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1996年9月12日 チラース〜ギルギット〜カリマバード |
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| 黒く焦げた岩に浮かぶ御仏の姿 |
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朝から、びっくりするような天気の良さだった。青いというか、空気を通して、藍色の宇宙の闇を見ているような、透明で深い青さだった。人間というのは、不思議なもので天気が良くて空が青いと妙に機嫌がよくなったりすることがあるが、今朝の私は何となくそんな感じだ。昨日の夜、ホテルの売店で、親友にあげるのに良さそうなウールに刺繍の入ったきれいなショールを見つけたので、ご機嫌だったのもある。母にと2枚購入した。
朝いちばんで、チラースを離れる前に、ホテルから道を少しもどって岩絵を鑑賞した。ここチラースの岩絵のほうが、昨日のシティアルの岩絵より有名なのだ。いろいろな絵が残っているようだが、写真に写るかどうかが若干心配だった。やはり、道しるべとして描かれたものが多いそうで、仏様の絵が多いようだった。
ナンガパルパットへの登山基地、フェアリーメドウ(Fairy tale Meadow)あるいはメルヘンビーゼへの分かれ道への入り口は、ラオキット橋の近くにあった。ここから、右手にカラコルムハイウェーをそれていけば、ナンガパルパットへの道ということだ。途中、タッターパーニ(Tattapani)というところでは、道ばたにかなり湯温のある温泉がわきだしていた。露天風呂でもつくればいいのにと、話は出たが、誰が入るのかと言うところで、話題はとん挫してしまった。
お昼前にギルギットにつく。まず、市内を抜けた方にあるカールガー(Kargha)の磨崖仏を見に行った。磨崖仏のある所への道は狭いので、バスから4台のジープに分乗しての道中だ。磨崖仏は高さ30mほどで、すぐ上に岩棚があった。水路なのか川なのかはっきりしなかったが、川を挟んで反対側の岩壁に彫られていた。ここに彫られたのはいくつかの理由がある。一つにはこの岩壁は、チラース方面への道の通っている峡谷の入り口になっており、これも又、巡礼のための道しるべだという。私には、その御仏が、さらなる巡礼の旅にいざなっているかのように見えた。ましてや、自分の足を頼りにここまで来たものにとっては、さぞかし心強いお姿だったことだろう。二つ目に、岩棚の下で保存の望みがあったことも大きな理由だ。雨は少ないとはいえ、岩絵に雨は大敵だ。最後にこのような高いところなら容易に破壊が出来ないこと。現にイスラムの支配下におかれた時代も合ったはずだが、壊されてはいない。
ギルギットの町のバザールには、日本のものとはっきりわかる生地や布団側などが積み上げられていた。これらは皆、アフガニスタンへの援助物資が横流しされたものだという。見慣れた日本的な柄が、なんだかうらさびしく思われた。 市内を流れるインダス川を越える吊り橋、ギルギットオールドバザールブリッジを越えたが、車がやっとのこと通り抜ける幅3mほどの橋は、不安になるくらいに揺れてどうも案配がわるかった。
ギルギットのところで、ギルギット川にフンザの方向から流れてくるフンザ川が合流している。この川二本と山について大ざっぱに言うとこういう関係が成り立つ。北から二本の川が流れてきて途中で合流し一本になる。二本の川の左右の3つの部分が山脈で、右からヒマラヤ山脈、カラコルム山脈、ヒンデュークシ山脈だ。つまり、山脈を隔てる川、それが、ギルギット川でありフンザ川なのだ。何とも大きな話ではないか。
昼食をギルギットのPTDCギルギットで取り、フンザ川に沿っていよいよフンザ地方へ。このフンザは長寿で有名なところである。その理由にはいろいろ説があって、生活を重くするようなストレスがないから、とか、フンザ特有の濁ったミネラルたっぷりの水のせいとか言われているが、定かではない。
今日の宿であるカリマバードにつく前に、ハサナバード(Hassanabad)で山の斜面で宝石のガーネットの原石拾いをした。直径5ミリほどの見慣れるとすぐにわかる特徴のある原石を10分ほどで20個くらい拾った。なんだかとても得をした気分だった。だって、磨かなければあの赤い色は楽しめないし、宝石といわれて初めてわかるような代物だったけれど、でも宝石なのだ。それが、大陸の衝突で大きな力の掛かったこのあたりのせり上がった山肌からぽろぽろと墜ちている。なんだか不思議な気がした。後ろを振り返ると、ラカポシがきれいなゆうやけだった。雪がバラ色に染まって、何とも美しい。車にもどって大急ぎでカメラを取り出し、夢中でシャッターを切った。
カリマバードは、山の上の方にある。ここまで乗ってきたバスはそのホテルへの200mの細い道をあがれないので、道路端にとめて、またジープに乗り換えた。何台かのジープがたちまちに用意され、人間と、2泊するので荷物のすべてが積み込まれて山の上のホテルに向かった。このジープは観光客相手に下のガニシュの町から、上のカリマバードへ人々を運ぶ仕事をしているのだ。つまり町と町が200mの高度差なのだ。それで全然別な町。なるほどね。今日の移動距離、チラースからギルギットまでが約150キロ、ギルギットからカリマバードが110キロだった。
夜は停電だった。山の上下で1日交代で停電するらしい。電力量が絶対的に不足しているらしかった。真っ暗な中、いすの上にふんぞり返って星空を見ながら、ガイドのアズマットさんといろいろな話をした。このルートは山がメインなので、天候がわるいと結局ただ、山間の道を走るだけになってしまう。そんなときにせめてアルバムぐらいは見せてあげたいので、もしいい写真が撮れたら送ってくれと頼まれた。仕事熱心な誠実な人だとは思っていたが、その思いやりに感動した。
彼によればアバドあるいはバードという町の名前の後に付く言葉は、何とかの町という意味だそうだ。だからカリマバードは、カリム=指導者の町という意味だ。
停電のため、デジタルカメラの写真だけ、かろうじてPCに保存した。これで大丈夫。
夜半過ぎ、カメラのシャッターを開放にして、星空の写真を撮影してみた。生まれて初めての試みだ。山の取り方を伝授してくださった同じツアーの参加者の方に、取り方を教わって、ホテルの2階の屋根の端っこにいって、石でカメラの台をつくって、バルブを開けてそのまま3時間。明るくなる前に取りに行った。撮れてるかなあ。
でも、何となく眠るのがもったいないような星空を見ながら、流れ星に願い事をかけようとしたけれど、6つも見たのに成功しなくて悲しかった。
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