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−−−  55日目(8/8)  −−−
積算距離:5800.7km
最高速度:58.9km/h
走行距離:104.34km/day

 フジテレビの日…だからどーした。
 夜中にふと目が醒めました。なにやら頬が痒い。寝ぼけながら頬を掻いた次の瞬間、すさまじい激痛に私は飛び起きました。
 虫だ!瞬間的に直感した私は虫を見ようとしましたが、寝袋が邪魔で上手く動けずに虫には逃げられてしまいました。
 羽音がなかったので多分ハチではないと感じたのですが、刺すと言うイメージから可能性は拭えないのでまずアンモニア。
 これなら自分が生成できるのだから手っ取り早く入手できる代物ですし。急いで用を足しながらそれを手にとって塗りました。
 しかし、痛みも晴れも引きません。やはりハチではなかったのか、ムカデやゲジゲジなどの類だとちょっと厄介かもしれない…。
 詳しくはないまでもそれらの危険性はある程度知っているつもりです。心臓のそばを刺されなかっただけマシだったかと思いつつもかなり焦りました。
 クマンバチのような即死性はなかったようなものの、せめて腫れが引かないことには予断は許されません。それどころか腫れが変に突っかかって口を開こうとあごを動かすだけで痛みを感じるほどになりました。
 さてどうしよう。近くには家はありません。店もありません。公衆電話もありません。そもそも今は深夜です。救急車を呼ぼうかとも考えましたが、公衆電話のあるところまで自力で行けるくらいなら呼ぶまでもないはず。
 そのとき思い出したのは宮崎のH氏からいただいたプロポリス。殺菌能力があるはずです。
 実はこれまでに水を大量に確保できたときにだけ飲んでいたのでほとんど空になっていましたが、最後の一滴までを強引に搾り出して刺された箇所に塗りました。
 これで私が出来ることは全てです。そのまま待つこと小1時間。アンモニアの消毒作用が効いたのか、プロポリスの殺菌能力が効いたのかは、はたまたそれらがなくとも勝手に引くものだったのか、どうにか痛みが引いて眠れるほどになりました。
 これでとことん運が悪ければ朝になった頃には死体になっているんでしょうが、寝て朝起きた頃には腫れも引いていました。
 宮崎のH氏には過ぎるほど感謝しても有り余ります。本当に多謝です。
 夕べは触るだけで痛かった患部。もしハチなら針でも残っているかと不安でしたが、触っても痛くない。刺された痕は残っているようですが、痛みはすっかり引いてくれました。
 それを現すかのような空は変な雲が少々あるものの、基本的には青空。旅は続けられそうです。
 で、出発。見るところが少ないから見ようと思っていた大吼蝙蝠洞をあっさりと見逃し…二見夫婦岩は道沿いだったので無事に見られ…土井ヶ浜弥生パークは開場時間前に着いてしまい、そんなに見たいというものでもなかったのでパス。
 結びイブキはそもそもそれが何であるのかわからないまま、寺に入り、それが木らしいとまでは分かったもののどの木がそれなのかは突き止められず。
 ここいらからなにやら散々な山陰めぐりになりそうな予感。
 そのまま走りつづけて油谷町へ。楊貴妃の里に興味はありましたが、拝観料が異様に高いのでやめました。
 さらに行くつもりだった竜宮の潮吹きも千畳敷も、たかだか300m級の山の峠を通ることが辛く感じてしまい断念。軟弱になったのか、疲労がたまっているのか、はたまた腫れは引いていても虫刺されの影響か。
 次の予定は長門湯本温泉。地図で見ると一応平地のまま5kmほど山の方へ向かったところにあるようで、正直なところこれも迷ってしまいました。が、結局行くことに。
 実際には5kmどころか4kmもなくて昇りもほとんどなし。結構楽に温泉街に入れ、共同浴場へは迷いましたが無事に発見出来ました。
 恩湯・礼湯と言う浴場なのですが、看板が出ていないので目の前に着いても正直自信がありませんでした。
「ここはしの温泉だよ」
 様子をうかがっている私に声を掛けてくれたのは風呂から上がったばかりらしい、店先のベンチで休んでいるいおじさん。
 微妙な発音がよく分からず、「死の温泉」と勘違いしてしまい、何度か聞きなおし「市の温泉」と分かったのは、おじさんが、
「市で運営してるから安いしいい湯だよ」
 と、言ってくれたときでした。
 そのおじさん、更に自転車はわき道に止めれば良いことを教えてくれました。
 礼を言って早速風呂へ。
 ここはいい湯です。近頃急成長した野暮ったい温泉街と違って、湯を薄めるなんて真似はしてません、多分。
 さっぱりしてでると、当然さっきのおじさんはいませんでした。地元の人のようだったのでうまい飯屋があれば聞きたかったのですが…。
 ま、店があるならちょっと走れば見つかるだろうと、温泉街をちょっと走ってみたのですが…。そもそも工芸品やらの土産屋ばかりで飯屋そのものを見るけることができませんでした。
 と言うことで次は青海島。正直なところ、ガイドを見るまではこんな島は知らなかったのですが、この地域で捕鯨をする上での拠点だったそうです。
 そのせいか、鯨に関するものが多々あるのですが、それらはやめて青島観光基地なるポイントから出ている青島周遊に乗ることにしました。
 2200円は高いと思いますが、高いなりに見所は結構ありました。写真の取り所は少なかったですけどね。
 一応名物になっているらしい浜屋のうに丼を食べようかと思ったのですが、どう考えても高い。ということで取りやめ。うに丼は北海道のほうがイメージ的に美味そうだし。
 どこぞで軽く食して出発。と、途中で偏頭痛に悩まされ(まさか虫刺されの影響か?)、なかなか距離が伸びずもどうにか17時に萩到着。ここにはYHがあるんですが中央公園で寝られそうだし、夜は晴れそうなので野宿に決定。
 食料買える店も結構あり、なかなかです。
....つづく
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