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学会、フォーラムの案内
日本歯科麻酔学会「歯科麻酔を考える臨床医のフォーラム」
時期: 平成9年10月10日
会場:岩手県教育会館(盛岡市)
歯科医院における偶発症に対する
救急医療の在り方
1地元歯科医師会で救急医療を推進する立場から
2 地域歯科医師会における歯科麻酔認定医の役割と展望
3 盛岡市歯科医師会における救急医療体制の現状と問題点
4 .討議
1地元歯科医師会で救急医療を推進する立場から
弘前市開業 波多野 厚緑先生
救急医療のシステム
救急蘇生対策部会
システムの概要
偶発症発症時の連絡 <> 弘前大学医学部
救急時の応援 麻酔学教室
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歯科医師会員 <> 事後報告 <> 弘前歯科医師会
会員の啓蒙 救急蘇生対策部
どのように構築したか
救急蘇生対策部会
昭和58年
救急医療体制の必要性
歯科医師会の中での若手の起用
歯科麻酔に対する理解が得られた
弘前大学医学部麻酔学教室
地域医療サービスへの理解
既存の医師会での救急医療システム
うまく行っている理由
弘前市 人口17万5000人
歯科医師会員数 102名
診療所数 83診療所
→規模があまり大きくない
・診療所が応援する大学から20分圏内
・会員の理解とシステムに対する信頼
弘前大学麻酔科
・当初の救急医療システムの継続性
・マンパワーの充足
・市内の中心地に存在する
歯科麻酔認定医と歯科医師会との関連
メリット
・意見が反映される
・信望が得られる
・患者さんを紹介される
デメリット
・時間的ロス
・会務
・電話での相談等
・ハイリスクな患者への対応
システムを振り返って
1.本システムを理解していない先生がおられた
2.会員の先生への啓蒙・研修が徹底していない
知識・手技の向上
救急薬品、器具、器材の常備の徹底と定期点検
(麻酔医が来るまでいかに適切な処置を講ずるか)
3.麻酔科への依存度が大きい(安易な出動要請)
地区別グループ制の導入、歯科医師間での応援協力体制の確立
救急蘇生協力医の育成
参考:各地での救急医療システムの紹介とまとめ
札幌歯科医師会
仙台歯科医師会
福島歯科医師会
新潟市歯科医師会
広島県歯科医師会
鳥取県 歯科医師会
**波多野先生 ここまで**
2 地域歯科医師会における歯科麻酔認定医の役割と展望
宮城県開業 大阪 博伸先生
開業医の憂鬱
いろいろある中で、もっとも大きいものは訴訟につながる医療事故
アナフィラキシーショックの経験→救急の日:毎月自院での緊急時訓練
危機訓練の必要性
歯科医院における危機管理
基本理念
悲観的に準備し、楽観的に対応する:最悪を考えて準備する!
危機管理の段階的分類
自助:院内
互助:同業間、歯科医師会
公助:公的機関
具体的対策
平常時と緊急時のformationの決定
緊急体制が機能するための定期的実技訓練
日常における報告と確認の義務づけ
簡単なミーティングを毎日行い、院長対スタッフ、スタッフ間の意志疎通の確認
院長の心構え
危機感を持つ
平時と有事の意識の転換をイメージトレーニングする
平時から考えられる最悪の事態に対する備えを一つづつ確立しておく
決断と決裁を混同せず、決断の訓練を行う
安全<>安定<>安心:信頼
歯科麻酔:安全な医院経営の基盤→歯科会全体が共有すべきもの
→歯科麻酔認定医の役割
**大坂先生 ここまで**
3 盛岡市歯科医師会における救急医療体制の現状と問題点
盛岡市歯科医師会 菊月 圭吾先生
歯科医師会としての対応
1.医療事故を起こさないために
2.患者急変時の対応
3.在宅訪問診療時における対応
1.医療事故を起こさないための安全な歯科治療を考える
会としてのテーマ→有病者歯科
講演会・研修会の開催:歯科麻酔認定医等の協力
有病者歯科医療ハンドブックの作製→高次歯科医療機関との連携
有病者を診るに当たって、一般開業医の範囲でできること、設備の整った施設でな ければできないことをはっきり区別できる力を養うことが重要
2.盛岡市医師会との連携による患者急変時の対応
フローチャートの作製
応援依頼先、医師会とのコミュニケーション→非常に重要
歯科医師会が関わりすぎると秘密保持の問題もある
3.在宅訪問診療時における対応
1)行政との連携:交通事故(市職員に準ずる保証)
医療事故(行政による1億円程度の保証)
4.かかりつけ歯科医療の充実
診・診 連携:歯科医と医科主治医との連携
病・診 連携:高次歯科医療施設との連携
行政・福祉との連携:お出かけサービスカー(搬送)
今後訪れるの高齢社会は、我々と患者さんの協力の元に「幸齢社会」に!!
**菊月先生 ここまで**
4 .討議
1)話題1:各地の救急医療体制と歯科麻酔認定医の関与の在り方
宮城県仙台市 角田先生(一般開業医)
仙台市:緊急時応援システム
システム1:歯科治療時、緊急偶発症発症時
→東北大医学部救急医学講座、耳鼻咽喉科に依頼→医師の派遣
システム2:比較的緊急を要さない偶発症、歯科難症例、高度有病者歯科治療
→仙台市内の病院歯科(8施設)に依頼
今後、医師会との連携を検討中
問題点:行政の地域と歯科医師会の地域がほぼ一致→うまく行っている
地方の、複数の市町村にまたがる地域ではどうか?
函館市五稜郭病院歯科口腔外科 佐藤雄治先生
函館市にはまだ救急医療体制が確立していない
大学のない地域ではマンパワーの問題:緊急時に医師が出動する事は困難
医師会の救急医療体制との連携、行政との連携が重要→歯科麻酔認定医の役割
広島大学歯科麻酔科 杉村光隆先生
広島大学医学部、歯学部、行政、歯科医師会との連携での救急医療体制
(昭和58年から)
開業医からの連絡→救急車での出動:基本的に歯科麻酔科より派遣
市内に緊急時協力医(歯科麻酔経験者)をもうけている
年に1回、救急蘇生の講習会
大阪小松病院歯科口腔外科 藤喜久雄先生
病院歯科の立場から
全身的偶発症:相談された場合、専門医への搬送のお手伝い
局所的偶発症:病院歯科の役割
歯科麻酔認定医:自院でのシステム作りや応援が来るまでの対応に関与
いわき市開業 小野実先生
いわき市:5年弱で10数名の症例が歯科医院より救急車で搬送された
歯科医師会の中で、歯科麻酔認定医の置かれている立場の違いもあり、偶発症発症時
の救急医療体制に歯科麻酔認定医が取り組めない地区もある
歯科医師会と医師会が対等の立場で連携できればよいと考える
救急車出動について
札幌市開業 濱田先生
札幌市の救急医療システムでは、サイレンをならさないできてもらっている
→札幌医大麻酔科医師がまず派遣、搬送が必要と認めた場合救急車を要請する
2次医療機関を使用する場合、医師会の救急医療システムを利用
名古屋市開業 伊藤正夫先生
合併症に対する対処:予防が大事
局所麻酔に関する合併症が多い(注入時の血管内誤注入、加療投与等)
歯科医師会の学術、歯科麻酔認定医を中心に合併症予防の教育を行うことが大事
2)話題2:救急医療におけるスタッフの関わり、教育の問題
--歯科助手・歯科衛生士の教育--
秋田県開業 木村貞昭先生
歯科麻酔認定医は秋田県で一人
歯科助手の研修会(日本歯科医師会認定)で講義:救急蘇生、1時間!?
まったく専門的教育を受けていない人々に出血性ショック等々教えてもわからない
下記の2点のみを覚えるように話している:
1.緊急時の連絡先:応援を求める病院の電話番号(応援先の時間外の連絡先も)
2.緊急時使用器材および薬品の置場所や使用期限のチェックを怠らないこと
歯科衛生士の教育について
--卒前・卒後教育--
神戸市立中央市民病院歯科口腔外科 足立了平先生
兵庫県の歯科衛生士学校で口腔外科の分野で講義を行っている
実際は、講義はあまり聴いていない、半分は寝ている
卒業した時点で使いものにならないのは、歯科医師も歯科衛生士も同じ
卒業時にどれだけの意識も持って救急蘇生を考えているか?
最近、救急蘇生の実習時に非常に理解している生徒がかなりいる
→自動車学校で3時間程度の講義・講習がある
ビデオ使用の講義では、宮城県の大坂先生が作られたビデオが一番受けている
臨場感あふれる指導をしないと難しい
各医院ごとの緊急時の衛生士の役割を理解することが大事
歯科医は、緊急時に一番に何をしなければならないかを考えることが大事
神戸市立中央市民病院歯科口腔外科 河合峰雄先生
歯科小手術でもモニターの装着を徹底させる
→血圧計をつけないと不安になる、高齢者には必ず装着
衛生士が積極的に装着している→無症状の高血圧、頻脈がわかる
日常の臨床でモニターを使用すること等もスタッフの教育になるのではないか
宮城県 片山智子さん(歯科衛生士)
歯科治療において緊急時に遭遇したことはない
今後は考えていかなければならないと思う
(身内の出産時の不幸を経験し、強く、救急体制の必要性を感じた)
歯科医師、歯科衛生士対象の講習会はあるが、両者を含めた勉強会は少ない
→スタッフも含めた救急時の対応の勉強会を多く開いてもらいたい
岩手県立中央病院歯科口腔外科 中里滋樹先生
歯科衛生士学校の講義(救急蘇生法)
歯科医療の情勢が変わっている→予防が重要
医療事故を起こさないための講義
→スタッフの講習が必要
歯科麻酔の認定医もスタッフの教育に携わるべき
ショックを起こさないためにどのように問診を取るか?
簡単なバイタルサインでの異常の見方等
偶発症の予防にも力を入れるべきだ
まとめ
歯科治療時の偶発症に対する対策に関連して、いろいろな地域から、いろいろな先生
が実際に行っていること、悩まれていることなどが話された
歯科麻酔認定医は、大学や病院歯科と地域歯科医師会との仲介役として地道に活動す
ることができる
Last modified 8/15/'99
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kato hitoshi