口臭治療における抗カンジダ薬治療に対する私(ほんだ歯科)の見解


口臭治療における抗カンジダ薬治療に対する私(ほんだ歯科)の見解 名前:HONDA 2/26(火)01:59

歯周病治療に対する「抗カンジダ薬」を使った治療が画期的で大発見みたいな報道がなされたことや、抗カンジダ薬の口臭治療への応用に対する患者の不安についてのメールもよく頂くので私(ほんだ歯科)の口臭治療の見解を述べていきます。
また同時に、抗カンジダ薬による口臭治療や歯周治療を希望して来院される患者も多くなってきました。問い合わせも急増しています。

何 回もこのホームページで訴えていますが、口臭治療に「抗カンジダ薬を取り入れて口臭は完治する」といううたい文句で、口臭治療を展開するクリニックがあり ますが、これらの治療は、その根拠として口臭=歯周病=歯周病治療としての抗カンジダ薬という図式になっているのだと思います。

確かな医学的根拠に基づき細菌学的・感染症学的知識に充分な知識の豊富な先生が責任を持って治療される場合は別です。

歯周病の発症の仕組みは、歯周菌の増加とその病原性と宿主の老化やストレスによる免疫応答の低下が原因で、原因菌はカンジダではないということ、細菌感染が起こる場合は常その裏に真菌感染があるということが抗カンジダ薬を使うことは適切でないことの根拠です。

つまり、先に真菌感染(カンジダ症)があって細菌感染(歯周病)があるのでもないです。細菌感染(歯周病)がある場合は、同時に真菌感染もおこるのです。

したがって、細菌感染を防御して治療(歯周病を治せば)すれば結果として真菌感染(カンジダ症)はなくなるので、確立された歯周治療を確実にすれば抗真菌剤の使用は必要がないのです。

不 用意な抗真菌剤の濫用は、口腔内常在細菌叢への影響が大きく、副作用も多いので例え一時的に有効であったとしても、その後の口腔内の細菌環境にどのような 影響を与えるのか?あるいは、口に端を発した消化器系全般に与える影響も未知であるために抗カンジダ薬の適用にあたっては確定診断(確かにカンジダ症があ るという細菌学的診断や病理診断)が必要で、あくまでもカンジダ症の治療に限定してとどめるべきであるという考えでいます。

確かに抗真菌剤は細菌にも殺菌作用があり一時的な効果があるもののその適応においては慎重を要すると考えています。

正しい、誰が考えても納得のできる医学的根拠に基づく抗カンジダ薬の使用であれば、問題ないのですが、確定診断による真菌症以外での抗カンジダ薬は危険であると考えています。

ましてや、口臭全般に有効でるとするには基礎医学的な検証と安全性を確かめた上で使用されるべきと思います。

皆さんも一面的な新聞情報を鵜呑みにするのではなく、色々な考え方を聞いてよく考えて知識を整理しておくことが必要です。


「抗かび剤は歯周病に有効」報道に関する日本歯周病学会の見解 名前:HONDA 2/26(火)02:02

参考までに、歯周病治療の専門家の学会の見解も書いておきます。大変妥当な見解であると思います。

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   朝日新聞は平成13年11月20日の 夕刊第1面トップに「歯磨きより、抗かび剤が有効」という記事を掲載した。この内容は、平成11年6月8日付の社会面に掲載された「歯周病、抗かび剤が効 く?」という囲み記事を継続するものである。朝日新聞の社会的影響力とこの記事の大きさ、トップ記事としての扱いにより、この内容が広く社会では正しい、 新しい歯周治療法であると多くの読者に誤解を与え、臨床歯科医のみならず多くの患者からも問い合わせがきている。

  平成11年の記事について、その内容が現在の正統な歯周病の治療法、予防法と大きく異なり、著しい誤解を招く恐れがあったので、本学会では"正しい歯周治 療の普及を目指して- 抗真菌剤の利用を批判する-"と題した総説を日本歯周病学会誌に発表した(参考文献1)。また、現在では本学会のホームページwww.perio.jpで も読めるようになっており、学会としての見解を広く明らかにしている。抗真菌剤が通常の歯周治療に利用できるとする科学的根拠はなく、仮にその根拠があり 充分検証された薬剤であっても、その使用に際しては副作用は勿論のこと薬効を期待する場での薬物効能の特徴も考慮し、投薬方法が適切でなければならない。 さらに、現在我が国で行われる歯周治療のガイドラインに従ったブラッシングにより歯肉縁上プラークを除去し、歯肉縁下プラークに生息する歯周病原性細菌を 様々な処置により除去して、歯周組織を修復、再生させるという治療法は世界で行われている研究結果を集積した科学的根拠に基づいて確立された治療手段であ り、確実に歯周病の治療成績の向上をもたらしているものである。現代の医療は科学的根拠に基づいた方法で検討された成績をもとに選択された手段でおこなわ れなければならない (Evidence-Based Medicine)。カンジダ菌が、特殊な例を除いて、歯周病の発病や進行に関わっていないことは、数々の報告から明らかで ある(参考文献2、3)。 

   平成13年11月の新聞記事は再度、社会的影響力を無視できない状況を作り上げた。新聞記事で紹介された山本氏が 調べたように、口腔内にカンジダ菌が見い出されることは事実である。とりわけ抗生剤の長期服用例や、義歯を装着した患者の場合多く検出され、口腔カンジダ 症という口内炎の原因となっている場合がある。しかし、カンジダ菌は歯周炎の原因菌ではないし、歯周ポケット内にもほとんど見られない(参考文献 1)。抗真菌剤による含嗽の臨床効果も、 カンジダ菌陽性患者にリステリン洗口液にアムホテリシンBを1滴入れ、1日1回うがいをすると歯周病の症状が 改善するとされているが、リステリンは殺菌性洗口剤であり、プラーク抑制、歯肉炎の改善と抗かび作用が認められた市販薬である。その上、山本氏は、急性症 状のある患者には経口抗生物質を投与しており、これも歯周炎の改善に効果があったと考えられる。歯周病の改善が抗かび剤であることを明らかにするために は、正しく選択された対照例をいれた治験が行われ、その効果が明らかにされる必要がある。一方、抗かび剤のアムホテリシンBは著しく毒性の強い抗菌薬とさ れ、副作用として腎障害を招くことが報告され、この薬剤の長期使用による全身的影響についても充分な配慮、検討が必要である。個人が自分で考え、健康増進 のための家庭療法的なものであれば、許されるであろうが、このような考えを医療として普及しようとすれば、基礎より科学的根拠に基づき、安全性・有効性が 証明され、社会的に承認された方法でなければならない。単に科学的根拠に基づいて行われていないという理由だけで新たな試みを切り捨ててはならないが、患 者への適用は、学会等の学術的な場で充分な学術的討議の後、行われるべきである。朝日新聞で紹介された山本氏の論文(参考文献 4)はデンタルダイヤモンド誌に掲載されたものであるが、同誌は一般商業歯科雑誌であって専門誌ではなく、しかも寄稿として扱われているものである。山本 氏本人が文中で述べているように内容は直感の域を出ておらず、この寄稿に歯周病に関する学術的な裏付けのある知見は認められない。
 
   現在、日本のみならず世界で行われている歯肉縁上プラークを除き、歯肉縁下のグラム陰性菌を中心とした歯周病原性細菌を様々な処置により除去する歯周治 療は科学的根拠に基づいて確立され、実績を伴った治療法であり、歯科医師が修得し、実施すべき治療手法である。この方法に時間、手間がかかるとして、学術 的な根拠が認められない上、安全性の確認されていない抗かび剤(アムホテリシンB)の連続的投与を患者に行うべきではないと考えるものである。

日本歯周病学会
理事長 石川  烈
(東京医科歯科大学大学院歯周病学分野 教授)

【参考文献】
1)日本歯周病学会:正しい歯周治療の普及をめざして
 ―抗真菌剤の利用を批判する―  
 日歯周誌42(1): S1-S6
2)梅本俊夫他:Candidaの歯周病への関与についての文献的および臨床的見解、2 
 歯界展望96 :315-326
3)村山洋二:歯周病の病因細菌と抗菌薬の評価について
 抗真菌薬の考察を支点に     
 ザ・クインテッセンス18(8):1601-1613
4)山本共夫:口腔内カンジダ属の検討、あなたの歯はつるつるですか?  
 デンタルダイアモンド2001(11):165-171


この、日本歯周病学会の見解については、日本歯周病学会のご好意により転載のの許可をいただいております。



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