私的中島みゆきの情景

[0013] ありがとう ごめんなさい[私の声が聞こえますか] (1997)


 「私の声が聞こえますか」のB面(アナログレコード故に)を、今聞き終えたところでこれを書いている。鳥肌がたった。いままで、何を聞いていたのだろう「これが中島みゆきじゃないか」
 最後の一曲「時代」に、針がさしかかった、左チャンネルからアコースティックギターの音(ね)が響きだし、中央にぽっかりと現れる歌姫。気負わず軽やかにストレートに透明な声で言葉を紡(つむ)いでいく。その声に中島節は感じられなかった、響きの良いまっすぐな声。これが本当の中島みゆきの声なのか。やがて右チャンネルにもアコースティックギターが加わる。オーディオ装置に贅沢する趣味を持っていたことにも感謝した。人から見ればばかげた価格のオーディオ製品たちは「中島みゆき」という人物を我が家に招いてくれた。歌い続ける姿がはっきりと目の前にある。

 正直に言えば、何も思い付かない、何も感じない、イマジネーションの枯渇状態が長く続いている。「私的中島みゆきの情景」などと看板を掲げておこがましいやら、恥ずかしいやら。そして、今日じっくりと聞いた「時代」は、まるで今日、生まれて初めて聞いたかのように鮮烈に新鮮に脳を駆け巡った。いったい今までどんな「時代」を聞いていたのか。「時代」に歌われているそのままに、回り続けているのか。常に新しい「時代」が訪れる。

 もしかしたら、音楽や演奏に対しての記憶力が非常に欠如しているのかも、そのおかげで、聞くたびに新しい発見が有るのなら、それも長所と思う事にしよう。

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