▼引っ越し大作戦
 

2002年だけで
他県から沖縄県に住民票を移した人は
約2万8千人にものぼるという。

毎日76人が日本全国のどこかしらから
沖縄に引越してきている計算になる。
かく言うぼくもそのひとりだ。

ぼくは東京から沖縄に引越してきた。

さて、この沖縄へ移り住むことを「引越し」というか
「移住」と表現するかは人によって分かれるところだ。

沖縄は日本国内なのだから移住というのはやや大袈裟な気がする。

だが、この地を自らの永住の地と意識して選んだ上でやって来た
ということならば、それはやはり「移住」といってしかるべきだろう。

となると引越は、そこまで踏み込む手前の段階ということだろうか。
賃貸物件の借り方などについては
すでに多くの本や雑誌に取り上げられているので、ここでは省略。

まずは引越しの実際から話をスタートさせよう。


   

引っ越し大作戦
 

引越先が決まっていれば、沖縄に引越すといっても特別に構える事はなにもなく、基本的には、例えば東京の等々力から自由が丘に引っ越す手順と何も変わらない。

運送会社を選択、見積りを算定、引越日を決定、引越当日を迎える。というわけだが、注意すべき点がいくつかある。

まず運送費が問題。思ったよりかなり費用はかさむと覚悟すべし。また、引っ越す先は海の向こう。荷物が届くまでの時間と、自分が移動するタイムラグを計算に入れておく必要がある。



   

引越にはいくらかかるか?
 

ぼくの場合、沖縄への家財道具運送費は総計で65万円ほどかかった。荷物量はいわゆるマンションの2DK一世帯分で、東京で使っていた生活用品の一切が含まれている。これでも安いほうだという。

さらにはクルマの搬送費用に10万円、飛行機に大型犬を乗せるのに3万円、加えて自分自身の交通費も含めれば、なんやかんやで90万円近くかかっている。

正直、驚いた。当初は、もっと遥かに安く済む、と踏んでいた。電話で相談した運送会社でも、「私共の単身者向け引越しナントカパックをご利用いただければ…」とかなり安い額を提示していたからだ。

確かに同時期に10万円以内で宮古島までの引越しを完了した知り合いもいた。が、彼の場合、荷物はほぼ衣類とパソコンのみだったと聞く。結局、押入れ半分ほどの容量しかないような格安引越しパックでは、ほとんど何も運べないと思ったほうがいいようだ。

だから、覚悟するしかない。できるだけ何も持たずに引越してくるか。あるいは、高額な運送費を支払うか。仕事道具や好きな家具があるという人は、やはり後者ということになるだろう。

それでも、節約する方法はある。




   

まずは見積もりコンペから
 

いくらくらいかかるのかは個々人によってまちまち。まずは、運送会社に部屋の荷物量とサイズを見てもらい、見積りを立ててもらうのが一番だ。ぼくは合計5社に見積りを出してもらった。似たような額になるかと思ったが解答は、社によってバラバラ。なんと120万円から55万円までの差が出たから、また驚いた。

結論から言えば、沖縄までの船便に強い全国ネットの組織かどうかどうか、で費用は変わるようだ。都内では知名度があっても、沖縄への輸送経験の少ない会社ほど見積もりは高く出た。ということは、いわずもがな、やはり全国ネットワークを持つ大手ほど安く、確実。

ぼくは競合5社にこれは見積りレースです、と明言していた。すると面白いことに、担当者はみな一様に他社はいくらかと知りたがった。その上で、「たぶん〇通さんがトータルで一番強いと思いますよ」などと結論を予想してきた。結果は、本当にそのとおりだった。蛇の道は蛇である。

また安ければいい、というわけではない。安さの理由は、エアコンやBS、CSアンテナの取り付け費用などが別途である場合もあるから見積りは細かくチェックしなければならない。




   

クルマの輸送
 


東京からなら有明埠頭までクルマを運び、船会社に沖縄の港まで運んでもらう手はずをとる。目的地によって船会社を調べ、まずは電話で問合せればいい。費用は東京-那覇がフォルクスワーゲン・ゴルフで、およそ10万円だった。

費用はクルマのサイズによって変動するが、一人分の船賃も含まれてはいるから、これを利用してフェリーで引越して来る人も多いようだ。トラックに家財道具を満載して船に乗れば、引っ越し代が大幅に抑えられるというわけだ。

だだし、沖縄までの船旅は、早くても二日半はかかる。




   

ペットについて
 

いろいろと悩んだ末に、やはり飛行機で運ぶことにした。それしか選択肢はなかった。

小型犬や猫なら勝手は変わってくるかもしれないが、体重31キロの大型犬となると船では貨物室に閉じ込めるしかないという。個室をとれば問題ないのではないかと船会社と掛け合ったが「前例がない」と断られた。仮に船の貨物扱いで運ぶ場合、ほぼ3日分の給餌、排泄、運動の問題が出てくる。船酔いストレスも心配の種になる。で、あるならば、犬にも2時間半の空の旅を我慢してもらうしかない。

事前に獣医からもらった精神安定剤を服用させた上で、友人と二人がかりで空港で嫌がる犬を輸送用の檻に閉じ込めた(すまん!)。

航空会社の対応は、やはり動物の輸送に経験豊富な国際線キャリアほどよかった。もっとも犬にしてみれば空の旅もいい迷惑で、那覇空港に到着後、手荷物回収所でぼくが最初に耳にしたのは、吼えまくる我が犬の大声だった。




   

荷物が到着するまで
 

東京から沖縄まで。人は飛行機で2時間半で到着できる。犬も一緒だ。ところがクルマは、船の運行スケジュールによっては4、5日かかり、引越荷物もまた届くまで一週間前後もかかる。ということは、荷物が届くまで下手すると約一週間、布団もエアコンもヤカンも何もない部屋で暮らすハメになるということだ。

ぼくが引越して来たのは真夏の最中。幸い近くにコンビニがあったから、さして不便は感じなかったとはいえ、室内の暑さだけは、いかんともしがたく「この一週間、エアコン無しで過ごしています」というと、当地の人には例外なくひどく同情された。あるタクシーの運転手さんなどは、信じられない、と絶句したものだが、いまでは懐かしい思い出だ。

このタイムラグをウィークリーマンションなどやホテルに泊ることでやり過ごす方法もある。ぼくの場合は犬同伴だから、この手は使えなかったが。