1010 アピール権の消滅となる野手のプレイ・ならないプレイ |
草審判の久間です。 ご質問の件は,私が出向いた球場でも選手か らときどき問われますし,現役の審判員から も説明を求められることがあります。 それだけ,このアピール権についての規則は 解釈が難しいのでしょう。 ここでは,攻撃側プレヤーが塁を空過した際 のアピールを例にとってお話致します。 (例1) 打者Aは長打を放った。彼は二塁を踏まずに 三塁へ達した。球は投手へ返され,打者Bが 打者席へ入った。投手は投手板に触れ,捕手 からのサインを見た。このとき,二塁手が投 手へアピールのために球を要求。投手は二塁 手へ送球したがこれが悪送球,外野へ転がっ てしまった。これを見たAは本塁へ突入。球 を拾った外野手は本塁へ送球したが,Aは得 点した。二塁手は改めて球を要求。捕手から 球を受け取った二塁手はAの二塁空過をア ピールした。審判員の判定は? (答1) この場合,審判員はアピールを受け付けては なりません。外野手が本塁へ送球した時点で アピール権は消滅しています。Aの得点は認 められます。 (例2) 打者Aは長打を放った。彼は二塁を踏まずに 三塁へ達した。球は投手へ返され,投手はマ ウンドへ向かって歩き始めた。このとき,二 塁手が投手へアピールのために球を要求。投 手は直ちに二塁手へ送球したがこれが悪送球 となり,外野へ転がってしまった。これを見 たAは本塁へ突入。球を拾った外野手は本塁 へ送球したが,Aは得点した。ここで二塁手 は改めて球を要求。捕手から球を受け取った 二塁手はAの二塁空過をアピールした。審判 員はどう判定するか? (答2) この場合アピール権は消滅していませんので, 審判員はアピールを受け付けます。二塁を空 過しているAはアウトを宣告され,得点は認 められません。 例1の外野手の送球はアピール権が消滅する プレイですが,例2の送球はアピール権が消 滅しないプレイです。 これはどこで区別するのでしょうか。 それは,投手が投手板に触れ(マウンドに立 ち),新たなプレイが開始されたか否かによ って区別するのです。 例1の場合,Aが三塁打を打ったというプレ イは投手が打者Bに投球する目的で投手板に 触れた時点で完了しているのです。 外野手の本塁への送球は,走者三塁・打者B という場面で行われています。この新たな場 面で行われた野手のプレイはアピール権消滅 となるプレイなのです。 では,例2はどうでしょう。 外野手が本塁へ送球したときは,投手はまだ マウンドに着いていません。これは,走者三 塁・打者Bという新たなプレイがまだ始まっ てはいないということを表します。 ということは,外野手の本塁送球は打者Aが 三塁打を放ったというプレイの続きで行われ ているわけです。 二塁手が球を要求したことも,投手が二塁へ 悪送球したことも,Aが本塁へ走ったことも, そして外野手が本塁へ送球したことも,すべ ては打者Aの打撃中に行われたプレイなので す。新たな場面がまだ開始されていませんの で,外野手の本塁送球の後に行われた二塁手 によるアピールは有効というわけなのです。 公認野球規則に書かれているアピール権消滅 となる野手のプレイというものは,投手が投 手板に触れ,新たな場面が開始された後に行 われたものを指しています。 以上を【1007】のご質問にあてはめますと, 「捕手が後逸した球をあわてて拾いにいき、 本塁に入った投手にトス、走りこんできた三 塁走者をタッグしに」いったプレイは,投手 が次打者へ投球する目的で投手板に触れる前 に行われているものですから,これはアピー ル権消滅となる投手や野手のプレイには該当 しないのです。 以上で回答になりましたでしょうか。 失礼致しました。
〔ツリー構成〕
【1007】 「監督の抗議権の消滅時期」について 2003/4/23(水)21:38 Tinker |
┣【1008】 アピール権消滅となるプレイではありません 2003/4/24(木)08:30 久間(くま) |
┣【1009】 re(1):アピール権消滅となるプレイではありません 2003/4/24(木)18:53 Tinker |
┣【1010】 アピール権の消滅となる野手のプレイ・ならないプレイ 2003/4/25(金)09:07 久間(くま) |
┣【1011】 ありがとうございました。 2003/4/25(金)21:50 Tinker |
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