4.横須賀基地について


    
第七艦隊海域図
第七艦隊のカバーしている海域
U.S. NAVY ILLUSTRATION

 米軍横須賀基地、と一般に言われている横須賀基地は、正確には米海軍の第七艦隊の極東司令部の置かれている基地である。米海軍は、太平洋艦隊として、太平洋海域に第三艦隊と第七艦隊を展開している。第七艦隊は、西太平洋から、インド洋海域の1億3312万平方キロの海域を守備範囲として、東西に日付変更線からアフリカの東海岸、南北にクリル諸島から南極大陸までの広い範囲をカバーしている。これは、アメリカの14倍の面積にあたるという。同じ太平洋艦隊所属の第三艦隊は、東太平洋とベーリング海、アラスカ、アリューシャン列島と北極海の一部をカバーしている。ちなみに、アメリカ海軍には5つの艦隊があり、第二艦隊と第六艦隊は大西洋と地中海を担当し、第五艦隊は、”世界の火薬庫”ペルシャ湾と中東をカバーしているのだ。
 横須賀基地は西太平洋で一番大きな艦船修理のための基地であり、古くから大型航空母艦の基地としても重要な港であった。過去には、空母インビンシブル(”無敵”と言う意味)の母港であったし、現在は、廃艦が近いとはいえ、現役のキティホークの母港となっている。
 基地の人口は約20000人。住宅は基地内と横浜市の根岸にもある。基地で働いている日本人は約5000人。ほとんどが艦船修理部で仕事に従事しているという。基地内には、サリバンエレメンタリスクールという小学校とキニックハイスクールという日本の中学校と高校にあたる学校がある。これらは、横浜のアメリカンスクールの分校になっているそうだ。この2つの学校で、1700人の小学生と850人の中・高校生が学んでいる。根岸の住宅の方からは、横浜のアメリカンスクールに通学している子供も多いとか。

ミニコラム すばらしき軍隊ライフ
第七艦隊マーク
誇り高き第七艦隊の
エンブレム
U.S. NAVY ILLUSTRATION
 私たちを案内してくれた米軍の担当者C氏は、日本人の奥さんとの間に、12歳を頭に3人のかわいいお子さんのいる長身のすてきな人。家族の話になると、早速お財布の中の家族の写真を見せてくれて、いかにも幸せそうな様子がほほえましかった。本人は30代半ばと言うところだが、横須賀基地の中にある二つの大学のうち、片方で今、比較文化を専攻し大学院に通っているという。アメリカでは、軍での経験は、大学や大学院に進学するときにかなり有利に働くという現象もあり、さらには、基地に大学の分校のようなものが併設されて、軍にいる間にも勉強を続けあられるような配慮がなされているという。
 アメリカの大学で知り合った友達の中には、大学の途中で、残りの年数を大学で学ぶお金を貯めるため、軍に志願するという話をしていた男の子もいた。アメリカの大学・大学院と社会の間の垣根は本当に低い。一般に言われるように、社会人生活をして大学に行って、また会社で働いてお金を貯め大学院に行く。ごく当たり前に自分の人生を自分の力で組み立てていく、そういう制度は本当にすばらしい。前に勤めていた会社の出張で行ったボストンの本社で出会った、学生結婚をし、名門大学を経済学専攻で卒業し、大手コンサルティング・ファームで働き、数年後にMITに進むために会社を辞めていった若い女性のまぶしさを、ずいぶん久しぶりに思い出した。このC氏も、国文学で大学を卒業して、軍に入ったという。「あなたは何か勉強している?」と聞かれて、「もう、年だから」と答えたら、「勉強するのに、年を取りすぎている、と言うことはないよ」とにこにこされてしまった。来年はまた、何か勉強しよう。
 彼に、船には乗るの?と聞いてみると、「僕は乗らない。志願してまで、乗ろうとは思わない。あまり好きじゃないんだ」という返事。前に、本土で出会った空軍の軍人に言われた言葉を思い出した。「空軍が全て飛行機好きとはかぎらない。船が絶対だめって言う、海軍もいるよ」そういえば、彼は、飛行機嫌いだったなあ。何とも人間的。確かに海軍軍人だから、船旅が好き、艦船勤務が希望、と言う人ばかりではない。

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米海軍横須賀基地見聞記 目次


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