1996年4月9日(第10日)
カッパドキア〜シヴァス


    
若い男女のダンス
洞窟レストランの民族舞踊

 今日は肌寒い気候で、思い切り冬毛のたぬきのように着膨れて朝食に降りていったら、「なんだか、まるまるとしてるねえ」とお声を頂戴してしまいました。今朝は本当は起きるのがつらかったのです。というのは昨夜、夕食後、オプショナルツアーで結婚式の時のお祝いの踊りとベリーダンスを組み合わせたショーに出かけて、ちょっとワインも飲んでしまったのです。ホテルに戻ったのが11時ころで、それから、荷物を詰め直して休んだので、1時を回っていたと思います。本当は寝たのが遅かったほかにも理由があるのですが、それは追々。
 夕方のホテルへの帰路のバスの中で、私がベリーダンスを見たいと行ったのを覚えていた現地ガイドのビラルさんから、ベリーダンスを見るオプショナルツアーの話がありましたが、10人以上でなければだめだというので、私は思わずバスの中のみなさんにお願いしてしまいました。ぽつぽつと手が上がって、9人になったところで、いつも優しくしてくださる西山さんが、「9人なら、僕が行けば行けるんだね。」とおっしゃって手を挙げてくださったので、めでたくオプショナルツアーは成立したのでした。ところが後でわかったのですが、みなさん、ご自分がごらんになりたいのもあったとは思いますが、あまり私が行きたそうにしているので、どうも一肌脱いでくださったようでした。ありがたいです。
 バスでたどり着いた会場は、カッパドキア特有の岩山をくりぬいたレストランで、音響効果抜群。単調ながら、暖かみのある曲が2曲ほど演奏された後、16、7歳のかわいらしい男の子と女の子が6人ずつ現れて、踊りが始まりました。曲のリズムは、日本人にも大変なじみやすく、手拍子をしながら、かわいらしい踊りを見物しました。よくよく考えたら、阿波踊りのリズムにも似ています。これらのダンスは結婚式の時の余興というか、お祝いのために踊られると聞いていましたが、途中、プロポーズの場面の織り込まれたダンスもあり、なかなか楽しかったです。
 ついで、ベリーダンスタイム。トルコ絨毯が運ばれてきて、その上で、美しい舞姫が魅惑のダンスを踊りました。一曲目は立ったままで、二曲目は、絨毯の上で悩ましげに、そして、客席から男の人を引っ張り上げて一緒に三曲目。あっと言う間に時間がすぎてしまいました。
 ベリーダンスが終わると、また、民族舞踊の子たちが登場して、今度は客席のお客をダンスフロアに引っぱり出して、一緒に踊ります。真っ正面の一番目立つところにいた私は一番に引っぱり出されて踊らされました。私も10代のころは踊りにも行ったことがありましたので、ここは、ままよとばかりに、胸ぶるるんやら、お尻ふりふりを試してみました。あんなに早くは動かないけれど、結構、うまく行くものですよ、お試しあれ。そして、みんなで列をなして、ムカデダンス。楽隊も一緒にレストランから外に出て、息があがるまで飛んだりはねたりのダンスを踊らされました。外に出ると、大きなたき火があって、そのまわりを踊りながら回るのです。ものの5分ほどでしたが、これが結構疲れました。
 踊りながら、レストランの中に戻って、それでも少し踊ってやっと解放されました。そして、また、ひとしきりダンスを見せてもらって、最後にもう一度、みんなでフロアで踊りました。恥も外聞もかなぐり捨てて踊っていたら、どうも配点高かったようで、次から次へとダンサーたちが一緒に踊りに来てくれました。私一人が踊り狂ってたみたいで、見ず知らずの外人さんやら、日本人の観光客から、踊り終わった後、とてもほめられました。こう言うところに来たら、やったもん勝ち、この場合気分良く踊ったもん勝ちです。
 帰り際、お店のカメラマンがとってくれた写真を買いました。あまり楽しそうに踊っている自分になんだかとても満足だったので。それと、ダンサーの中にとても感情表現豊かで、しかも、とても楽しそうに踊っている女の子がいました。どんな生活をしている子かわかりませんが、本当に楽しんでいるように見えて、私はその子のファンになりました。もうきっと二度と会うこともないのでしょうけれど。隊商で訪れた町の踊り子に恋をしたら、こんな気分になるのかなあ、なんて、思ったりもしました。ここは、私のシルクロードのスタートのトルコなのです。これから、どんな出会いと別れが待っているのでしょうか。
 こうして、膝が笑うほど踊り狂ったので、今朝は起きるのがつらかったのです。おまけに朝になったら、ガイドのビラルさんに「踊り上手ですねえ、ベリーダンサーになりますか」ってからかわれる始末。でも、いいや。とても楽しかったから。都市部のベリーダンスショーでは一緒に踊ったりはできないらしいので、私は片田舎のカッパドキアのベリーダンスショーを手配してくれたビラルさんに感謝しています。それに、私につきあってくださった、おじさま方が皆とても楽しかったと喜んでくださっていたので、それも一安心。
 今日は、カッパドキアを離れていよいよアジアハイウェーを走り始めました。 所々、パトカーが先導についてくれたり、コントロールという検問があったりで、大変みたいですがいよいよシルクロードを走り始めるのです。今日はシヴァスで一泊。昼過ぎについて、ご飯のあと、自由行動。不思議少女繭ちゃんと何人かで、町を一望できる城塞の丘に上がりその後、いくつかの宗教的な遺跡を見ながら、博物館へ。トルコの東部に入ると東洋人は本当に珍しいらしく、私たちは注目の的です。子供たちは口々に何かを叫びながら、自転車で追ってくるし、控えめな回教徒の女性まで口を押さえながらこちらを見ています。ちょっとした珍獣あつかいです。
 博物館の二階には、建国の英雄ケマル・アタチュルクに関する展示がありまし た。明日は、一日で450キロ近く移動するので、早く出発です。

ミニコラム 魅惑のベリーダンス
ベリーダンス
若くてきれいな
ベリーダンサーは
おおあたり
 せっかく本場に来たのだからベリーダンスがみたいと言うことで、夜のオプショナルツアーを組んでもらった。場所はカッパドキア、この地方ならではの洞窟レストランで食事をしながら、あるいは飲み物を飲みながら、あこがれのベリーダンスをみるわけだ。  ベリーダンスというのは、私のお気に入りの007の映画にもその昔の『ロシアから愛をこめて』で取り上げられた、美しいダンスだ。ただ、都市部のベリーダンスショーだと、時々、壮絶な三段腹のおばさんダンサーが登場して、とてもがっかりさせられたりするというので、ちょっとびくびくして行ってみた。
 ところが、ところがである。出てきたのは、花の盛りのきれいなお嬢さん。しかも、ダンスもそこそこで、なにより一生懸命なのがよかった。ドレスも、真っ白い肌に紫がよく映えて、うつくしかったし。そういえば、途中のブルサの町のレストランを出たところで、ベリーダンスの衣装を売っていたっけ。あれって、土産物なのだろうか。
 さて、ダンスは、腰を左右にあるいは前後に振りながら、上半身は左右にというかはっきり言えば乳房をプルプル震わせるわけである。けれども、お嬢さんがかわいらしいせいか、あまりいやらしさもなく、むしろ、指先やつま先の表現の細かさがすてきに見えた。指先の表現で、相手に好意を伝えたりするのだろうか。
 彼女に引っぱり出されて、一緒にベリーダンスを踊ったおじさんがいたが、その人もなんだかとてもいい人みたいで、間近にみるダンサーのすてきさに、つい手を握ったりしてたのがご愛敬だった。

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