....16世紀末から 17世紀の初頭にかけて、François Viét (1540-1603), René Descartes (1596-1650) といった人たちによって、記号代数の方法が確立され.算術における推論が 代数計算に帰着することが知られるようになったのでしたが、そうすると、何も算術に限らずして、一般の推理をも代数計算に帰着させることができるのではと考える人が現れました。.そして、Leibniz (1646-1716) をはじめとして Lambert, Hamilton, de Morgan等々といった人々の様々な試みがあったのですが、.整合性をもった 首尾一貫した理論というもの は なかなか得られず、それが得られたのは 漸く 19世紀も中葉になってのことで George Boole (1815-1864) という、独学の英国人数学者によってでした。.
.... Boole の理論が.どのようなものであったか、そのさわりの部分を.少し.覗いてみることにします。
...Boole は.[.X.ならば.Y.である].は x=xy なる.
"論理方程式(logical equation)".で表わされると考えます。
よって、[.Y.ならば.Z.である].は y=yz という."論理方程式".で表わされることになります。 従って、これらの二件を前提にすれば
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..Boole は.x を .X.が真となるような時間.と.解釈しています。
.同様に、 y は Y.が真となるような時間.です。 .すると、[.X.ならば.Y.である].は.(現代の集合論の表記 を使えば) x⊆y. ...しかるに、 x⊆y .は. x=x∩y と.同値です。. ..Boole は.今日..x∩y と書くところを.. xy と書くので、x=xy. ..かくして [.X.ならば.Y.である] は...x=xy で表わされることになるのです。 |
..今、[.X.ならば.Y.である] と 仮定します。
..すると、 x=xy .....∴ x−xy=0 .....∴ x(1−y)=0 ---- これは [.X.であるのに.Y.でないこと.は.あり得ない] ということです. |
は Boole の理論では どのように 表わせるでしょうか? せいぜいのところ、
でしょう。 これでは 不完全な記号化であると言わざるを得ません。 日常言語表現と記号的表現との折衷表現でしかないからです。
....結局のところ、Boole の理論は、論理学とは無関係ではないにしろ、論理学自体ではなくて、論理学を前提とした代数理論のひとつ であると言うのが正しいでしょう。
..Boole が The Mathematical Analysis of Logic (1847) を出版してから 約 30年後の1879年、ドイツの数学者 Gottlob Frege (1848-1925) が 『概念文字』 Begriffsschrifts という風変わりな表題の書物を出版しました。.これは(Booleと違って)論理法則自体を
記号化し、正確に把握することに主眼をおいたもので、独創性にあふれる名著でした。.
..Frege の卓見
として、特に、次の二点をあげることができます。
.●...述語を関数として把握したこと........
.●...量化記号の導入........ |
....一方、当時の指導的数学者で ドイツは ゲッチンゲンにあって、数学的諸理論の公理的再編 と 無矛盾性の問題に取り組んでいた David
Hilbert (1862-1943)
は その研究に この Frege流の 記号論理学理論が不可欠であることを やがて 察知することとなりました。.
..このようにして、Fregean理論 (Frege流の論理学理論を 以後このように呼ぶことにします)は 20世紀の論理学の標準理論となっていったのでした。.
..さて、次に
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