1996年5月3日(第34日) ジャムケント〜国境〜セリム湖〜精河 |
天山山脈の中のセリム湖では、雪が舞っていた |
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中国国内に入って、この旅で4台目のバス、はとバスに乗り換えました。一台目は、トルコ国内、二台目がイラン国内、三台目が中央アジア内。ちなみに、このはとバスは東京を走っているあの、黄色のはとバスです。とても懐かしい黄色のボディーに赤い文字ではとバスって入っている、あのはとバス。日本が近づいてきたとうれしくなりました。
国境を越えて、中国側の国境事務所を出るなり、後方2キロほどのところにある、中央アジアとはまるっきり違う世界が広がっていました。リキシャが通り、赤や緑の漢字が踊る中国です。並木道に広い通り、コンクリートのアパートの建つ、中央アジアとは雰囲気がまるっきり違うのです。そして国境事務所と目と鼻の先の料理屋で食べた昼食の内容の豊富だったこと。何とも心が豊かになりました。
それにしても、中央アジアのご飯はすごい。国を4つも移動したけれど、内容がほとんど変わらないのです。カバブと、パンと、キュウリとトマトとネギの切ったのがそのまま盛りつけられたサラダ。ちょっとはバリエーションがあるのだけれど、でも、大筋は変わらないのです。カバブだって、要は羊の焼き鳥の親玉みたいな料理なのですから、塩焼きだけでなく、胡椒や醤油や、たれや色々工夫をすればいいのに、直球一本勝負だものだから、食べ飽きてしまうのです。これを毎日ずーっと食べている現地の人って、実に我慢強いというか、味覚が弱いというか。本当に、私は羊肉嫌いでなくてよかったです。
国境からは、昨夜、宿泊予定の伊寧はスキップしてしまい、精河に直行しましたので、途中、天山山脈の中にある、セリム湖の湖岸を走りました。この湖は、標高2073mのところにあり、つい20日ほど前まで全面結氷していたそうで、今日も、雨模様の天気が湖のあたりでは、小雪に変わっていました。湖岸には、カザフ族が羊を追う姿が見られました。こちらの羊は中央アジアの羊よりも気のせいがよく太っています。それにしても、途中の山道の山肌を器用に歩いて草をはむ羊には感心しました。湖は、湖岸近くは氷が溶けていましたが、中心部にはヒビは入っているものの、氷が残っていて、低く垂れ込めた雲越しの太陽光線に、にび色に光っています。峠を越えてきてこの周囲100kmの湖が見えたとき、天上の湖と言った感じでなんとなく、うれしくなりました。夏の暑い盛りに砂漠から上がってきたらきっと生き返ったような気持ちがすることでしょう。バスが、最後のカーブを曲がるとき振り返りましたが、遠くの湖面はあくまで静かでした。
今日は道が悪く、余り眠れなかったので、とても疲れました。いつもより熱も高いようで、気をつけなければと思いました。夕食は余り食欲が出ませんでした。
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