沖縄には何度も来ていた。ダイビング、仕事、遊びに、三線の道具を買いに、ただぶらぶらしに。本島はかなり見てきた自信もあったし観光地なら地図なしでドライブも出来た。だが、全部を知っているわけではもちろんない。
で、とにかくまずは本島の海岸線を完全に一筆書きで一周してみることにした。当然、家から近いところから見て回り始めた。ロードマップを開きペンで印を付けながらドライブがてらの土地ハンティングだ。まずは見ないと始まらない。
いま考えてみると、涙が出るほど「大アマ」なのだが、この時点でぼくには、内心、勝算がある気でいた。地図を見ると、本島中部、太平洋側に、緩やかないい感じのビーチラインが続くエリアがある。しかも宿らしい宿はいまのところない。なぜか自分でも行ったことがなかった。
どうしてみんな気がついていないのだろう。ここに那覇に近く、絶好の海岸線があるのに。「ここ、穴場だな」。たぶん、決まりだろう…意外に早く決着するかな、といい気なものだった。
土地探しの初日。自信満々でそこに初めて足を運んだ僕は、呆然とした。地図で表示されていた海岸線は、砂浜などではなく延々と続く、泥の干潟でしかなかった。その上、視界には石油のコンビナート、工業地帯。殺風景極まりない景色が続いていた。これがぼくの土地探しの初日だった。痛烈な一撃。発見したのは土地どころか「大アマの自分」だった、というわけだ。ああ!!
これではいけない。地図を見ただけでは結局何も分からないのだ。そこで心を引き締めて、ぼくはとにかく沖縄の海岸線すべてをまわってみようと決めた。
クルマに地図とメモを忘れずに乗せると、それからしばらくの間、ぼくは調査に没頭した。
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