8.いざ、乗船


    
真鍮のエンブレム
ライト兄弟の複葉機をあしらったエンブレム
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 私たちはまず、大きなスロープを通って、船の横に開いている小さな入り口から中に乗り込んだ。そこは、まさに船の玄関のようで、艦名の由来となっているキティホークの町で、ライト兄弟の飛ばした複葉機を真ん中にあしらった、艦のシンボルマークの真鍮のレリーフがかかっていた。そこから、幅70センチほどの急な階段を二階分あがって、広い作業甲板にでた。ここは飛行甲板の下で、飛行機の整備をしたり、様々な作業をするという。船には、3カ所の格納庫があり、数十機の戦闘機を格納している。この甲板も、台風の時などには、格納庫として使われることもあるという。戦闘機は、大変精密にできているので、ねじ1本で人の命を奪うような大事故になることもある。そのために、常に甲板などは清掃が行き届いていなければならないし、修理、整備の精度は高くなければいけない。港に停泊している今は、整備のための絶好の機会なので、整備系の人たちは大忙しだと説明を受けた。船を案内してくれるのは、この船の乗組員である。30代とおぼしきめがねの人と、20代のはじめの笑顔のまだかわいいセーラー服の水兵さんである。水兵さんのセーラー服がちょっと寒そうだったので、「寒くないの?」と尋ねると、「寒いけれど、コートは一枚しかなくて、友達に貸しちゃったから...」という。そばでめがねさんが、「友達にね...」と笑っている。かれがちょろっとめくって見せてくれたセーラー服の上着の下は、おなかが見えていた。いくら天気がいいと言っても、日本の横須賀の12月、おまけにちょっと冷え込んでいる今日は、おなかだしてちゃ寒いよね。

ミニコラム 作業甲板で見つけたもの
カタパルトの部品
大きなフックというか
撃鉄というか
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スペアタンク
天井から下がっている姿は
まるでミサイルみたいだけれど
ほんとにミサイルだったら
こんなところにはないよね
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 壁に大きなねじ回しのようなものが4本ついていた。長さは、7mくらいあるだろうか。太いところで直径が70pはあるかもしれない。何なのだろうと聞いてみたら、先程のセーラー服くんが「あれは、カタパルトの撃鉄みたいなもので、スチームの圧力を利用してカタパルトから艦載機を打ち出すときに使うんです」と言う。「あなたは、何を仕事にしているの」と聞くと、「僕は、スチームの圧力が艦載機を打ち出すときに、適切な価を維持するようにするのが仕事です。」と胸を張る。ディーゼル艦のこの船では、エンジンルームで作り出される蒸気の圧力を、艦載機の射出に利用しているらしい。艦載機は、大体30から35秒に一機の割で射出できるという。「後で、飛行甲板に行ったら、説明してあげるね」と彼は、ウインクして見せた。
 高い作業甲板の天井から、何かのタンクか、ミサイルみたいなものがいくつかぶら下がっていた。何かと思ったら、戦闘機の燃料タンクという。色々な事情で、海上投棄してしまった場合の交換用というが、「そんなもの、海の上に捨てて来ちゃうの?」と聞いてみた。それ程大きな物体だ。「もちろん、問題だとは言われていますが」と、めがね氏。捨てなければ、パイロットが危ない、というシチュエーションもあるのかもしれないな、と何となく感じた。
 そして、もう一つ、アメリカらしいものを発見。それは、天井の梁の直ぐ下まで高く高く引き上げられたバスケットのゴール。長い洋上暮らしの生活のメリハリに、色々なことをするんだろうなと思った。昼は巨大な修理工場で、夜はリクリエーションフィールド。なんだか、ほんとにアメリカ的。

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米海軍横須賀基地見聞記 目次


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