです %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%             ハ ー ト ウ ェ ー ブ %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% ハニー号 99.11.07 %%%% ◎みなさま、お待たせいたしました。またまたとっても発行が遅くなってしま ってほんっとうにごめんなさい!  早速ですが、今月のテーマは「蠱惑」。またまた発行が遅くなってしまった 分お楽しみ頂ければ嬉しいのですが...ちょっと焦りを感じつつ、今月のハ ニー号をお届けいたします。 φ本日のメニューφ  1.熱帯夜(テーマ:快楽)  2.小宇宙(コスモス)(テーマ:蠱惑)  3.惑/KAZAN−DOLL(テーマ:蠱惑) ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″ @熱帯夜@  切なさは、ため息となってこぼれたまま、闇に吸い込まれていった。静かに 沈んだ夜の闇は、むっとするほどの熱気を孕んで彼女を押し包んでいる。  物憂げに伸ばした指で探し当てた夜目にも鮮やかな一枚の白いシャツを、そ っと取り上げ、火照った頬を押しつけながら彼女はもう一度、ため息をついた。  意を決したようにシャツを広げ、羽織ってみる。ふわり、と漂うコロンに、 胸が躍る。  それは、彼の香り。異国の香にも似たその残り香は、嫌でもその持ち主の激 しさを思い出させた。  身体の芯から心地よい痺れにも似た余韻が、全身に広がる。たまらずに目を 閉じ、彼女は震える吐息をこぼしながら、シャツごと自分の身体をしっかりと 抱き締めた。 Yurie Hanayama @小宇宙(コスモス)@  まっすぐに見つめる瞳から、目が反らせない。  潔いほどまっすぐな眼差しに、触れられそうなほど熱い情熱が迸っている。  明るさを落とした照明の中でさえ、その濡れたように輝く瞳の黒々としたき らめきが、たちまちこの心を捕らえていく。  逃げられないのだ。そう覚悟を決めた時、俺の心の中に生まれた絶望は、果 てしなく広がりゆくように感じられた。そして、それのなんと心地よいことか。  熱っぽく潤んで俺をじっと見つめ続ける、夜の闇よりも黒い瞳の、美しさ。 惹き付けられたら最後、決して逃げることは出来ないその美しさは、憧れを掻 き立てずにはいられない無限の宇宙に似ていた。何もしない。ただ、俺を待ち 受けているだけ。  飲み込まれて、しまいたい。強烈な衝動に眩んだ視界の中で、その瞳はまだ 俺を見つめていた。 Yurie Hanayama @惑/KAZAN−DOLL@  カタン、となにかが倒れたような音がした。 「また、おまえか。いったい、なにが望みだというのか、荷葉(かよう)よ」  低い声に、困惑の色が滲む。 「女を造るときばかりに、そうして倒れる。おまえのような人形は、はじめて だ。手放したものは数多いが、おまえは、手を放れることはないのだろうな。 そんな気がする」  作業台の右端で、腕を投げだし、片膝をわずかにまげた姿勢で横倒しになっ た人形を見つめる。  黒髪が、ひらいた口に乱れかかって艶めく吐息を思わせる。薄紫の襦袢がは だけ、奥を隠すようにわずかにかさなりながら晒された内腿が、湿った手触り を喚想させる。  ため息をついて鑿(のみ)を置き、席を立つ。  細い身体を抱え上げ、着くずれた襦袢をなおしてやりながら呟く。 「おまえには、精を与えてみたくなる。荷葉よ。そのとき、おまえは声をあげ るだろうか」  乱れた黒髪を撫で、焦茶の色ガラスを使った瞳を覗き込む。  人形の、あるはずのない瞼がゆっくりと閉ざされ、また元の通りに開かれた。 「瞬き……? まさか。いや、そんなはずはあるまい。見間違いに決まってい よう。そうだ、そんなはずは。気のせいだ」  呟きながら目を閉じて、男は大きく息をついた。                            Momoyo Kamishiro ″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″″ ☆こんにちは、花山ゆりえです。  ハートウェーブ・ハニー号、お楽しみいただけましたでしょうか。今月のテ ーマは「蠱惑」だったのですが、私の作品は実は一応続き物として書いている ので、前回ご披露しなかったテーマ「快楽」の分も今回アップしてみました。  毎日寒い日が続き、いよいよ本格的な冬の到来となりそうですが、みなさま お風邪など召しませぬよう、お気をつけてお過ごし下さいね。  それではまた、7のつく日にお会いしましょう。 ☆11月17日は花山ゆりえの花号、27日は上代桃世の桃号を発行の予定で す。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆ 発  行  ハートランド ☆本日の担当者 花山ゆりえ(yn6y-iruc@asahi-net.or.jp) ☆このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して  発行しています。( http://www.mag2.com/ ) ☆バックナンバーはhttp://www.age.ne.jp/x/sf/NOVEL/HW/ でご覧いただけま  す。掲示板もありますので、ふるってご参加ください。よろしくね。  メールでのおとりとせもできますので、お気軽にどうぞ。 ☆みなさまからのご感想、リクエストなどを心から、お待ちしています♪ ☆お 願 い  掲載された内容は許可なく、転載しないでくださいね。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞