9.飛 行 甲 板


    
トムキャット
一機だけ飛行甲板にあったトムキャット
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 甲板の端っこに、一機だけトムキャットが駐機されていた。後は、整備中の艦らしく、あちこちが開いていたり、仮設のテントみたいな作業小屋かなにかが、滑走路のど真ん中に2つ立っていたりで、のどかな雰囲気である。航空母艦の場合、通常は船の真ん中にあるブリッジという見晴らし台のように背の高い船の操縦施設が、甲板の片方の端っこにたてられていて、船の甲板の機能自体は、あくまで航空機の離発着のための効率と便利がはかられている。このキティホークの場合、カタパルトと言われる戦闘機を射出するための装置は併せて4本あり、着陸のための滑走路が平行して2本とられている。
 航空母艦上の飛行機の発着は、通常の離着陸とかなり違った趣がある。まず離陸は、カタパルトといういわば巨大なパチンコみたいなもので航空機を打ち出すことで、短い距離で、飛行できるだけの揚力が得られるだけのスピードを出させて離陸させる。
 逆に着陸は、甲板の上という短い滑走路におろすため、さらに特殊な装置が使われる。航空機は、通常の着陸の時のように、速度を落として飛行甲板に降りてくることはできない。というのは、滑走路が短いため、万が一着艦に失敗したときでもそのまま飛び上がれるだけのスピードを保ったまま、降りてくるのである。さもないと、着艦に失敗した航空機は、甲板の端っこから今度は海にダイビングしてしまうことになるからである。(たまにあるらしく、そのときは、一応艦に装備されているクレーンで海中から揚げるらしいが、ほとんど使いものにはならないそうである。)
 では、どうやってスピードを保ったまま着艦するのか。秘密はワイヤーにある。着艦体勢に入った航空機は、甲板の端に4本張られているワイヤーに機体の後ろについているフックを引っかけて、ワイヤーの力で機体を止めるのである。このワイヤーにフックを引っかけるという動作に失敗したら、再び空に駆け上がって再度着艦し直すのである。
 戦闘中など作戦活動遂行中は、甲板にいる作業員たちは、ブリッジのところにあるライトで指示を与えられ、30から35秒に1機の割合で戦闘機を発進させ、その合間を縫って帰還してきた戦闘機を着艦させていくという。自分の仕事の手順を正確に繰り返せるようになるまで、繰り返し行われる訓練の賜と言うべきであろう。

ミニコラム 航空母艦とは
のれん
星のマークののれん。
この奥は士官の居住区
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 めがねさんの説明によると、航空母艦は、戦闘機を積んで、それを離発着させるためだけに作られた艦なので、自分では何も戦闘行為はできない。だから、攻撃を受けても反撃はできないという。この自分を守ることのできない大きな船を、駆逐艦、巡洋艦などの戦闘能力を持つ船が守るという事を前提に、船団を組んで出撃するという。
 このキティホークには、1999年12月の発表では、F-14トムキャット10機、F/A-18ホーネット36機、EA-6Bプラウラー4機、E-2Cホークアイ4機、S-3A/Bバイキング8機、SH/HH-60シーホーク6機が配備されている(海軍のホームページによる)という。戦闘機からハイテクレーダー機まで、作戦遂行に必要な航空機を各種取りそろえて営業中、というところだろうか。
 この艦の中には、新聞社、ラジオ局、床屋に歯医者に病院に、お店ももちろんある。館内には、突然きれいな絨毯が敷いてあったり、ブルーの厚手のビニールののれんの掛かった区画がある。これらは、軍隊で言う士官のためのきれいな居住区や、作戦のための特別な部屋などを表している。目印は、白い星のマークがついている。軍隊と言えば階級社会の最たるもの。こういうところにはっきりした階級差が現れているのだ。

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