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−−−  7日目(6/21)  −−−
積算距離:830.29km
最高速度:35.1km/h
走行距離:75.3km/day
 6時半に起床。さすがに夜がきつかったか。
 ま、寺周りはどこも9時からなので急ぐあれではないぞ、と。
 YHからまずは西へ。
 大覚寺、清涼寺、二尊院等を回り、渡月橋へ行こうとしました。池の向こうに御髪神社なるものがあって、髪の神様なんて珍しい、と思いつつ、トロッコ嵐山駅前に到着。
 どっちに行けばいいのかなとガイドブックを広げ、よし、こっちだ、とペダルを踏みかけた時。
「すいませーん、旅行者の方ですよね?」

 声がした方を見ると、街頭アンケートでもするかのように手にバインダーを抱え、その後ろには派手な−−ウルトラ警備隊のような−−デザインの車。
 いやぁな予感がしつつ、漕ぐのをやめて話を聞くことに。
 彼女は朝がた京都ラジオで放送している、自称有名なラジオ番組の外回りのリポーターだとかで、街で見掛けた面白い人に生でインタビューしていると言う。
 面白い人とは失礼な、と思いつつ。
「出てくれませんか?」
 との問いかけに私は少々渋い顔。
「私、そういうの苦手なんですよ」
 が、私がいい気になって自転車で埼玉から1号線を自転車でひた走って来ただとか、先日の大雨では降られながら走っただとかと教えたら、彼女はインタビューする気満々。
 どうも彼女の雰囲気からすると、面白い人が見つけられなかったら穴場として御髪神社とトロッコ嵐山駅を紹介しようとしてたらしいです。
 そりゃ、少々サビれかけた穴場を紹介するより、馬鹿げた旅してる輩を紹介した方がラジオとしては面白いんでしょう。
 聞く気万々の彼女の顔にしぶしぶ了承し、イヤフォンを渡されて局のタイミングに合わせてインタビュー開始。
「凄い旅行者を発見しました。この男性、どこから来てると思いますか?」
「北海道!」
「沖縄!」
 彼女の含みを持たせすぎた問いかけにスタジオからはとんでもない返事。
 思わず失笑しました。
「先日は雨でしたけど、大丈夫でした?」
「駄目でした」
 一同爆笑…笑い事じゃないってば、と口の中でつぶやき。
「学生の時分に、会社止めて旅をしている人を見て感銘を受けまして、今旅してます」
「じゃ、今夢が叶っているんだ」
 言われてみればその通り。
「失礼ですけど、資金は大丈夫なの?」
「ま、100万も貯金があれば大丈夫でしょう」
「すごい!貸してほしいな」
「トイチでよければいいですよ」
 などなど、テンポよく話が進みます。
 向こうもさすがプロだけに素人向けに聞きやすい質問をしてくれているようですね。
 そして、ADからマキの合図。
 そんなことに気付いている余裕を見せているけど内心は結構ビビッているのが自分で良く分かるだけに情けない。
「明日からまた雨らしいよ、どうするの?」
「明日からですか。水も滴るいい男で頑張ります」
「ははは。頑張ってください」
「はい、有り難う御座います」
 まるで打ち合わせたかのように、マキに合わせて無事終了。
 出演料代りに綿棒貰いました、マスコットキャラマーク付きの。
 そして無線から聞こえて来た声。
「ディレクターから伝言。今の人の連絡先押さえといて。携帯持ってるようだったら携帯番号」
 うわ、気に入られたか?が、幸い私は携帯がありません。
 Eメールは教えましたが、分からないようですし、名刺は貰いましたが、福岡からの帰りで良ければ、ということで何とか別れました。

 嵐山の竹林道。高校生の時分にも見たなぁ、そうか、ここだったのか。
 そして渡月橋。あ、ここも見たな。そうか、ここだったのか。
 学生時代の旅行なんてものは一緒に行く人と騒ぐことがメインであって、行ったところなんて良く覚えちゃいない、実際こんなもんでしょう。
 やっぱり見たい人は個人的に出向かなければ分からないものです。
 今回は自転車で走りまわったおかげで位置関係が良く分かりました。
 と、話は終わりかけましたが実はまだ続きます。
 渡月橋からサイクルロードに乗った私は、松尾大社でお参り。
 月読神社を見逃して大原野を散策、桂離宮を見逃して何故か商店街に潜り込み、雰囲気を味わって駅前に出て北上、平安神宮、二条城、銀閣寺、大徳寺、金閣寺、北野天満宮を回りました。
 そして祇園。
 三条大橋付近にハセガワと言う良い店がある時いていたのですが、結局見つけきれず、夕食は手頃な店で済ませてしまいました。

 7時半にYHに戻った私はなんとか蛍狩りに参加することが出来ました。
 大覚寺よりも更に西に行ったところ。韓国人らしき人やら、神奈川、栃木から来た人たちとの散策。
 実は私、蛍を生で見たのは始めてです。
 感動しました。あんなに明るく、綺麗に光るんですね。
 最初は光があまりに強いんで、向こうにも誰か懐中電灯を持っている人がいるのかと思ってしまいました。
 こんな場を設けてくれている、YHのペアレンツの方々に感謝。
 こういう場所を残してくれている京都に住む人々にも感謝。
 美しい自然は、後世まで残して欲しいものです。

 夜中はまたも座談会。なんと明日は大阪に向うと言う人たちが数人もそろいました。
「じゃ、明日は長居YHに現地集合と言うことで」
 笑いながら別れましたが、どうなることやら。
....つづく
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