8月4日、いよいよ第一回目の見積もり打ち合わせ。施工工務店から提出されるのは、恐らくは大変な高額になろうと予想はしていたが、実際に金額を見て目を疑った。予算の1.5倍以上の数字なのだ。「不可能…ではないか」との思いで、胸の中が妙に重苦しくなる。
早速、設計事務所と減額の方策を練るが、いったいどこまで下げられる事やら。これで安くならないか。この手はどうか。だが、抜本的な解決には程遠い。打ち合わせはやはり4時間近くにも及んでしまった。
久々に嫌な気分に支配され、帰りの道で、一人海岸に立ち寄った。
つまらなかった。止めたくなった。こんな計画、徒労に終わるのではないか。資金という現実が、苦い壁のように、自分の前に立ちはだかり、その存在に自身の甘さがあざ笑らわれている。
沖縄の暑さが今日は妙に鬱陶しい。これが過去になる日はくるのか。撤退という事か。弱気になったまましかたなく家に向かう。この大変なタスクも、やはり、1歩1歩進んでいけば出口は見えてくるのだろうか。
…そして、見積り打合せだけで早くも2ヶ月が過ぎていった。
もう10月に入っている。基本的な設計プランがかたまり、見積りに入ってすでに2ヶ月が過ぎた。この間の見積り打合せ回数はすでに7回になろうとしている。そのうち僕が出席したのは前半の3回だけだ。
あとは施工の会社と設計事務所で行われた。プランと予算の間にある開きを詰めなければならない、という命題は、もうかなり無理があるのではないか、と気落ちしていく。
この2ヶ月間といえば、まるでハムレットだ。二つのフレーズが頭を堂々巡りしている。「できる」「できない」そうこうして2ヶ月が過ぎた。
疲れているのは、こちらだけではなく設計事務所、施工会社の担当者、社長、全員だろう。となると、やはり、その張本人たる僕がへこんでいてはいけないな。気張っていかなければ。必ずできる。そう思ってここまで来たのだから。
山登りも辛いのは頂上が近づいてからだという。近すぎて山頂が視界にないからだ。もう一歩。もう一歩、と進むことにしよう。それが最善の道。
…いま思うと、このあたりが一番気分的に辛かったようだ。
だが、諦めなかった。僕も、設計事務所の建築家達も、施工会社の現場監督も、全員。結局、膝を突き合わせての施工見積り打合せは合計9回にも及んだ。そして、ある日、僕らにゴールは見えた。
僕だけの力ではない。この計画にかかわったそれぞれの立場、それぞれの人たちの総力の結果だった。そして、すべてにGOを出す、契約の日はやって来た。
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